昨日、2021年の顕彰馬投票が行われました。この顕彰馬投票は、競馬記者203名(見識者であるという前提で選ばれた競馬記者)のうち、3/4以上、すなわち153票を集めれば顕彰馬に選定されるもの。
ちなみに、顕彰馬とは、日本競馬の発展に著しい貢献をした馬、という定義ですから、競走成績はもちろん、種牡馬や繁殖牝馬としての貢献も総合的に判断されて決めるのが本来の趣旨。
ちなみに、昭和59年に最初に選ばれた顕彰馬10頭は、JRAの歴史の中で、競走成績・繁殖成績・一般社会への影響力などを総合的に判断して決定されているので、みなが納得する選定結果でありました。平成11年に、次に追加された名馬たちも、競馬ファンが「なるほど」と合点がいく結果でありました。
しかし、アメリカに倣って、競馬記者に選ばせるようになってから、この顕彰馬選定はブレるようになってきました。というのは、その時々の世論=一般ファンの熱を反映し過ぎる投票結果になってきたので、結果として、素人でも判りやすいGⅠ獲得数に収斂するように変質していってしまいました。
それでも、今回、キングカメハメハに140票が集まったというのは、投票権を持つ競馬記者の見識を示す結果となりましたが、素人と変わらない競馬記者も数多く存在するため、この馬の顕彰馬が実現できない状況が続いています。キングカメハメハは、確かにGⅠはNHKマイルCとダービーの2つだけではありますが、種牡馬としての成績は、サンデーサイレンス、ディープインパクトに次ぐ、歴代第3位(JRA勝利数や重賞勝ち数など)の歴史的な名種牡馬であります。この馬を顕彰馬にしないで、種牡馬成績が不透明なキタサンブラックを先に選ぶ感覚が判りません。
来年の顕彰馬投票では、アーモンドアイが選ばれることがほぼ決まっています。この馬の評価は動かないからです。そうすると、キングカメハメハが現役登録抹消してから20年、期限は2024年までですから、2023年と2024年の2回しかチャンスがありません。その間に、三冠馬コントレイルの引退が入ると、コントレイルが優先される可能性もあります。
このままだと、キングカメハメハが顕彰馬に選定されないかもしれません。そうなると、何のための顕彰馬選定なのか。この点は、歴史的なスーパー牝系を形成している、エアグルーヴとシーザリオについても同様です。
1月の年度代表馬選定の時にも申し上げましたが、投票権を持つ競馬記者の方々、特に、今回、キングカメハメハに投票しなかった方々へ申し上げたい。「年度代表馬」「顕彰馬」の選定は、競馬界をサステナブルに発展させていくために、大変重要な判断事項です。世論の熱などは気にせず、自ら重要だと思う視点をきちんと持ったうえで、熟慮の上、投票して下さい。間違っても、「人気投票」や「自分の好み」の延長で投票することは止めて下さい。