10月3日から11日まで、ドイツ・オーストリアエコバウ建築視察に行ってまいりましたことは、先日お伝えしておりますが、これから少しずつ、ミュンヘンとウイーン、ザルツブルグで見て参りましたエコロジー、バウビオロギー的建築をご紹介してゆきたいと思います。
まずはインパクトの強かったところで、10月4日、初日に訪れた、フンデルトヴァッサー作のクンストハウス。
中には、カフェ、ミュージアム、ショップがあります。
エコロジーというか、バウビオロギー的な作品です。
(*バウビオロギー=建築生物学)
スペインのアント二オ・ガウデイの影響も受けてるかな?と思える建築家です。
(実際に受けているかどうかは知りませんが・・。)
大変印象深い、一日目の視察でした。彼の考えた建築を見るのはこれで3度目ですが、久し振りに五感を刺激された感じでした。
とにかく直線が嫌い、あっちこっち曲がりくねっている。
直線ばかりの工業製品に慣れすぎた私たちには非常に新鮮です。
考えてみれば、自然界に直線や真っ平らなんてありませんよね。
それといろいろな色をあちこちにちりばめて、目にあざやか。一色でむらもなくべた塗なんてこれも自然界にない。
また植物をうまく配置し、室内なのに太陽の光が差し込み、まるで森の中にいるような空間。人間と自然の融合がテーマです。
クンストハウスのカフェには、本でも読みながらいつまでもいたい気持ちでした。
とりあえず私の感想より、写真をご覧ください。たくさん撮りました。
写真がたくさんある建物は私が少々感激している建物と考えていただいてよいでしょう。
日本にも何件か、フンデルトヴァッサーの設計による建物が建てられています。
有名なところは、大阪市環境局舞洲工場(ゴミ処理場)。
派手な外観で609億円もゴミ処理場にかけて問題になったところです。
外から見るだけの建てものでは、彼の意図するところは伝わってこないかも。
クンストハウスがある通り。
入口近くなると、アーチが見えてきます。
入口の案内板。
中には、カフェやミュージアム、ショップなどがあります。
建物の外壁には、形の違うタイルが貼ってあります。
表面も凸凹。
窓も同じ形はない。色も違います。
ハローウィンの飾り付けでオレンジ色の大きなカボチャがあちこちに。
ご飯も食べられるカフェ。
天井がガラス張りになっており、明るく解放的。
天井からは、植物が垂れ下がっています。
真ん中に厨房があります。
日本人の団体が来てしまったので、てんてこまいの厨房でした。
ハンガリーの伝統料理らしいがドイツでもよく食べる様子。
グーラーシュズッペ。
ズッペはスープの意味。
ジャガイモのチリ風スープといったところ。
ソーセージの輪切りも入っていたような・・。
味は結構いけます。
地球の歩き方にも載っていましたね。
かなり上の方に鉢が置いてあり、水やりはどうするのかしら?と思いました。
壁面のタイル模様も私たちを飽きさせません。
厨房周りは煉瓦積み。いろんな形の煉瓦です。
トイレも面白い。
徹底的にやってます。
芳香材がやたら匂ったが、これも五感を刺激する仕掛けかしら?
な、訳ないか・・。
テーブルやいすもヴァッサーの見立てでしょうか?
とてもカラフルです。
平なように見えますが、踏み面も傾いている階段。それもすべて段、違う。
子供は楽しいと思います。
今私たちが一生懸命取り組んでいるバリアフリーの概念とまるで正反対のところをゆく階段です。
バリアフリーって人間にとって果たしていいのかしら?とも思えてきます。
瓶をつかって素敵な壁のオブジェも。
http://www.kunsthauswien.com/
下記は視察の資料より
所在地: UntereWeiβgerberstraβe,13
1030Wien‐Austria
建築家名: Hundertwasser,Arch.j.Krawina,Arch.
