書斎の模様換えと嬉しいメール

　二日繋りの部屋の模様換えが
漸く、八割方終わった。
　寝室と書斎の壁を取り払ったので
随分開放感が出た。仕切りに、前々
の広い居間に置いていた中国製の
サイドボード（無用の長物と化して
いた）を置いたら、これがしっくりきて
書斎も落ちついた。書籍類の整理が
残っているが、手伝いに来たＴが、
「流行物は売ったらどうですか」
と、他人事なので、あっさり言った。
Ｔがそれこそ雑誌の類いも捨てずに
いることを知っている僕は、内心ムッ、
としたが、忙しい中を手伝いにきて
貰った手前、「そうだね」と、相槌を
打っておいた。
　寝室の方は昨夜から朝にかけて
一人で換えた。ベッド、洋服タンス
和ダンス、全部配置を換え終わると
何というか、仕事の達成間に近い
充実感に独り破顔した。
　パソコンを開くと、１ヶ月前、
九州旅行帰りの新幹線で出会った
小学校の先生からメールが来ていた。
まるで若い日に恋人から手紙を貰った
ような気分で受信箱を開けた。
　福井の地方に勤務されている様子で、
裏山に熊がでた情報など微笑ましく拝読
させて頂いた。何気ないふれあいが大切な
情を育み、心の琴線を磨かせることを
あらためて知った素敵なメールだった。
　修学旅行の生徒を引率した睡眠不足の
青年教師に、疲れは微塵も見えず、若い
情熱と使命感が伝わるだけだったので、
僕は思わず話しかけてしまった。
　しかも、彼は爽やかに、不躾な僕の
問いに笑顔で答えてくれたのだ。
　福井から広島で一泊し、ろくに睡眠も
摂れず新幹線に乗ったことをメールで知り
益々彼が素敵に思えた。僕が席を替わって
あげたことは当たり前のことであるが、
その親父に話しかけられて愛想良く
振る舞う事は、彼の置かれた状況で
果たして誰もが出来るかというと、
難しいことだろう。２６才の若さで、だからね。
　だから思う。僕ら親父は若者ががんばれる様
踏ん張らなくちゃあいけないんだ。自分の預金を
増やしたり、株がどうこう言ってる場合じゃないんだよ。
目先じゃなくて……カネのない僕が言っても、説得力がないか。