【社説①】:介護職の待遇 賃上げで奮闘支えねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:介護職の待遇 賃上げで奮闘支えねば
介護サービスの対価として介護保険などから介護事業者に支払われる報酬の改定内容が決まった。現場で介護を支える職員の賃金が2024年度に2・5%、25年度に2・0%のベースアップになるよう事業者への報酬を増やす。
ただ、想定通りの賃上げが実現しても昨年の春闘での主要企業の平均賃上げ率3・6%には及ばない。介護職の平均賃金は全産業平均より月額約7万円低いままだ。現場の奮闘に応えるには継続的な賃上げを実現する必要がある。
介護報酬は3年に1度改定され今回は24年度から実施する。
介護報酬全体の引き上げ幅は1・59%(国費で432億円)=グラフ。その一部を職員の賃上げに充て、特定職種に偏らないよう報酬配分にも柔軟性を持たせる。
厚生労働省は賃上げ実施の実態を調査し、改善が必要な場合、速やかに策を講じるべきである。
事業者への報酬が増えれば、保険料や利用者負担も増えることになる。政府は国民に対し、待遇改善の必要性を粘り強く説明しなければならない。
今回の改定では、働きやすい職場づくりの一環で、介護現場の生産性向上策を検討する委員会設置を新たに事業者に義務付け、介護ロボットなどの技術を活用した場合の報酬も新設する、という。
効率的で質の高いサービスを提供する取り組みは職員の待遇改善にもつながると期待したい。
コロナ禍では医療機関に入院できず、介護施設にとどまった入所者に十分な医療が提供できないという課題も浮き彫りとなった。
このため、あらかじめ医療機関との連携、感染症に対応する研修や訓練への参加、医療機関からの指導を受ける取り組みなどを対象に報酬を新設し、感染症対策を強化する。一方、感染症や災害時の「業務継続計画」を策定していない事業者への報酬は減額する。
感染症や災害はいつどこで起きるか分からない。そうした非常時でも可能な限り介護サービスを提供し、高齢者が安心できるよう職員を確保して体制を整えておくことが必要だ。そのための介護報酬改定でなければならない。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年01月23日 08:07:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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