【社説・10.07】:無人艇県内配備へ 基地負担増は許されない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.07】:無人艇県内配備へ 基地負担増は許されない
基地負担増につながる懸念がある。
米海兵隊が自律型無人艇「ALPV」を米軍那覇港湾施設(那覇軍港)に一時展開することが分かった。今週にも那覇軍港に持ち込まれる見通しだ。来年8月ごろまで約11カ月の予定で、那覇軍港を拠点に、本島沿海域で物資の輸送や補給活動を行うという。
県や那覇市には4日に沖縄防衛局から説明があった。地元への説明が直前となったことに、配備ありきという防衛局の姿勢がにじむ。玉城デニー知事は取材に対し「一方的な説明は県として納得できない。一時展開で新たな基地負担の増加はあってはならない」と語った。知事の懸念は当然だろう。
「ALPV」は、米国でも本格運用に至っておらず、那覇軍港への配備は、実証運用のための展開としている。無人艇の「テスト」を沖縄の海で行うことを容認できるはずがない。
安全対策として全ての活動には有人のセーフティー・ボートが随伴し、混雑する港湾内や航路では人が乗船し運航するというが、無人艇が制御できなくなる可能性をはらんでいる故ではないのか。
四方を海に囲まれた沖縄県にとって、海上航路は重要な生命線である。那覇軍港と隣接する那覇港は物流の拠点だ。無人艇の「テスト」で周辺への影響はないのか。
防衛局は、沖縄への展開中は非武装で食料などの補給品を運び、「現時点ではミサイルや弾薬を輸送する計画はない」としている。ただ、今月下旬からは那覇港を含めた民間の港湾や空港など公共インフラを使った大規模な日米共同統合演習が予定されている。無人艇を使用した演習が実施されるかは不透明だが、無人艇で武器や弾薬を輸送する訓練も否定できない。これらさまざまな疑問が湧く無人艇の一時配備は撤回すべきだ。
県内には、これまでも嘉手納基地に無人機MQ4、MQ9が一時配備されており、周辺の嘉手納町、北谷町は負担増につながるとして配備に反対の姿勢を示している。
米軍基地の使用条件などを定めた「5・15メモ」では、那覇軍港の使用主目的は「港湾施設と貯油所」と記している。防衛局が浦添移設に当たって作成したパンフレットでは「貨物や人員を艦船で輸送するための積み下ろしなどを行う機能」を担うとしている。
だが米軍は2003年以降、軍港の使用回数を明らかにしておらず、MV22オスプレイの軍港使用も常態化している。今回の無人艇配備も含め、軍港の機能は事実上拡大している。
浦添移設に当たって日米両政府は「現有機能の維持」を強調するが、現在の機能も定義は定まっておらず、米軍の一存で拡大されるのは火を見るより明らかだ。那覇軍港、代替施設とも機能が強化され、県民負担が拡大することはあってはならない。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月07日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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