【社説・10.05】:石破首相所信表明 国民の納得は得られない
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.05】:石破首相所信表明 国民の納得は得られない
「政治の信頼回復」は石破内閣の命題ではなかったか。この程度の所信表明で国民の納得が得られると考えてはならない。沖縄に関する姿勢も評価できるものではない。
石破茂首相が就任後初の所信表明演説を行った。政治不信の払拭に向けた姿勢は不十分だと言わざるを得ない。「改正された政治資金規正法を徹底的に順守し、限りない透明性を持って国民に向けて公開する」と述べたが、国民はこの法改正で政治の信頼回復が進むとは考えていない。
共同通信が6月に実施した全国電話世論調査で、改正政治資金規正法によって「政治とカネ」の問題が解決するか聞いたところ「効果がない」「あまり効果がない」という回答は78・9%に上った。
改正政治資金規正法は政治改革の名に値しないと国民は考えているのだ。石破首相はそのことへの認識が薄いのではないか。国民が求めているのは政治の信頼回復に向けた具体的な施策である。
所信表明は「ルールを守る」「日本を守る」「国民を守る」など5つの柱を立てて、新内閣の政治姿勢を表明した。しかし、総裁選で掲げた公約や発言からは後退している。その一つが日米地位協定改定である。
総裁選で石破首相は候補者の中で唯一、日米地位協定見直しに取り組む考えを表明し、他候補との違いを際立たせた。ところが、所信表明で言及がないのは理解に苦しむ。そもそも、石破首相は地位協定のどの条文を改めるのか具体的に示していない。沖縄県や渉外知事会、全国知事会の地位協定改定要求に向き合う必要がある。
沖縄に関しては「基地負担の軽減に引き続き取り組む。在日米軍の円滑な駐留のためには地元を含む国民の理解と協力を得ることが不可欠」と前置きし、普天間飛行場返還に伴う辺野古新基地建設を進める考えを表明した。新基地計画への固執は許しがたい。
完成時期が定まらず事業費が際限なく膨張し続ける辺野古新基地建設を強行し続ける限り、沖縄の基地負担軽減は実現しない。県民が求めているのは早期の普天間の危険性除去である。それは県民の生命・財産を守るためであり、「在日米軍の円滑な駐留」のためではないのだ。
石破首相は「沖縄では、国内最大の地上戦が行われ、多くの県民が犠牲になられたこと、戦後27年間、米国の施政権下に置かれたことなどを、私は決して忘れない」と述べた。ならば、施政権返還から52年を経てもなお基地の重圧に苦しんでいる沖縄の現状を直視し、新基地建設など基地県内移設によらない負担軽減策を模索すべきである。
石破首相は総裁選で「衆院選での判断材料を提供する必要がある」と述べていた。初の所信表明は判断材料にはなり得ない。今後の国会審議で国民の判断材料に足る説明に尽くすべきである。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月05日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます