Information「Shihohkan Dance-Café」
-今日の独言- 図書記念日
今日4月2日は図書記念日だそうな。その由来は、明治5(1872)年のこの日に4月2日に、東京・湯島に日本初の官立公共図書館として東京書籍館が開設されたことによるらしい。
図書館の思い出といえば、大学受験を控えた高3の夏以降、休日はおろか、よく授業を抜け出したりして、まだ比較的新しかった西区北堀江の市立中央図書館の自習室に通ったくらいだったのだが、40年余を経て、近頃はずいぶんと厄介になるようになった。
理由は、今浦島ではないけれど、知らないうちにずいぶん便利になっていたこと。いつ頃からかは調べもしていないが、蔵書をネットで検索できるし、カード登録さえすれば予約もできる。おまけに居住区の最寄りの図書館へ取り寄せてくれたうえで、ご丁寧にメールの通知もくる。些か待たねばならないがそれも4、5日から一週間ほど、受取りと返本の手間さえ煩わしがらねば、こんなありがたいことはない。
絶版となって書店で手に入らなくなった書や、ちょっと手が出せないような高価本など、或いはわざわざ蔵書に加えるほどでなくとも食指が動かされる場合など、図書館のお世話になるのが賢明と、この年になって思い知ったような次第だ。
昨夜も、読み終えたばかりの辻椎雄の「奇想の系譜」に刺激されて、古い記憶が呼び覚まされるように広末保らが紹介していた「土佐の絵金」関連をあらためて眼を通したくなったものだから、蔵書検索したところ目ぼしいものがあったので早速予約したのだが、これが夜の12時前後のこと。思い立ったらすぐさま手が打てるのがいい。昨夜はさらにあれもこれもと思い立ち、計4冊を予約してしまった。
<歌詠みの世界-「清唱千首」塚本邦雄選より>
<春-37>
春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にける
山部赤人
万葉集、巻八、春の雑歌。
奈良町初期、聖武天皇の時代の宮廷歌人。長歌よりも短歌に優れ、叙景歌に見るべきものが多い。万葉集に長歌13首、短歌37首。平安初期に編まれた赤人集があるが、真偽は疑わしい。三十六歌仙。
邦雄曰く、古今集の仮名序のまで引かれたこの菫の歌、簡素で匂やかな姿は、時代を超えて人々に親しまれる。菫摘みはあくまでも野遊び、一夜泊りも情趣を愛してのことだろう。恋歌の後朝を想像するのは邪道に近い。後世、あまたの本歌取りを生むだけに、遥かなひろがりと爽やかなふくらみとを持つ季節の讃歌、と。
たなばたも菫つみてや天の河秋よりほかに一夜寝ぬらむ 冷泉為相
藤谷和歌集、春、楚忽百首に、菫。
弘長3年(1263)-嘉暦3年(1328)、藤原定家二男為家の子、母は阿仏尼、冷泉家の祖。晩年は鎌倉の藤谷に住み、関東歌壇の指導者と仰がれた。新後撰集初出、勅撰入集は65首。
邦雄曰く、赤人の菫摘みの微笑ましくも艶な本歌取り秀作。七夕の星合の定められた一夜のみならず、春たけなわにもいま一夜、牽牛と織女は、野で逢うのではあるまいかと、恋の趣を加味して歌う。天上の花なる星が、地上の星なる花を求める発想も、星菫派の遥かな先駆けを想わせて愉しい、と。
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