久しぶりに、金融マーケットに関する話題を。
6月以降、北米株式も日本株式も、上昇局面がいったん終了してBOX相場に転じていますが、その原因は「中国経済の急減速への不安」。マスコミでは、中国国内の不動産不況を連日報じていますが、それは根本の原因ではなくて、あくまで一つの現象面に過ぎません。
ちなみに、不動産バブルで巨大な開発業者が破綻したところで、それが大手金融機関の破綻へ波及しなければ、中国経済にとっては大した傷にはなりません。中国は共産党一党独裁の国ですから、いざとなれば、世論の反対に関係なく、大手金融機関への公的資金による特別融資が実施されるので、資金繰りが詰まるような金融破綻は発生しませんので。
そんなことよりも、今の中国経済にとって、より深刻な事態は、海外からの直接投資が2021年をピークに急減していること。日本企業でも、ソニーやパナソニックが、中国の生産基地を撤収して、他地域へ移すことを公表していますが、同じように米国企業も生産基地の移設を進めています。世界の工場と言われて急発展してきた中国経済が、構造的に大きな変動期を迎えつつあります。
一方、14億人のうち、すでに3~4億人は、豊かな消費を堪能している中間層ステージに入っていると言われており、世界の消費マーケットの中でも有数の存在感を示しています。したがって、現在は財布の紐を締めているとは言え、簡単には消費レベルを元に戻すことはありえません。その結果、中国は、多額の貿易黒字を生み出してきた経済から、逆に多額の貿易赤字を生み出す経済へ変貌していくことが予想されます。
このような構造変化が、どのくらい、世界の金融市場にショックを与えるのかを、マーケットがまさに今、見極めているところなのでしょう。
ところで、マーケットがこの影響を冷静に見極め終わると、北米株も、新たな世界の工場となるインドの株も、また地理的に影響が懸念される日本の株も、また元気に再上昇を始めると思います。なぜなら、中国経済減速によるマイナスを織り込んだうえで、生産基地が替わることのメリットをプラスの要因として織り込み始めるから。
ここからは、中国経済の構造的大変貌を注視していく必要がありそうです。