Andyの日記

不定期更新が自慢の日記でございます。

マホガニー

2009-09-17 15:55:27 | 音楽・楽器
レスポールモデルのスペックを見ていると、

Body: Maple Top / Mahogany Back

という表記をよく目にすると思う。レスポール以外のSGとかフライングVとか
でも、ボディーやネックには「Mahogany」と記されていることが多い。
高級機種になるとわざわざ「Honduras Mahogany」とか書かれているけど、
廉価版だと単に「Mahogany」としか書かれていないことが多い。で、当然
疑問になってくるのは「この『Mahogany』って何マホガニー?」ということだ。

マホガニーにもいろいろあって、ハイエンド系に使われるマホガニーとしては
ホンジュラスマホガニーが代表的。でも、今ではもう量産用として安定供給が
まったくできないほど枯渇している材料だから、実際にはこう書いてあっても
本当にホンジュラスマホガニーではないこともあるらしい。

さて一般的に「Mahogany」とカタログに表記されている場合に使われている
材料としては、ジェニュインマホガニー、アフリカンマホガニー、サペリ、
アマゾンマホガニー、チャイニーズマホガニー、フィリピンマホガニーなど
らしい。Gibson ではもう長いことホンジュラスマホガニーは使っていない
ようで、ほぼすべてジェニュインマホガニーらしい。また、国内メーカーの
廉価版にはジェニュインマホガニーすら使っていないようだ。

さっきから、「~ようだ、~らしい」ばかりですっきりしないので、これは
見聞を広めるという意味でも、一度メーカーに問い合わせたほうがいい、と
いう結論に達した。いったい、どのマホガニーを使ってレスポールを作って
いるのだろうか?興味のある人には面白い話題だろうが、興味のない人には
地平線の果てまで行っても興味のない話題だろう。

上にあげたマホガニーはそれぞれ音に違いがあるので、どのマホガニーが
使われているかというのは、ギター弾きにはけっこう重要な情報なのだ。
バリッとした音になるのかズボッとした音になるのかというのが素材で
ある程度決まってしまうのだから、ほんとはそういう情報は正確に消費者に
伝えて欲しい。一般に廉価版のレスポールモデルというと、やけに図太くて
すっきりしない音ととらえられている傾向があるけど、それはラワンと言う
通称フィリピンマホガニーを使われていることと無関係ではないと思う。
ちなみに、これは名前だけマホガニーであって違う木だ(マホガニーは
センダン科だがラワンはフタバガキ科)。

というか、こういう表記のしかたって問題ではないんだろうか。このあいだ、
日本水産が「ずわいがにコロッケ」という名称の商品に、実際は廉価の
ベニズワイガニを使用していたということで問題になっていたが、ギターの
世界ではこのようにただ「Mahogany」と記載することは問題にはならないのか。
ということで、下の2つの質問を各社に対してすることにした:

1. 「Mahogany」と記載されているボディーとネックには何マホガニーが
使用されているのか
2. こういう表記はまぎらわしいので景品表示法違反などで問題にはならないのか

ホームページにお客様からの質問を受け付けるメーカーにだけこの質問を
してみたところ、各社から以下のような回答があった。

[ESP]
1. いわゆるホンデュラスなど特定するマホガニーではありません。
主に東南アジアなどから輸入されているマホガニーになります。
2. お問い合わせの木材名の件ですが、木材業界の中でもかなり曖昧のようで、
有名な木材やワシントン条約に該当する木材など以外は大まかな種類の
名称のみで扱われているようです。よって、それら木材を使用する楽器でも
「Mahogany」「Ash」「Maple」などのように表記をしています。
主要メーカーでもこのように表記されており、特に問題は無いように思います。

[FERNANDES]
1. 工場担当に問い合わせたところ、マホガニーとのみ指示をして工場側に
仕入れを一任しており、厳密に産地や銘柄は指定していないようです。
価格帯や木目を見る限りアフリカンマホガニーが多いと思われます。
2. ギター業界では希少価値のあるホンジュラスマホガニーとその他マホガニーで
分ける事が多いです。※弊社もホンジュラスマホガニーを使用してるギターには
ホンジュラスマホガニーと明記しております。 その他のマホガニーは産地が
異なるだけで元は同じ種類だったり、一部の産地以外で採れるもの以外は大きな
違いが無い事からあまり問題にはなっていないようです。

[BACCHUS]
1. アフリカン・マホガニーを使用しております。
2. 当店でも改めて調べてみましたが、ギター業界では慣習的にホンジュラス
マホガニー以外のものを総称して”マホガニー”と呼んでいるようです。
なお、それらにあえて名前をつける場合は、産地によってフィリンピンマホガニー、
チャイニーズマホガニー、アフリカンマホガニーなどのように呼ぶこともできますが、
特にそれらを区別することに一般的にニーズが無いのをはじめ、木材の採取地は
時期や価格、生産数など様々な条件で変化しますので、産地名までは記載してないの
ではないかと思われます。

[GIBSON]
1. お問い合わせいただいた件ですが、材質はMahoganyとだけ公表しております。
中南米産のマホガニーとお考えいただければと思います。
2. 問い合わせいただいた件ですが、誠に恐れ入りますが分かりかねます。

[TOKAI]
1. アフリカン・マホガニーを使用しております。
2. 回答なし

[IBANEZ]
1. マホガニーに産地・銘柄等の指定はございません。
2. 回答なし


という結果だった。ESP、FERNANDES、BACCHUS はとても懇切丁寧に回答をして
くれたので、大変いい印象を持つことができた。1番目の質問なんて何度も
聞かれているようなことだろうけど、それに真摯に対応してくれたことが驚き。
また、2番目の質問はちょっとタブーかもしれない内容だったけど、それでも
きちんと答えてくれたところに好感が持てた。

GIBSON の2番目の質問に対する回答には納得がいかないので Gibson U.S.A に
問い合わせてみたところ、次のような回答があった。
「私どもが使用している木材は、アジア各地で手作業により選定しております。
また、木材を選定したその土地で製品を製造しております(The woods we use are
hand selected from various places in Asia, where the manufacturing of
the instruments takes place.) という返事が来た。正直、はぐらかされたような
印象というか、こちらの質問の意味がわかっていなかったのか?まぁ、アメリカと
日本とでは表記についての法律上の解釈とかが違うのかもしれないけど。

TOKAI は2番目の質問についてはなしのつぶて、IBANEZ は1番目の回答のちょっと
不誠実な態度に呆れてしまい、2番目の質問はしていない。

軽くまとめてみると、「Mahogany」としか表記しないのは、工場に仕入れられる
木材はいつでも同じ伐採地から同じ種類のものが来るのではなく、「時期や価格、
生産数など様々な条件で変化」するという理由があったためで、具体的な表記を
したくてもできないということだ。だから、廉価版のギターについては楽器屋さんで
試奏しないと、それが自分の好みの音かどうかは絶対にわからない。楽器メーカーの
事情がいろいろとわかって、なかなか有意義な質問でした。