【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【大谷昭宏のフラッシュアップ・08.28】:時間かかっても原発ゼロにするしかない
「決して賛成ではないけれど、反対はしない」。私はテレビなどでこのようにコメントしている。福島第1原発処理水の海洋放出が、ついに24日から始まった。
「安全性への理解は深まった」としながらも、「科学的安全と社会的安心は違う」とする全漁連会長の言葉に、震災から10年、このコラムに福島の道の駅で見かけたミニトマトについて書いたことを思い出した。
他県産と同じ値をつけたまっ赤なトマトに、町の職員は「やっとここまできた」と顔をほころばせた。大気や海洋、土壌汚染、子どもの甲状腺…。それらが報じられるたびに農産物は買いたたかれ、嫌というほど思い知らされた風評被害。
そしてこのたびも、そんな風評被害で福島を苦しめるなと政党や市民団体の人々が東電や福島県庁前に立つ。だが手にしたボードには「処理水」ではなく、決まって「汚染水」と大書きされている。それを目ざとく報じる中国など一部の国々。福島の生産者や、あの日、道の駅でミニトマトを前にした町の職員はこの光景をどんな思いで見ていることか。
問題の本質は、そこにないはずだ。2度とこんな事態を引き起こさないことではないのか。そのためには脱原発。新規建設はもちろん、再稼働もとんでもない。時間がかかろうとも、原発ゼロの国にするしかない。
この時期、多くの人々の胸に去来する、詠み人知らずの句がある。
〈八月は六日 九日 十五日〉
そこにそこに「過ちは 繰返しませぬから」の思いを込めて、「二十四日」をつけ加えたらどうだろう。海洋放出が続く向こう30年間、せめてこの日を忘れずにいたい。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)
ジャーナリスト。TBS系「ひるおび!」東海テレビ「NEWS ONE」などに出演中。
■大谷昭宏のフラッシュアップ
元読売新聞記者で、87年に退社後、ジャーナリストとして活動する大谷昭宏氏は、鋭くも柔らかみ、温かみのある切り口、目線で取材を重ねている。日刊スポーツ紙面には、00年10月6日から「NIKKAN熱血サイト」メンバーとして初登場。02年11月6日~03年9月24日まで「大谷昭宏ニッポン社会学」としてコラムを執筆。現在、連載中の本コラムは03年10月7日にスタート。悲惨な事件から、体制への憤りも率直につづり、読者の心をとらえ続けている。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・連載・「大谷昭宏のフラッシュアップ」】 2023年08月28日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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