【社説①・11.06】:経済対策 予算のバラマキに陥らないか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.06】:経済対策 予算のバラマキに陥らないか
自民、公明の与党と国民民主党の政策協議は、予算のバラマキに陥ることはないのか。国民民主は、財源対策にも責任を持つ覚悟はあるのか。
与党と国民民主は、新たな経済対策と税制改正などについて協議を始めることで合意した。最大の焦点が、年収が103万円を超えると所得税が課される「103万円の壁」の解消だ。
パートやアルバイトなどが働く時間を抑える要因である「年収の壁」の一つとされている。
国民民主は衆院選で、働く人の「手取りを増やす」ことを公約に掲げ、「178万円」に引き上げるべきだと主張している。
103万円となった1995年と比べ、最低賃金が1・73倍に伸びたことを根拠に挙げている。
物価が上昇しているのに、約30年前と課税最低限が同額では弊害が大きい。人手不足の現状では引き上げ自体は検討に値しよう。
ただし、具体的な引き上げ幅については考慮すべき点が多い。
国と地方の税収は7兆~8兆円程度減るとされる。その減収分を国債発行で賄えば、将来世代にツケを回す結果になる。
年収が多いほど減税額が大きくなることを懸念する声もある。減税額は年収200万円だと8・6万円だが、800万円ならば22・8万円と試算されるためだ。
国民民主は財源について、減税によって消費意欲が高まり、税収も増えると主張するが、楽観的過ぎる。増収分があれば、他に振り向けるべき分野は多い。財政健全化も、その一つである。
また、年収の壁は、「103万円」だけではない。企業規模などに応じて社会保険料がかかる「106万円」や「130万円」の方が手取り額に大きく影響する。制度全体を見渡して、時間をかけて議論を進めることが大切だ。
約54円のガソリン税のうち、約25円分の課税を止め、価格を抑制するトリガー条項の発動の是非も論点だ。国と地方で計1・5兆円の減収となるほか、ガソリン消費が増え、脱炭素化に逆行する。
経済対策や税制は本来、財源対策を含め、政策全体のバランスを考慮して進めるべきものだ。
国民民主が、単に少数与党の弱点を利用して、自党の要求の実現だけを図ろうというのならば、無責任というほかない。
また、石破首相が「部分連合」と称する枠組みで自らの延命のために譲歩を重ねれば、第1党が第4党に振り回される結果となり、政局を不安定にするだけだ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月06日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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