【社説・11.03】:万博まで6カ月/未解決の課題が多すぎる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.03】:万博まで6カ月/未解決の課題が多すぎる
2025年4月13日の大阪・関西万博開幕まで6カ月を切った。会場となる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)にはシンボルの木造巨大施設「リング」が完成したが、出展する161の国・地域の多くは内容をまだ示していない。一部のパビリオンは開幕までに完成しない可能性がある。
前売り券の販売枚数は目標の半分を超えた。ただその大半は割り当てられた企業による購入とみられる。世論調査では「万博に行きたい」との回答は4分の1に満たず、社会全体に機運が高まっているとは言い難い。
一方で、1日最大22万7千人の来場客を見込む大型事業として課題は山積する。政府や大阪府・市、日本国際博覧会協会は確実に解決していかなければならない。
一つは混雑だ。会場に直結する鉄道は地下鉄1路線だけで、乗車率は最大140%を見込む。府市は企業に時差出勤や在宅勤務の実施を呼びかけているものの、協力事業所は現段階で目標の2割弱にとどまり、実効性は見通せない。
大規模災害時には会場の人工島の孤立が懸念される。協会は最大15万人が3日間孤立する想定で食料の備蓄などを進めているが、パビリオンも含め来場者全てが安全に避難できる場所を本当に確保できるのか。
3月には地中から発生したメタンガスが爆発し、建物の天井や床が破損する事故が起きた。協会は換気強化など再発防止策を講じたが、廃棄物を埋め立てた人工島では今後もガス発生の可能性は否めない。安全確保を最優先に万全の対策を求める。
会場整備費は現段階で当初計画の1・9倍の2350億円に膨れ上がっている。予算管理が甘すぎる。対策として協会は今年3月に最高財務責任者を置いたが、本来ならもっと早く取り組まねばならない話だ。
元日の能登半島地震では復旧を優先し、万博の開業延期を求める世論が高まった。豪雨災害も重なり被災地の苦境は深まるが、国際的な信用を考えればもはや延期は難しい。
だからといって、開幕ありきで突き進むのは許されない。国家事業と位置づける以上、協会や地元任せにせず、政府が主体的に課題解決に関わるべきだ。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月03日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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