面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

たまには映画の話をしよう

2008年09月13日 | Weblog
 博多で、バスの待ち時間に映画を観た。「デトロイト・メタル・シティ」(DMC)は、原作漫画を読んでいなかったので、映画として大いに楽しめた。俳優としては、主演の松山ケンイチが噂にたがわず傑出している。ヒロイン役の加藤ローサはNHKドラマ「ちゅらさん」の女優とかぶって随分得をしているなと思った。

 毛糸のパンツのこだわりが映画に程好い緊張をかもし出し、しかも、刺繍に対する監督の誠実さが観る者にストレートに伝わり、この映画の清潔感が何とも清清しい。同じ漫画原作だが、砂でパンツを洗わせた監督(原作者が激怒したと聞くが、僕は嫌いではない)をはるかに凌駕する監督の技量だ。この漫画原作者なら必ず絶賛するであろう。

 ナブコフやヘッセが生きていたら感涙するだろうなと思った。僕が「ロリータ」においてキューブリック作品よりエイドリアン版を推奨するのは、パンツやソックスの見せ方にいかに神経を尖らせているかを重要視するからである。DMCは、日本の古き伝統芸「落語」のまくらと落ちを、2回の毛糸のパンツ見せで踏襲しつつ、それが観客への押し付けにならず、極上品に仕上がった傑作漫画原作映画であった。

 断っておくが、僕は決して、軒下パンツ愛好家ではない。あくまで、映画や演劇におけるエロティシズム考としての表現方法を論じたつもりである。一切の直接表現を排して毛糸のパンツ2枚に集約した李監督に、惜しみない拍手を贈ろう。いずれにしても監督の矜持が見える作品は傑作である。

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