四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
この冬最後のシノラッセル&墓穴掘り
シノギングの冬は短い。
3月になれば低山の雪はぐずぐずになり、そしてなくなってしまう・・・。
その前にしごかれに行こうということで、いざ、われらの冬のホームである県境付近へ!
ローカル線のだあれもいない駅で身支度を整えて、駅から徒歩圏内の凌エリアに向けてまずは街道を行く。街道にはこういう味な家が多い。
しばらくして街道から林道に入る。方位を確かめて地形図と照合する。うん、ここまでは順調だ。
途中、地形図にない林道で沢を渡って目星をつけていた尾根に取り付く。数日前の雨はここではやはり雪だったようで、新しい雪がうっすらと表面を覆っている。
地形図を追っていると、尾根の筋が合っていないことに気付く。
まわりの地形を見て照合を試みるがどうも無理がある。そして完全に違うところにいることに気付いた。あちゃー!
特徴的な渓の中の平坦地(雪がない時は湿地であろう)と地形図のそれを照合して、正しいであろう尾根に向かってやり直し(笑)
来たね、ここだよ、正しい尾根は。100%地形図と合致して、ひと安心した時にはもうお昼近くになっていた。このように時に地図読みを間違えることもある。今回は地形図にない1本手前の林道に入ってしまい、方位や林道と沢の関係が似ていたためにまんまと騙されたというわけである。いつも言い訳のように言っているのだが(笑)地図読みを間違えることはある。たとえ間違えてもそれに気付いて本来のルートに戻ることができるか、それが無理ならばどこかで現在位置を特定して別のルートで立て直すことができるかどうかが地図読みの技量である。
と、言い訳をたっぷりした後、本来の尾根に取り付く。急斜面の取り付きには季節を問わず凌ピッケルが活躍する。
傾斜が一服したところで雪の状態を確認しワカンを装着。無雪期と変わらぬ急峻なルートを行く雪山シノギングではスノーシューよりもやはりワカンが小回りが効いて圧倒的に使いやすい。
尾根は地形図の通り痩せて来た。
雪の下が石でゴロゴロして歩きにくい。こんな時は動物の足跡が安全なルートに導いてくれる。ただし、奴らは倒木の下を平気でくぐり抜けて行くので時に難儀することがあるのだが・・・。
痩せていた尾根が広くなり始めると傾斜がきつくなってきた。
標高を上げて雪が深くなってきたところでこんな傾斜とは、ワカンは音もたてずに粉雪を踏み抜いて深く沈んでしまうため次の一歩が出せない。苦しみながら半歩ずつをやっと進むシノラッセル。しかし、このために今日ここに来たのだから望むところだ! それにしても、二人で10分ごとに交代しても大変なのに、ひとりでは無理だろうな・・・。よくあることだが、一番大変なところは写真が一枚もない・・・。
氷点下ながらも日差しがある本日はニンジャフーディーとシモナギのセットアップがちょうどいい。その下はメリノウールのアンダーだけ。そして、凌ピッケルを操るにはやはりトリガーミトンが使いやすい。シーム処理を施した超軽量のAXESQUIN W2P Light Shell Trigger Mittenがシンプルで使いやすい。五本指モデルもあるが私は断然こっち。雪をとかすためにかき集めるときにも大活躍。テ〇レス要らず。
少しずつ傾斜が緩んできて主尾根ももう近い。渾身の力を振り絞ってシノラッセルに励むやっさん。あとは頼んだよ、厳冬期初登頂だよ(笑)
苦しいシノラッセルから解放されて平坦な主尾根で一夜を凌ぐ場所探し。とても気持ちいい尾根だが、木が太すぎたり、木の間隔が広すぎたり、二人がハンモックを張る場所がなかなか見つからない。
ようやく場所が決まって時計を見ると午後四時を過ぎている。暗くなる前に墓穴を掘らなければ。シノラッセルでくたくたになった後に墓穴を掘ったり、雪をとかして水を作ったりと、雪のシノギングは重労働だ。
風邪を除け保温効果を高めるために少し深く掘る。ハンモックシステムの設営が完了してやっと腰を下ろす。子供の頃の基地あそびみたいにわくわくする空間。おっさんになってもあの頃のことをはっきり覚えているし、いまこの空間にわくわくする。シノギングにはこういう要素が多い。だからおもしろい。
雪を固めた台にシノギチャブダイを広げ、行燈風シェードに灯りをつけるとあたたかい光に包まれた。
雪のシノギングでは薪を使わずブリケットで労働を減らす。ピコグリル85でもしっかり燃えるし、20個あれば寝るまでじゅうぶんだ。もちろん、寝るまでの時間はのんびりぬる燗を楽しめる。
万全のハンモックシステムだが、なぜか夜中に寒気がして目覚める。手探りするとアンダーキルトとハンモックのあいだの空間が広すぎる。いつのまにゆるんだのだろう?うん?おかしいな?せっかく作った水を凍らせないように懐に抱いていたウォーターキャリーがぺちゃんこになっている。まさか!?もう一度アンダーキルトをさわってみるとウォーターキャリーから漏れ出た水がたまっているではないか!なんだよこの水たまりは!
