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シノギング旅烏 ~川合から大地、大地から千足へ~ 【後編】

【前編】は此方

 

昔ながらの「酒・たばこ」の看板が掲げられた商店。その風貌からして期待値は高まる。

下界は百熱の気候であった。商店の前には大きな桜の木があり、日陰と共にベンチもしっかり完備。一先ずこちらでザック降ろして一段落。非常にありがたい。

そしてまずは自販機にて水分補給。最高の瞬間でもある。

この集落にとってコンビニ的な商店となる、吉田屋商店さん。古き良きが残る素敵な店構え。月曜定休日にご注意を!

手軽な薪も販売しており、活用のし甲斐もありそう。

身なりを整え、いざ入店。

お惣菜的なものは少な目ではあったか、貴重な商店だけあった、生鮮から野菜、パンやお酒もしっかり完備。過不足なく補給は出来る。逆にこの限られたラインナップの中で、あれやこれやと選定して補給するのも一興である。

補給完了。おっかさんが、カゴ代わりにとダンボールに詰めてくれる。空いたダンボールはその辺に置いておいて~と粋なご対応。ありがとうございます。

お酒も含めてこんもり買い込んでしまった。補給しておいてなんだが、この後のパッキングが思いやられる。。

一先ず、お昼時でもあったので、昼食をこちらで。谷島はご近所さんで作られたという手作りパン、

柳谷はバナナと商店お手製のマカロニサラダを半分だけ笑

桜の木の下に、安らぎのひと時が流れる。

さて、パッキングをしようか。重心も加味しながら、水分系はしっかり身体側に寄せ、且つ表側の見た目を考慮して詰め込んでいく。

パッキング完了。ご覧の通り、蓋は締まりきらず、歩荷スタイル。

背負いあげるとガツンとくる重さ。。ウェストをしっかり締めて、ショルダー、スタビライザーでしっかり身体側に寄せる。

流石に欲張り過ぎたか。これを背負ってあそこをまた登り返すとか。想像もしたくない。

しかし、それをこなさなければネグラへは辿り着けない。現実とは残酷なものだ。

吉田屋商店さんへ別れを告げ、トボトボと来た道を戻る。

事前に目星をつけられたのは幸い。大体の距離感も把握できているので、あとはひたすら気合で登るのみ。

ふと下ってきた沢横のポイントから隣を見上げると、なんとも歩きやすそうな尾根が見える。地形図にしっかり目をやると、少しぐるりと回るが、最終目指す尾根上へも合流し、総合的にこちらの方が登りやすい等高線感。

迷わずこの尾根を選択。とは言え、最初の登りは等高線きつめで、前でがっしり腕組みをし、尾根に対して前屈み気味で重心バランスを取り、一歩一歩着実に詰めていく。

尾根道としてはしっかりしているので歩きやすいが、とにかく補充後のおおよそ20㎏近くになったであろうザックが、肩と腰を伝って身体全体に伸し掛かってくる。思うように歩みが進められないが、一歩一歩確実に歩んでいく。

すると次第に等高線は緩やかに、三角点ピークへ到達。山場は越えたか。ここで気を抜くわけにはいかないので、間髪入れず先を急ぐ。

緩いとは言え、続く登り。もはや技術云々ではない、気合、根性の領域でひた登る。

間もなく下りてきた時の支尾根へ合流。ここまでくればあと少し。

最後の最後での急登。ここを越えれば、、などという期待も込めず、無心で登ること幾数分。。

今宵のネグラポイントへ到達。ザックを降ろした時の解放感たるや。ここでも気を抜かずハンテンに袖を通り、一息着いたらネグラの準備を始める。

サクッと完了させ、細かな土間回りの調整に入る。

夜中からは雨が降るので、薪の調達も含めて抜かりなく調整す。

全ての準備が整うと、ここでようやく安住のひと時。下界から担ぎ上げたビールに手を掛け、グイっと呑み干す。誰がなんと言おうと最高の瞬間である。

思いの他、時間の余裕もあったので、昨日は出来なかったお昼寝時間。蓄積されたダメージを、多少なりとも回復はしてくれる。

このお昼寝時間は旅烏においても、非常に重要な作業である。

1時間ほどぐっすり。ウスグレ時になると、それぞれモゾモゾとまた動き出し、今宵の準備を開始する。

薪を揃えて、ストーブへ熾火を作り落ち着かせる。

そして晩飯をこしらえて、食らう。

あとはいつも通り、ヨヒヤミへ紛れて、焚火と時間を堪能する。

しかし今日の登りは堪えた。酒も入って既にウトウト。今宵は良く眠れそうだ。

そうして夜は更けて行く。

 

明くる朝

 

夜な夜なアマアシで目を覚まして、状況は把握していたが、意外にしっかり雨に降られる。

雨が降る事は分っていたので、あらかじめ雨の通り道を意識したタープ庇の張り方で、上手く凌ぐことが出来た。

まずはストーブに火を熾す。目覚めのルーチンにて、サクッと朝食も済ます。

小雨が降る中での撤収。嫌な状況ではあるが、撤収の流れはいつも通り。状況に左右されず、しっかりとした自身の流れを持ってマゴマゴせずこなすことが大切。それが凌の所作ともなる。

撤収が完了すると。褌を締め直す気持ちでツユハラヒを巻き、ザックを背負い、

こちらも所作として身に付けておきたい、、タビガラスの一発羽織り。ザックをしっかり覆う事を意識して、バサッと。

失敗。まだまだ精進が足りていないようだ笑

二夜後の笑ってはいけない奴。45度、B面。

いざ出立。

霧雨降る靄の中。正に凌らしく、タビガラスらしい情景がグッとくる。

その見た目、簡素な形状からくる多様性。このタビガラスは昨年のシノギング旅烏から端を発して企画開発された、正に旅烏のための道具。そして凌を体現する雨具と相成っている。

ついついそのシルエットに惚れ惚れしてしまう。

ポンチョ、ケープ型にて換気性能は高いが、やはり閉じていると良くも悪くも蒸れて暑くなる。そんな時は、前側のボタンを少し外し、首後ろへ回して留めれば、

マントのように前側を開くことができ、一気に涼しい空気を取り入れ換気が出来る。これをこまめに行う事で、蒸れや暑さも低減できる。

そうこうしていると、初日の旧大地峠へ到着。峠を繋ぎながらも、裏街道とも言える独自の尾根道で道を繋ぐ。気分は旅を股に掛けた渡世人、木枯らし紋次郎でござんす。

おっと、地形図捕捉確認は忘れずに。

引き続き、稜線の来た道を進む。

新の峠を越えて、林道へ交差すると、この先からは初日とは違う分岐点。

フミアトから外れて小ピークへ上がると、北東へ分かつ尾根が延びる。この先の、昨日到達出来なかった千足集落を終着点とする。

予測通り、尾根道は明瞭で歩きやすい。ただ、人は暫く入っていない様相もチラホラと。

分岐はいくつかあるが、こちら側で主となる大きな支尾根を辿り、下る下る。

すると特に特徴のある場所でもないが、忘れ去られた石碑が姿を現す。彫られた文字の識別は難しかったが、且つてここに何かの想いを馳せた方々がいたのであろう。

道中の平場にて、良きネグラポイントも見つけられた。

雨はやんだが、雨後のグズグズの斜面に気を遣いながら、着実に詰めていく。

程なくすると、少し拓けたポイントにて、集落を眼中に捉える。あと少し。

この辺りが細かな尾根が入っており、分岐が不明瞭であった。一度誤った尾根に入りこむも、

コンパスチェックにて即時気付き、軌道修正。

その先は何とも気持ちよさそうな草原に見えるが、

その実しっかり育った笹薮群。尾根を意識し、外れないように漕ぐ。

幸い藪群はそこまで長くなく、抜けると植林の明瞭な道へ。集落は近い。

何やら人工物が見えると、どなたかのお墓である。お邪魔しますと一声、横道をお借りする。

ここからは参拝用と思しき道が延びており、そちらをタドルと、

絶対に参拝用ではないであろう、斜面へぶつかる。良く見るとトラロープと微かなフミアトが残る。慎重に斜面を下りると最後の最後、地味な高さの石垣。

やはり最後は難儀するのがシノギング。これにて無事集落へ到達。

下から見上げた先の斜面。道とは到底思えない。。

ここからはトボトボと舗装路歩き。これも旅烏には付き物か。

集落の雰囲気を観察しながら進む。

せっかくなので、集落の中枢部へも足を延ばす。薄っすらと人の気配はするが、現住の方はかなり少なくなっているだろう。

所々に川合のように、歴史を感じさせる情景が広がる。

待て待て、この石碑は。。

一、二文字目がはっきりとはしないが、それ以降は「三夜」と見て取れる。川合集落にもあった「二十三夜」の石碑と同類ではなかろうか?

この謎は調べれば色々出てくるが、凌の域を越えてしまうので、某ブランドにお任せするとしようか。

 

最後を締めくくる、この集落のお社へ。石段が堪えたが、、

上からは集落が一望でき、とても素敵な場所であった。

何とも風情の残る、とても良い集落であった。

駅までの林道舗装路は地味に長いが、その脇を流れる沢筋が非常に豪快で、名前がついてもおかしくないような瀑布がいくつか見られ、飽きずに歩ける。

極めつけの車も渡れる吊り橋。

作りはしっかりしているが、これも歴史を感じさせる。何か、彼方側と此方側を繋げている、象徴物とも思わせる風貌。

渡りきることで、旅の終わりを感じさせる。そんな印象的なつり橋であった。

線路沿いの畦道を、この二日間を振り返りながら、無事終着帰路へ就くのであった。

 

昨年、思い切って始めたシノギング旅烏。

地方の奥深い山々での其れも良いが、近くの山域でも十分実行でき、まだまだ可能性を感じさせる。

 

シノギング旅烏とは、二泊以上の行程で、必ず補給をはさむというシノギングの新たなスタイル。

さて、次はどんな旅烏ができるだろうか。

 

#シノギング旅烏 #旅烏

 

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