【社説①】:首相が政倫審に 裏金の解明には程遠い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:首相が政倫審に 裏金の解明には程遠い
自民党派閥による政治資金パーティー裏金事件を受けて開かれた衆院政治倫理審査会。岸田文雄首相が党総裁として出席、弁明したが、内容は党役員による聞き取り調査結果の範囲にとどまった。説明責任を果たしたとは言えず、裏金の実態解明には程遠い。
最も問われるべきは、裏金の使途や裏金づくりの仕組みをいつ誰が作ったのかだ。こうした点が不明のままでは政治責任を明確にできず、実効性のある再発防止策の法整備もできない。
しかし、首相は裏金を「還付金等」と呼び「政治活動費以外に使用したり、違法な使途に使用した例も把握されていない」と強調した。政治資金収支報告書への不記載があった安倍、二階両派議員の言い分を繰り返すだけでは、裏金の実態に迫れるはずがない。
安倍派による裏金づくりの経緯も「いつどのようにして始まったかは判然としないものの、遅くとも十数年前から行われていた可能性が高い」と、党の調査結果を引用しただけだった。
長く同派会長を務めた森喜朗元首相の裏金への関与は、所属議員らへの聞き取りで「森氏が直接関わったという発言があったとの報告は受けていない」と述べた。なぜ本人から直接聴取せずに関与を否定できるのか。自民党が調査しないなら森氏を国会に呼び、事情を聴く必要がある。
首相は2022年に7回開いた自身の政治資金パーティーについて首相就任前から続く「勉強会」であり、大臣規範が自粛を定めた「国民の疑念を招きかねない」大規模パーティーでないと強弁。
立憲民主党の野田佳彦元首相に繰り返し追及されてようやく、首相在任中は開催しないと明言したものの、反省の弁はなかった。
岸田派のパーティー収入不記載も「事務処理上の疎漏」として意図的ではないと強調したが、追及を避けるために問題を矮小(わいしょう)化しようとしていないか。
首相が政倫審での弁明を申し出たのは、公開の場での説明を渋る安倍派幹部らに国民への説明を促すためだったはずだが、首相自身が裏金の実態を解明する決意を示さないのなら、高まる国民の不信を払拭することはできない。
1日には安倍派幹部4人が出席する政倫審が開かれる。実態解明の状況次第で、国会は参考人招致や証人喚問を躊躇(ちゅうちょ)すべきでない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年03月01日 07:50:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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