【社説②】:認知症の推計 社会とのつながりを保ちたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:認知症の推計 社会とのつながりを保ちたい
認知症は、長生きすればだれもがなりうる病気だ。症状が表れても、安心して生活できる社会を構築していきたい。
認知症の高齢者は、2022年の443万人から40年には584万人に増えるとの将来推計を、厚生労働省の研究班が公表した。高齢者の7人に1人が認知症になる計算だ。
認知症の原因となる病気は数多いが、中でも、脳に特定のたんぱく質がたまる「アルツハイマー型」が全体の6~7割を占めている。認知症を根本的に治すことはまだできないが、進行を遅らせる薬は開発されている。
かつては、「認知症になると何もできなくなる」との認識が根強くあった。本人は家に閉じこもり、介護する家族も疲弊してしまうケースが多かった。
だが、近年は、仕事や趣味を続けるなど、社会とのつながりを保つことが、認知症の進行を遅らせる効果があるとわかってきた。
認知症に対する誤解や偏見を 払拭 することが大切だ。
今年1月には、「共生社会の実現」を掲げた認知症基本法が施行された。これを踏まえ、政府は今年秋にも、具体的な施策を基本計画としてまとめる予定だ。
認知症になっても自立して暮らしている人はいるが、安全に生活していくためには、行政や企業のサポートが欠かせない。
政府は、認知症の当事者や家族の意見を踏まえ、認知症の人が社会と関わっていくために必要な施策を示してもらいたい。
認知症の人を見守るサポーターを養成したり、外出を手助けする事業を展開したりしている自治体は少なくない。こうした取り組みを広げていくことが重要だ。
最近は、認知症の人が使いやすい商品を開発する企業も増えている。異常な操作をした場合に火を自動で停止するガスコンロや、表裏を気にせずに着られる洋服を製作している企業もある。
一方、認知症の予防も重要な課題だ。研究班は今回、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)についても調査し、22年の558万人から、40年には612万人に増えると推計した。
MCIは、記憶力の低下などの症状はあっても、日常生活に支障がない状態だ。認知症に移行する人がいる一方、予防によって健常な状態に戻る人もいる。
糖尿病など生活習慣病は、認知症のリスクを高めるという。自治体や医療機関が、食事や運動などの指導を強化すべきだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月16日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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