【社説①】:同性パートナー 権利擁護の流れ加速を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:同性パートナー 権利擁護の流れ加速を
同性パートナーと同居する男性が、相手と同じ名字への変更を求めていた審判で、名古屋家裁は変更を認める決定をし、確定した。国民意識の変化などが底流にあり同性婚など性的少数者(LGBTQ)の権利を擁護する司法判断が相次ぐ。国はこの流れに沿い、早期に法整備へと踏み出せないか。
代理人弁護士によると男性は2017年、パートナーと公正証書による「結婚契約」や相互の任意後見契約を結び、翌年から同居。23年からは里子も養育している。
男性は普段、パートナーと同じ名字を使っていたが、クレジットカード名義(戸籍上の氏名)と姓が異なる説明を求められ、意に沿わずカミングアウトするリスクがあった。一方、パートナーは性的指向や男性との同居を周囲に打ち明けておらず、里子との関係を詮索される危険性もあったという。
家裁は2人の関係について「異性同士の夫婦と実質的に変わらず婚姻に準じる関係」と認めた。性的指向を意に沿わずカミングアウトせねばならない状況は「社会生活上の著しい支障」と男性らを擁護し、名字の変更は、戸籍法107条1項の「やむを得ない事由」に当たると結論づけた。
共同通信の世論調査で同性婚を「認める方が良い」との回答は年々上がり、今年は73%に達した。また、同性カップルを法的に認める「パートナーシップ制度」を持つ自治体は400を超えた。
家裁の決定もその流れに沿い、「国民意識が肯定的に捉える方向に変化しつつあり、異性カップルと同様の法的保護は一定程度、許容されるべきだ」と指摘した。
同性婚を認めていない現行法が憲法違反かどうかが争われている訴訟でも札幌高裁や名古屋地裁で「違憲」、東京地裁などでも「違憲状態」の判決が出ている。動きの鈍い政府や国会に対し、司法判断が現行の法体制の見直しを迫っているといえよう。
もっとも今回の申し立ては「夫婦同姓」の枠組みの中、同姓でないと夫婦と見なされない現実が背景にあるのも確かだ。しかし、法務省の世論調査では「選択的夫婦別姓」や「旧姓使用の法的位置付け」への支持が多数で、「夫婦同姓の維持」を支持する人は3割弱にとどまる。婚姻や婚姻後の姓のあり方で、人々の意識が旧習へのこだわりを見直す方向へと傾いていることを政治は直視すべきだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年05月16日 07:43:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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