【New門】:増えるか、若者の「岸田推し」…「無色透明」な印象? 支持率も動画視聴回数も低調
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【New門】:増えるか、若者の「岸田推し」…「無色透明」な印象? 支持率も動画視聴回数も低調
[New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「若者の支持率」。
岸田内閣になって、若い世代の支持率が下がっている。昨年は過去10年間で初めて、全体の支持率より若者の支持率が下回った。若者から高い人気を誇った安倍元首相、菅前首相と岸田首相は何が違うのか。
◆動画再生、安倍元首相に比べ伸びず
首相官邸の公式「ユーチューブ」チャンネル。
岸田首相が10日、「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)の始球式に臨んだ動画の視聴回数は7万回を超えた。ただ、記者会見の動画は、数千~1、2万回ほどだ。一方、安倍元首相は、記者会見動画で数万~数十万回、外遊の様子も10万回超えが珍しくない。
内閣発足から1年を振り返る「恒例の動画」の視聴回数を比較する。岸田首相は1・1万回、菅前首相は4・3万回、安倍元首相は3・7万回だった。
「若者人気は動画に表れる」と助言してくれたのは、若者の立場から政党への政策提言を行う「日本若者協議会」の室橋祐貴代表理事(34)だ。
「動画では、短時間で伝わる言葉や実績が重要。岸田さんの発言は明確さを欠き、若者に届きにくいのではないか」
室橋さんはそう分析する。
◆改革意欲、低い評価
低支持率にくすぶる岸田内閣だが、「岸田離れ」が顕著なのは18~29歳の若者世代だ。
読売新聞社の全国世論調査を使い、2006年から22年の内閣支持率を、年平均で分析した。22年の若者支持率は、全体より2ポイント低い53%。第2次安倍内閣発足直後の13年以降、若者が全体を下回るのは初めてだ。
13~19年の安倍内閣時代、若者支持率は53~71%で、全体より3~16ポイント高かった。菅内閣の20年も、若者が全体より10ポイント高い61%。岸田内閣発足の年である21年も、若者が9ポイント高い54%だった。
22年夏、読売と早稲田大の共同世論調査で、岸田首相の改革意欲を「評価しない」(「どちらかといえば」を含む)と答えた若者の割合は59%に達し、全世代で最も否定的だった。岸田内閣発足直後の21年秋の31%と比べると、ほぼ倍増した。
読売・早大調査では、岸田、菅、安倍の3首相について、「まじめ」「明るい」など10種類のイメージに誰が最も当てはまるかも尋ねた。若者を含めた全世代が一致して、岸田首相をトップに選んだのは「運がよい」というイメージだけ。若者以外の世代は、「クリーン」「敵が少ない」のイメージも岸田氏がトップだったが、若者はいずれも菅氏をトップに選んだ。
◆心をつかむメッセージと政策が必要
政策も、支持率に直結する。
安倍元首相はアベノミクスや働き方改革、菅前首相は携帯電話料金の引き下げや不妊治療の保険適用などを推進した。暮らしや将来と直結する政策が、若者の心に響き、内閣への高い支持率につながった。
岸田首相は「新しい資本主義」や「異次元の少子化対策」など、インパクトのある言葉でアピールするが、財源の確保や実現性は見通せていない。1月には参院代表質問で「リスキリング(学び直し)」を産休・育休中も「後押しする」と述べたが、「育児中にそんな余裕はない」などと批判が集中。後に「本人が希望すれば」と釈明に追われる場面もあった。
「岸田首相はどんな人?」
就任当初は関心と期待を持っていた若者たちだったが、首相の個性も政策も十分には伝わらず、いわば「無色透明」の状態が続いているのが現状だろう。
若者の心をつかむ力強いメッセージと政策の具体化――。岸田首相にとっては、そのあたりが若者の支持率を回復させる「カギ」となりそうだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【「New門」】 2023年03月17日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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