【中山知子の取材備忘録・02.26】:岸田首相の顔がだんだん小さくなっている…選挙ポスターにみる「党の顔」の存在感
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【中山知子の取材備忘録・02.26】:岸田首相の顔がだんだん小さくなっている…選挙ポスターにみる「党の顔」の存在感
岸田文雄首相をとりまく環境が、どうもパッとしない。昨年末の閣僚辞任ドミノに続き、今年に入ると長男・翔太郎氏の「外遊中の観光&おみやげ購入」疑惑や荒井勝喜氏の性的少数者への差別発言による更迭と、秘書官の問題に振り回された。
ここまでは周囲の問題だが、自身の発言をめぐっても修正や波紋の連続だ。年頭会見で「異次元の少子化対策」を打ち出し、期待感がふくらむ中、2月17日の国会で「家族関係社会支出は2020年度でGDP比2%を実現した。さらに倍増しようと申し上げている」と発言。かなりの大風呂敷かと思いきや、翌日に松野官房長官が「(倍増の)ベースとなる基準が明確ではない」と修正するなど、うやむやに。さらには側近的な立場にある木原誠二官房副長官が、「子ども・子育て予算倍増」について「出生率がV時回復すれば倍増する」と、出生数のV字回復が見通せる社会状況ではない中での発言をして反発を招き、うやむや感ばかりが倍増している。
少子化政策をめぐり、本来は色めき立ってもいい政府の「予算倍増」への期待感やサプライズ感はどんどん後退。「倍増」ワードだけがひとり歩きする要因の1つをつくってしまった首相の発言の真意や責任も、うやむやにされたままだ。
そんな永田町では、4月の統一地方選が近づき、各党が準備に追われている。各党の選挙ポスターも今年に入って発表されているが、岸田首相を起用した自民党(2月21日発表)のポスターを見て、気づいたことがある。
「党の顔」である首相の顔が以前より小さいのだ。
「地域の声で、新たな日本へ」という文字がメインで、首相の顔(上半身)はその下。2021年10月、党総裁&首相就任時に発表されたポスターは「新しい時代をみなさんとともに」のキャッチコピーとともに、ポスター全体に首相の上半身が印刷されていた。参院選前の昨年6月に発表されたポスターは、首相の写真はやや小さくなったが「決断と実行。暮らしを守る。」のコピーとほぼ同じ大きさだった。
そこから半年あまり。首相の顔はさらに小さくなり、「地域の声で、新しい日本へ」のコピーのほうが目立つ構図になっていた。
就任以降、ピンチっぽい局面ものらりくらりと乗り切り、衆院選、参院選の2つの国政選挙を勝ち抜いた岸田首相。だが、昨年の参院選中に起きた安倍晋三元首相の銃撃死を機に、旧統一教会と党の関係が表面化して以降、閣僚辞任の問題をはじめ、それまでの「ピンチっぽい局面」が明らかな「ピンチ」になり、支持率も下落、低迷。のらりくらりでは対応できない状況になった。
選挙ポスターで顔の占める割合の変化は、この間の首相を取り巻く環境を反映しているような気がしてならない。
発表する意図やタイミングは異なるが、ここ20年くらい、自民党の総裁ポスターといえば、小泉純一郎氏や安倍晋三氏(第1次政権)、福田康夫氏、麻生太郎氏、安倍晋三氏(第2次政権)と、顔を前面に押し出したデザインのものが多かった(野党時代の谷垣禎一氏は斬新な劇画タッチのものもあった)。岸田首相の最初のポスターが、大きく顔をアピールしていたのも、自信を持って「党の顔」と打ち出された側面があったと思う。
良くも悪くも強い個性、カラーがあった小泉氏や安倍氏などは、顔を押し出すことで誰もが認識することができたはずだ。一方、岸田首相は内面は別にして、少なくとも外面は、強烈な個性、カラーを醸し出すタイプのリーダーではない。今回発表されたのは統一地方選にむけたポスターでもあり、顔よりもメッセージを打ち出したほうが有権者に届きやすいという判断かもしれないが、結果的に、顔の占める面積が少しずつ小さくなってきているところに、今の岸田首相の置かれた立場、存在感が反映されているような気もしてしまう。「いまさら顔を売る必要はない」という声も聞いたが…。
今年1月には、自民党に先駆けて立憲民主党の泉健太代表のポスターも発表されたが、顔の大きさだけでいえば泉氏のほうが岸田首相より大きい。政党ポスターには珍しい「ニカッ」とした笑顔が採用された。一方、6種類を発表した共産党は志位和夫委員長ではなく、男女の若者を描いたイラスト風が2種類含まれた。各党、視点や狙いはさまざまのようだ。
街やネット上の選挙ポスターに込めた党側の思いが、有権者にどう届くのか。4年に1度、そして2023年最初の選挙シーズンがまもなく始まる。【中山知子】
◆中山知子(なかやま・ともこ) 日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。現在、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスク。福岡県出身。青学大卒。
元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・コラム・「中山知子の取材備忘録」】 2023年02月26日 11:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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