ちょらちょらな美作15

　共同体に馴染めない者、熊太郎や町田氏が、ひとたびそのバランスを逸し、あがけばあがくほど深みにはまる世間。

　翻って現代社会、孤独が偏屈を生み、疎外によってさらに殻に篭り、匿名で投書をしたり、怪文書を作ったり、悪口を言ったり、書き込んだり、攻撃したり、嫌がらせをしたり、モンスター○○に変身し、自覚なき卑劣漢となっていってしまって、やがては愛されない人々となっていってしまう。

　老若男女を問わずして、歪んだ自己の主張ばかりをし、義務を守らずして権利のみを主張し、本当は愛されたいのに自ら愛されることを放棄してい、他者を愛することができずにい、それに気づかず愛されない人々のなんと多いことか・・・。





　株や投資だ、という事柄にまったく興味がなく、アメリカ人だとか、日本でも金融に長けた現代的価値観を持つ人々とは違う価値観で生活したくとも・・・

　サブプライムなどというウソに影響を受け、翻弄され、終いにゃ本来関係のないはずの自分の首を絞められる始末。

　ウソを承知で馬券ゲームをした張本人だけに、自己責任が及べばいいが、そうはならない社会の玄妙。

　しかも最終的なしわ寄せは文句の言えない弱者に向かい、十分しわがよったところで文句の言える人たちはやれやれと、安全な場所でまた馬券に手を染め。





　然るにいったい「思弁」とは何なんだ？

　アメリカの描いたビジネスモデルが明確に破綻した今、日本人は何を思うのだ？

　やはり金か？愛か？それとも・・・

　なぜ熊太郎は最後に言葉が出なかったのだ・・・？

　みなはホントのことは言えるのか？

　思弁の空しさ、言葉の虚構・・・。

　最後の熊太郎の言葉、「あかんかった」が響く・・・。

　と同時に日本人にしか分からないだろう、日本人固有のサガのようなものを内包しつつ凝縮し・・・ぶっ壊しながら、嘘を交えて笑い飛ばす。

　深い、深すぎるゼ。





　彼の時代小説はまるで、「紅しょうが」のように、どぎつく、鮮やかで、人工的で、和的で、日本情緒たっぷりの、とうてい外国人には理解されそうもなく、主張・個性が強く、いかにも安っぽく、わびしく、うまいわけでもなく、それのみでご飯はたべられないが、たこ焼きや牛丼にないとさびしい、不思議な価値だ・・・。







　で、「告白」もまた、カラ兄や百年の孤独のごとく、読まずして死ぬる（町田節）ことはできない。





　ヘタレとは、屁垂れなのか・・・ふ～ん。


－このテーマの終わり－