【社説①】:不評の経済対策 国民の冷めた目を直視せよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:不評の経済対策 国民の冷めた目を直視せよ
政府の経済対策の評判がすこぶる悪い。減税などで国民の気を引き、政権浮揚をもくろむ岸田文雄首相に多くの人は冷めた目を向けている。
与党幹部は、国民への説明が足りないと指摘した。こんなにばらまくのに内閣支持率が上がらないはずはない、とでも考えているのか。国民を甘く見てはならない。
経済対策には、1人当たり計4万円の所得税・住民税の定額減税、低所得世帯への7万円給付、燃油代抑制と電気・都市ガス料金補助の4カ月延長などが盛り込まれた。
裏付けとなる一般会計補正予算の追加額は13兆1千億円で、定額減税などの還元策を加えると、経済対策の規模は17兆円超に膨らむ。
昨年の経済対策の追加予算額29兆1千億円より少ないとはいえ、4兆円前後が多かった新型コロナ禍前と比べれば過大だ。「歳出構造を平時に戻していく」と記した6月の骨太方針は早くも空文化している。
国民の評価は厳しい。共同通信社の世論調査では、経済対策の柱である定額減税や給付金支給を「評価しない」と答えたのは62・5%で、「評価する」の32・0%を大きく上回った。
評価しない理由は「今後、増税が予定されているから」「財政再建を優先するべきだから」「政権の人気取りだから」を挙げた人が多い。岸田政権の政策や財政事情を理解した上での回答だと分かる。
防衛費の大幅増額と、その財源としての増税を昨年決めたのは岸田首相である。増税が控えているのに減税するのは矛盾していると、多くの国民は首をかしげている。
それを記者に問われた首相は「政策には順番がある」と強弁した。国民が納得できる説明は聞こえてこない。 補正予算の財源は大部分を赤字国債の追加発行に頼る見通しだ。首相は「増えた税収を国民に還元する」とPRしているが、実際は借金が減税の原資である。鈴木俊一財務相も認めている。
物価高対策ならば、給付金の方が早く、的確に対応できる。即効性がなく、高所得者までも対象となる定額減税に首相はなぜこだわったのか。
先日の会見では「来夏のボーナスの時点で賃上げと所得減税、双方の効果が給与明細に目に見えて反映される環境をつくり出す」と力説した。
一度限りの減税は、消費ではなく貯蓄に回るとの見方が強い。所得減税でデフレ脱却が見えてくるという筋書きに説得力はない。
首相が打ち出す重点政策や最近の言動は、来秋の自民党総裁選再選を過度に意識しているようにみえる。
衆院解散を何度かちらつかせたのも、自身の再選を有利に運ぶためだ。保身優先のリーダーに国民がそっぽを向くのは当然で、最新の内閣支持率は過去最低の28・3%に落ち込んだ。首相はきちんと国民と向き合うべきだ。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース オピニオン 【社説】 2023年11月10日 09:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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