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エラリー・クイーン「Yの悲劇」

2013年11月30日 | Eクイーン
「エジプト十字架の秘密」~「Xの悲劇」~「Yの悲劇」と
立て続けに角川文庫の新訳クイーンを読み続けてしまいました。

「Yの悲劇」は最後の寂寥感が、
横溝正史の「本陣殺人事件」「獄門島」を読んだときの感じによく似ています。
横溝正史はディクソン・カーから影響を受けた、とよく言われていますが、
カーを読んだことが本格を書くきっかけになっただけで、
作品の構成はクイーンの影響がすごく大きいように思えます。

「本陣殺人事件」「獄門島」「犬神家の一族」「八つ墓村」のあそこもここも「Yの悲劇」じゃないか~。

だからといって横溝の諸作の評価が下がるわけではないのですけどね。

「Yの悲劇」のラストで、サム警視が犯人の最後についてレーンに問う場面があって、
昔読んだときは意味が分からなかったのですが、たぶんこんなことではないかといくつか解釈してみました。

ネタバレ
ここから
その1:ヨーク・ハッターの探偵小説は最後まで書かれていて
【P334で途中まで明らかにされているが、
実際にこのあとが書かれていたかどうかは小説には明言されていない。
しかしドルリー・レーンは全文を読んでいたはずだから、最後にどうなったかが書いてあれば読んでいたはず】、
犯人(ヨーク・ハッター)は犯行が露見して自殺する、と書いてあったので、
レーンは実行犯がそのとおりに自決すると踏んだ(させるようにした)。
※P368:ヨークの実験室で実行犯の目をレーンが見据えた、という記述がありますが、
反対に考えれば、実行犯もレーンの姿(顔?目?)を見た、ということになり、
犯行が露見したと翌日のレーンの訪問時に思わせることが出来た。

その2:レーンは実行犯が探偵小説の指示を逸脱していると判断して、
ルイーズを毒殺するために毒をいれたグラスを実行犯が飲むように、
「僧正」のヴァンスみたくグラスを取り替えた。

その3:ヨーク・ハッターの探偵小説は実際にもP334にあるところまでしか書いてなかったのだが、
レーンが最後を書き足した。

ここまで

「Yの悲劇」は、のちの「レーン最後の事件」「ニッポン樫鳥」(角川の国名シリーズに入るのだろうか)、
「十日間の不思議」(さらにクリスティの「カーテン」)にも直結するテーマで書かれていたのですね。
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