Peter Pelikan
建築年: 1977年~1986年
「オーストリア芸術家Regentag Dunkelbunt Hundertwasser
(生誕地FriedrichStowasser,、1928年12月15日から2000年2月19日)
はオーストリアの画家であり、建築家、彫刻家でもありました。
常に賛否両論がつきまとったものの、20世紀末までに彼は恐らく間違いなく最も知名度の高い現代オーストリアの芸術家となりました。
Hundertwasserは独自の規則にとらわれない、
時にショッキングなまでの芸術的未来像は、
(とりわけ)絵画、環境保護主義、哲学、およびファサード、切手、旗、衣服のデザインに現われています。
彼の作品に共通のテーマは直線の拒絶、鮮やかな色彩、有機的形状、人間と自然の融合、および強烈な個人主義です」。
こうした共通のテーマは、例えば「Kunsthaus」等、ウィーンで目にすることができます。
Hundertwasserは、KunstHausWienの役割についてこう記述しています。
「KunstHausWienの建築は直線、定規およびT定規の独裁に抵抗する砦であり、
グリッドシステムおよびそのばかばかしさのカオスに抵抗する橋頭堡と言えるでしょう。
芸術は人間ペースと自然のペースに見合ったものでなければなりません。
芸術は自然を尊重し、自然の摂理を尊重するものでなければなりません。
芸術は真実かつ永続的な価値を持つものとして、人間とそのインスピレーションを尊重するものでなければなりません。
重複しますが、芸術は自然と創造性と人間の創造性との間に橋を架けるものでなければならないのです。
芸術はあらゆるものに普遍の機能を回復させるものでなければならず、
単に仲間内のファッショナブルな商売であってはならないのです。
芸術それ自身が指導者による知性の教えという絆から解き放たれたものでなければなりません。
芸術は投機や文化の商業化に苦しめられるべきではありません。
芸術は否定的な理論による独善的な奴隷状態に甘んじるべきではありません。
芸術には目的がなければなりません。
芸術は永続的な価値を作り出さなければならないのです。
自然と調和して美を目指す勇気です。
KunstHausWienの目的はこうした目標を達成することです。」
Hundertwasser,1990年10月
Hundertwasserは「第三の皮膚」についても記述しています。
「これは第三の皮膚、KunstHausWienの外皮のことです。
人間は皮膚、衣服そして建物の壁と三層で覆われています。
近年の衣服と建物の発展は、もはや個人の自然な要求と歩調を合わせるものではなくなっています。
窓は内と外を結ぶ架け橋です。第一の皮膚に気孔があるように、第三の皮膚には窓があります。
窓は目に相当します。ファザードは完全な直線でも平面でもなく、でこぼこで、不規則なモザイクに遮られています。
黒白の不規則なチェッカーボード模様はグリットシステムの解体を示唆するものです。グリットシステムの崩壊です。我々が火急に必要としているのは美のバリアで、この美の障害物は無秩序な不規則性で構成されます。
パラダイスを創り上げることができるのは我々の手だけであり、
自然の自由な創造性と調和した我々自身の創造性だけです。」
Hundertwasser,1991年4月
Hundertwasserは「起伏のある床」についてこう記述しています。
「平らな床は建築家の発明です。これはエンジンには適していますが、人間には適していません。(中略)
もし近世の人間が、設計事務所に考えもなしに採用されているような平面のアスファルトの床やコンクリートの床を歩けと言われたら、
自分が生きてきた年月の間に培ってきた地球との関係や触れ合いから隔てられ、
人間として大切な部分が萎え衰え、死んでしまいます。
これは人間の魂、均衡、幸福そして健康にとって最悪の結果になるということです。(中略)
起伏のある、生き生きとした床は人間の精神的な均衡、
平らで不自然かつ敵意に満ちた我々都会のグリットシステムの中で疲弊した人間の尊厳を回復させてくれます。(中略)
起伏のある床は足のためのシンフォニーに、メロディーになり、人間は自然な振動を取り戻すことができるのです。
建築は人間を高めるものであるべきで、抑制するものであってはなりません。
起伏のある床を歩くのは素晴らしいことであり、人間としてのバランスを取り戻すことができます。
Hundertwasser,1991年4月