2月1日(水)に行われたA級順位戦 一斉対局を振り返ってみます。
まずは、ここまで6勝1敗でトップに立っていた藤井聡太五冠と、4勝3敗の永瀬拓矢王座との対局。永瀬王座にすれば、ここで勝って、挑戦権争いを混戦に持ち込みたいところでした。結果は、先手番の永瀬王座が129手までで勝利。終始、永瀬王座のペースとなり、藤井聡太五冠も、何とか巻き返しを図りましたが、永瀬王座は全くスキを見せずに押し切りました。永瀬王座としては会心の将棋だったと思います。これで、藤井聡太五冠は6勝2敗、永瀬拓矢王座は5勝3敗と、名人位挑戦者争いを大混戦に呼び込む一局となりました。
そして、5勝2敗同士の斎藤慎太郎八段と広瀬章人八段の対局。挑戦権争いで、互いに譲れない立場にありました。結果は、先手番の広瀬章人八段が139手で熱戦を制しました。これで、広瀬八段は6勝2敗となって、藤井五冠と並びトップに立ちました。一方の斎藤八段は5勝3敗となりましたが、まだ最終戦次第でプレーオフ進出に可能性を残す形に。
次は、5勝2敗の菅井竜也八段と、2勝5敗の佐藤天彦九段の対局。菅井八段は、今年のA級順位戦で唯一、藤井聡太五冠を破った棋士であり、もちろん挑戦権の可能性を残しておりました。一方、元名人の佐藤天彦九段は、これ以上負けると降級のピンチに立たされるので、こちらも負けられません。結果は、先手番の佐藤天彦九段が103手で押し切り勝利。これで、佐藤天彦九段は3勝6敗となり、降級のピンチを脱出しました。一方の菅井八段は5勝3敗ですが、まだ最終局にプレーオフ進出に可能性を残す形に。
あとは、3勝4敗の稲葉陽八段と、1勝6敗の糸谷哲郎八段の対局。糸谷八段は降級のピンチにありますが、ここを勝てば混戦に持ち込むことができる一局でした。結果は、先手番の稲葉八段が107手で勝利。稲葉八段は4勝4敗、そして糸谷哲郎八段は1勝7敗で、残念ながら最終局を待たずに降級が決まってしまいました。
ラストは、4勝3敗の豊島将之九段と、0勝7敗の佐藤康光九段の対局。元名人同士の対局ですが、佐藤康光理事長はすでに降級が決まってしまっており、ここは何とか意地を見せたい一局でした。しかし結果は、後手番の豊島将之九段が158手で激闘を制しました。これで、豊島九段は5勝3敗となって、最終局の結果次第でプレーオフ進出の可能性を残す形に。一方の佐藤康光理事長ですが、0勝8敗となり、すでに降級は決まっていたのですが、ここでも残念な結果となりました。
予想に反して、2月1日(水)の一斉対局の結果は、最終戦の一斉対局(3月2日(木))に向けて、名人位の挑戦者争いに大混戦を呼び込むものとなりました。現時点でトップに立っているのは、藤井聡太五冠と広瀬章人八段で、最終戦をともに勝てば、この二人によるプレーオフとなります。
またどちらも負けると、トップに立つ棋士が最大5名となりますので、5名の変則トーナメントによるプレーオフが開催されることになります。すなわち、A級は開催前に「ランキング順位」が決まっていますので、まずランキング下位の順位の者2名が戦って、勝った者がその一つ上のランキング順位の者と戦い、さらにその勝者がその上のランキングの者と戦って、最後にその勝者と最上位のランキングの者が戦って、それで挑戦者が決まる仕組みです。
もし、この5名によるプレーオフになると、今のランキング順位では、A級に昇級したばかりの藤井聡太五冠が1番下位にいますので、藤井五冠はプレーオフで4連勝しないと挑戦者になれないことに。
藤井五冠としては、まず先手番が決まっている最終局に勝って、そのうえで、広瀬八段とのプレーオフに向かうシナリオが頭の中にはあるでしょう。ただでさえ、王将戦七番勝負と、棋王戦五番勝負を、並行して戦っているところに、A級順位戦のプレーオフを4局もプラスオンで戦わないといけない状況には、していられません。
だいたい、日程が組めるのかどうか?
場合によっては、4連日のプレーオフという、とんでもない対局が見られるかもしれません。