医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

帽子と美意識3

2006年07月25日 13時04分37秒 | Weblog
 キューバがどうしてアメリカの不倶戴天(ふぐたいてん=ともに天をいただき見る事ができないくらい怨み深い)の天敵かといえば、簡単に言ってしまえばキューバが「共産主義」だからですが、そんな単純な問題だけでもありません。

 キューバにおいて「キューバ革命」以前までには、アメリカがキューバを植民地化して搾取をしておりました。

 そのアメリカ政府の傀儡(かいらい)政権であり、アメリカと一緒に組んで搾取していたキューバの「バティスタ政権」を倒して「キューバ革命」を起こし、キューバを共産主義とした革命家が、アメリカからすればにっくき『カストロ』であり、英雄『チェ・ゲバラ』なのです。

 伝説のチェ・ゲバラは有名ですから、みなさまもその名前を一度は耳にされたことがあると思います。

 ゲバラはアルゼンチン生まれの医師ですが、彼の生涯や言動、革命家としての思想や実際の戦術などは伝説化され、(共産主義ではない)僕たち(西側)民主主義国家の若者に受け入れられ、よくTシャツやポスターの絵柄として使用されておりますので、彼の肖像をご存知の方も多いのではないでしょうか。

 僕が好きな「ギャラリーフェイク」という漫画でも確か、ゲバラが愛用した葉巻入れの話題があったように記憶しております。

 軍隊式のベレー帽に星がひとつ・・・。

 浦和レッズのスタンドでも見かけるような・・・。

 ぼくは社会主義や共産主義がいいとは思いませんが(だからといって民主主義がベストだとも思いませんが)、確かにゲバラの若き頃にバイクを乗り回して放浪して得た価値観や、貧困に窮する人民への慈愛とアメリカの支配階級に挑んだ闘争という生き方、言動、また写真で見る限りファッションもカッコよく、賞賛する人たちの気も分からないでもありません。

 なんてったってあのジョン・レノンをしてキューバ革命当時、「世界で最もかっこいい」と称賛されたのがこのチェ・ゲバラです。

 ただしその当時、マルクス主義が熱病のように流布し、日本を始め世界中に、富裕層・支配階級・国家権力に対する闘争だの革命だの・・・そういった左系の風潮が、あたかもマージナルマン(境界人=オトナと子供の中間の青年層)の既存社会システムに対する反抗であるかのごとく、(時には幼稚に)多くの若者の心をとらえていたという時代背景があります。

 カストロ議長にしても現在、アメリカ経由の情報では共産主義者の独裁者、というレッテルですが、彼はもともとは弁護士であり、アメリカが植民地化して搾取していたキューバの貧困に、ゲバラとともに立ち向かった革命家なので、賛否両論あると思います。

 しかもカストロは当初は共産主義路線ではなく、アメリカに援助を請うために訪米したのですが、アメリカ大統領は面会もせずに経済制裁を行ったために、キューバは旧ソ連と連携して行ったのです。

 知らない方がそれを知ったら驚くかもしれませんが、実際アメリカのケネディ政権は、キューバに核ミサイルを配備した旧ソ連のフルシチョフと本気の戦争になりかけたことがあります。

 それがケヴィン・コスナー演じた映画「13デイズ」で有名な「キューバ危機」です。

 昭和37年のことです。

 想像するだけでも恐ろしいことですが、まさに一触即発のぎりぎり紙一重で、核による全面戦争が回避された実話なのです。