ディープインパクトとキングカメハメハという、平成の2大種牡馬が逝去したあと、次のスーパー種牡馬争いが激しくなっております。
現在は、ロードカナロア、エピファネイア、キズナ、ドゥラメンテ、モーリスの5頭(全て社台SSに繋養されている種牡馬)による争いと言って良いと思いますが、気になるのが、その産駒の育成過程や出走レースの選択に、けっこうな無理が生じていないかという点。
ご案内のとおり、種牡馬ディープインパクトは、ダービー馬7頭、オークス馬4頭のほか、3歳クラシックを合計23勝、JRAのGⅠだけで66勝というスーパー種牡馬。種牡馬キングカメハメハも、ダービー馬2頭、オークス馬1頭のほか、3歳クラシックは6勝、JRAのGⅠは24勝という実績。ですから、ダービー馬、オークス馬のオーナーになりたいとか、天皇賞や有馬記念、ジャパンカップに勝てる馬が欲しいと思う馬主さんたちは、何億円も払って、ディープやキンカメの産駒を買い漁るという現象が、各方面の競走馬セールで起きておりました。
同じGⅠでも、ダートや芝の短距離レースよりも、ダービーやオークスが晴れやかな舞台であることは間違いありませんが、これは、あくまで馬の個性が優先されるべきことであって、明らかにマイル以下が得意と思われる馬を、無理にダービー路線に乗せようというのは宜しくありません。
例えば、ロードカナロアやモーリス産駒。多くの産駒は、やはりマイルかスプリントに適性が高い産駒が目立ちます。もちろん、ロードカナロア×ガリレオなどの欧州血統の組み合わせで、2400m前後が得意な馬が生まれるケースもありますが、これはあくまで稀なケース。
前述のとおり、ダービーやオークスを狙える、というだけで、値段が跳ね上がりますので、生産界はどうしても、ロードカナロア産駒、モーリス産駒にもダービー馬やオークス馬の期待をかける傾向が強いのですが、英国のフランケルの例を出すまでもなく、種牡馬や繁殖牝馬としての価値は、むしろスーパーマイラーの方が上になるケースもあることは歴史が証明しています。やはり、あくまで馬の個性に合わせた育成や出走レース選択が望まれるところです。
上記5頭の種牡馬のうち、すでにドゥラメンテが鬼籍に入ってしまいましたが、その他の4頭は、それぞれ非常に個性的かつ特長的な産駒を送り出している名種牡馬になりつつあります。ぜひ、個々の産駒の個性をよく見極めながら、個性を伸ばす育成過程と、出走レースの選択をお願いしたいと思います。