【混迷・兵庫県知事失職㊦】:候補者乱立で「斎藤再選」の可能性も、思惑入り乱れる出直し知事選
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【混迷・兵庫県知事失職㊦】:候補者乱立で「斎藤再選」の可能性も、思惑入り乱れる出直し知事選
「こういう状況になったことは…申し訳ないなという思いで…あの、自分自身に対して悔しい思いです」
兵庫県議会の自民党会派などによる辞職申し入れを翌日に控えた9月11日の午後、定例記者会見に臨んだ兵庫県知事の斎藤元彦(46)は開始から約1時間後、突然声を詰まらせ、涙ぐんだ。
会見中に涙ぐんだ斎藤元彦兵庫県知事=9月11日、兵庫県庁(彦野公太朗撮影)
令和3年の前回知事選で自民と日本維新の会の推薦を得て初当選を果たした斎藤に対し、維新はすでに会見の2日前、辞職要求と出直し知事選の実施を申し入れていた。
自民を含む全86県議から退場を迫られる事態にあって、斎藤は3年前に自身に出馬を要請した自民県議3人の実名を挙げ「先生方には心から感謝している」と述べた。
これを聞いた維新県議は、ほくそ笑んだ。「自民と知事。維新の名前は出ないほうがいいねん」
3年前の知事選で斎藤は松井一郎(60)や吉村洋文(49)ら当時の維新幹部の応援を受けた。就任後に知事報酬の削減など「身を切る改革」や将来世代の支援を進める一方、重要政策を根回しなく発信する姿勢は、揶揄(やゆ)を込めて「維新知事」と評された。
当の維新側も、国政と地方の選挙で党勢を拡大している間は、それに乗った。「維新県議団は知事与党」。告発文書問題発覚後の今年4月に至っても、県組織「兵庫維新の会」代表で参院議員の片山大介(57)は、そう言ってはばからなかった。
しかし文書問題で告発者を特定して処分した斎藤の対応に批判が集まる中、県議会調査特別委員会(百条委員会)の設置に維新県議21人全員が反対し「斎藤擁護派」のイメージが拡散すると、一気に守勢に立たされた。
本拠地・大阪の選挙で敗北が相次ぎ、党内から「文書問題の対応が後手に回った影響だ」との批判が噴出。調査優先の方針を転換し、他会派に先駆けて辞職を要求したのも、斎藤擁護派のイメージを払拭する思惑があったからにほかならない。
一方の自民。もとをただせば、3年前の知事選は一枚岩でなかった。維新が独自候補を擁立すれば、自民候補と目されていた当時の副知事では勝てないとの見方が一部で強まり、斎藤を支持する県議11人が会派を離脱して擁立に走った。維新勢力の県内への伸長を警戒した国会議員が同調し、斎藤の党本部推薦を決めた経緯がある。
昨年4月、自民は会派を統一したが、しこりは残る。百条委設置の採決では足並みがそろわず1人が反対。不信任決議案の提出にあたっては、最大会派として主導する動きはみられず、立憲民主党議員らでつくる第4会派「ひょうご県民連合」に引っ張られる形になった。
全会一致の不信任決議も斎藤に辞職を決断させるに至らず、主導権を握られた形で出直し選に突入する自民は独自候補擁立を模索する一方、他党との相乗りの可能性も否定していない。ベテラン県議は「こんな短期間で決める候補でいいのか。準備不足だ」と憤る。
維新は独自候補を擁立する方針。県民連合は政党色を出さずに候補者を支援する考えで自民、公明に連携を呼びかける。県民連合の県議は「今回は資質、人物の問題。県民に責任を持てる知事を誕生させる」と息巻く。
3年前と構図は一変するものの、各党の思惑が複雑に絡む点は出直し選も同じ。ただ情勢は流 動的で、候補者が乱立すれば「『斎藤再選』の可能性も否めない」とある県議は危機感を募らせる。
県政の刷新を掲げる斎藤が知事就任後3年余りで講じた政策の評価も定まらない中、有権者は、斎藤県政継続の是非について判断を迫られる。選挙によって県民の負託を得た知事は現下の混迷に終止符を打てるのか。答えはまだ見えない。(敬称略)
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■連載は喜田あゆみ、地主明世、倉持亮、木津悠介が担当しました。
県政史上初めて不信任を決議され、失職することになった斎藤知事。県政は刷新されたのか、はたまた停滞を招いたのか。3年の軌跡をたどり、今後の展望を探る。
元稿:産経新聞社 主要ニュース 政治 【話題・地方自治・兵庫県・職員へのパワハラ疑惑や告発文書への対応を問題視され、議会から全会一致で不信任を突き付けられた斎藤知事】 2024年09月29日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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