そういえば、寝る前にキャリーのキャップを止めているリングがなぜか外れたので元に戻したのだが、この時に奥にグッと押し込まなかったから、キャップを閉めてもわずかに隙間が残ってそこから漏水したのだ。幸いハンモックビビィには漏れ出していないようだ。私はしばらく考えた・・・。そして思いついた。その水を若干汚れた布巾に吸わせてコッヘルに移動させることをだ。水はこれ以外にサーモスに350mlだけ。それだけではどう考えても足りないし、持参したわずかな薪ではわずかな水しか作れない。布巾に吸わせて絞る、布巾に吸わせて絞る、布巾に吸わせて絞る・・・、何とか漏れてたまった水を移動し確保することができた。
アンダーキルトのダウンがびしょびしょになっていなかったのは不幸中の幸いだが、決して本来の保温性を得ることはできないだろう。気温は氷点下8℃。思ったよりも下がらなかったが、うすら寒い寝床で眠るには十分すぎるほどつらい気温だ。幻想的な月と星はこの一部始終を見ていたんだな。寒い。眠れるのだろうか・・・。しょうがないよな、墓穴掘ったんだから。
朝、気持ちを切り替え高速で撤収。もちろん布巾で絞ったおいしい水でお茶も飲んだ。私はいつもヌノバケツ二段重ね。おかげで設営と撤収が本当に楽ちんだ。
本日快晴也。
主尾根は少しのアップダウンを繰り返しながらもなだらかにずっと続く。
もちろん誰の足跡もなく、我々のうしろにだけ足跡が残っている。
うさちゃんの足跡はいっぱいあるけどね。
うさちゃんの足跡とやっさんの足跡。
うさちゃんの足跡とやっさんの足跡。アゲイン。
S山の山頂から西の支尾根に入ると主尾根と違っていきなり傾斜がきつくなる。ワカンとピッケルをうまく操って安全に順調に下る。
昨日凌いだ尾根を見ながら下りる。
あんまり写真がないが、この下りもまあまあキツかった。そして最後の最後に痩せた尾根。
無事に下りることができたので鐘ひとつ。
尾根の末端に神社あり。これもシノギングで学んだ。
こうしてこの冬最後のシノラッセル&墓穴掘りが終わった。ありがとう里山。ありがとう水漏れ。
真剣にシノギングをすれば、山歩きに必要なことの多くを学べる。やらなければわからない。やればわかる。そういうこと。
シノギングに興味があったらまずシノギングイベントに参加してみよう。すべてはそこから始まるのだから。
行動中の着こなしと道具
フユボウシ
カルフワタオル(クビマキとして)
ニンジャフーディー
メリノウールTシャツ (AXESQUIN)
シモナギ
メリノウールタイツ (AXESQUIN)
クナイ
凌ピッケル
W2P Light Shell Trigger Mitten (AXESQUIN)
ヤマバッグ XP
タモツウルオス XP
EXPED Lightning 45
一夜を凌いだ着こなしと道具
ヨヒヤミ
ウデアテ
クイックハラマキ high loft
メリノウール Tube (AXESQUIN)
アグラスカート
ウール中綿ブーティー
サボ
行燈風シェード
シノギチャブダイ 240mm
ヌノバケツ 4 litters XP
凌風呂敷
EXPED Solo Tarp
EXPED Travel Hammock
ハンモックアンダーキルト 120(掛布団として)
ハンモックアンダーキルト 240
ハンモックビビィ Tyvek
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