【社説①】:金融政策再修正 物価抑制には力足りぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:金融政策再修正 物価抑制には力足りぬ
日銀が金融政策決定会合で大規模金融緩和策の再修正を決めた。物価上昇に拍車をかけ続ける円安の抑制を意識した措置だが、修正の規模は小幅にとどまる。物価高を封じ込めるには、力不足と指摘せざるを得ない。
会合では、長期金利が1%を一定程度超えても容認することを決定した。7月の会合では、上限としていた0・5%を「めど」に変え、1%まで認める措置を取っており、今年2回目の金融引き締めに踏み切った形となる。
ただ、引き締めといっても円安を抑える効果があるか否かは不透明だ。
激しいインフレが続く米国では連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続するとの観測があり、その規模やペースも日銀の政策修正をはるかに上回る。今回程度の修正では日米の金利差は縮まらず、金利の高いドル買いがさらに進むことも想定できる。
食料品の値上がりや電気・ガス料金、ガソリン代の高止まりは常態化し、家計は細る一方だ。暮らしを守るには、これ以上の円安は許されない。
日米の金利差縮小に向けた金融政策の修正は「物価の番人」である日銀の責務とも言える。日銀は緩和策の修正を模索し続けることになるだろう。
日銀は31日公表の「経済・物価情勢の展望」で、2023年度の消費者物価指数の上昇見通しを前年度比2・8%(7月時点2・5%)、24年度も2・8%(同1・9%)に引き上げた。消費現場の実感からはかけ離れた数字だが、日銀が物価問題に危機意識を強めていることは確認できた。
長期金利の上昇は、企業の設備投資意欲の減退や住宅ローン金利の引き上げにつながる可能性も否定できないが、現在の円安は、こうした負の側面を覆い尽くすほどの水準の物価高となって、私たちの暮らしを痛め続けている。
国際通貨基金(IMF)は日本の国内総生産(GDP)が23年ドイツに抜かれ4位に落ちるとの見通しを出した。アベノミクスを起点とした緩和策が過度な通貨安を引き起こし、その影響は国の衰退さえ招いたことも指摘したい。
長期金利上昇は国債の利払い増加にもつながる。アベノミクス以来の国債頼みの膨張予算も金融政策変更の足かせになっていると、政府・与党は胸に刻むべきだ。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年11月01日 08:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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