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●《日本全土を米軍の鉄砲玉として…》…【解決策ない辺野古の軟弱地盤 できもせぬ基地建設で翻弄する一方、日本全土の基地化が進行】

2022年01月05日 00時00分50秒 | Weblog

[↑ 辺野古破壊反対広告 (2021年06月06日、朝日新聞)]


(2021年12月07日[火])
長周新聞の記事【解決策ない辺野古の軟弱地盤 できもせぬ基地建設で翻弄する一方、日本全土の基地化が進行】(https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/22215)。

 《沖縄県名護市の辺野古新基地建設予定地について、防衛省は地盤改良工事のための設計変更を沖縄県に提出したが、沖縄県の玉城デニー知事は11月25日、不承認とした。今後、国側は法廷闘争に持ち込む構えを見せているが、沖縄県が不承認とした背景には「新たな米軍基地は沖縄に必要ない」という県民世論だけでなく、建設予定地に横たわる物理的な問題がある。埋め立てに着工できていない大浦湾側の予定海域は「マヨネーズ状」ともいわれる軟弱地盤が大半を占めており、技術的問題も含めて不確実性が高く、見通しの立たない膨大な時間と公費を投入した新基地建設は無意味な工事になる可能性が高い。一方、何十年も人々の視線を辺野古に釘付けにするなかで、それを上回る規模で南西諸島ミサイル基地配備自衛隊や民間施設の米軍使用など日本全土の前線基地化がノンストップで進んでおり、そのなかでの辺野古基地建設の位置づけについても改めて検証する必要がある》。

 この長周新聞の記事は素晴らしい。長いですが、是非、御一読ください。これこそ、調査報道です。

   『●N値がゼロ、工期と費用は「∞」…今日もドブガネし、
       ジャブジャブと大量の土砂を美ら海にぶちまけている
   『●あとの祭り…自公お維政治屋は《民を飢えさせない、安全な食べ物の
      供給、そして絶対に戦争をしないことが政治家の役目》を担い得ない
   『●沖縄タイムス《大浦湾…2015年4月…「土木的問題が多い地層が
     厚く堆積している」…「長期の沈下が考えられる」と施工上の懸念も》
    「ここでも、アベ様や元・最低の官房長官らのお得意の《隠蔽》。
     マヨネーズ軟弱地盤を知っていたくせに破壊に着工。護岸が崩壊する
     との指摘まである。そして今、さらなるデタラメ・ヒトデナシを
     やろうとしている…《人柱》だ」
    「新基地は完成を見ることはない。おまけに、普天間飛行場の全面返還など
     成されない。まさに、辺野古は単なる破壊「損」だ」

 N値はゼロ、工期と費用は「∞」…今日もひたすらドブガネし、ジャブジャブと大量の土砂を美ら海にぶちまけている。いまも日々続いているデタラメな《工期も費用も言えない》辺野古破壊。いくらドブガネしても新基地は出来ない、普天間も返還されない。辺野古は単なる破壊「損」にすぎないし、原状回復も不可能。加えて、デタラメ・ヒトデナシをやろうとしている…《人柱》だ。
 さらには《日本全土の基地化が進行》。

   『●米中戦争の「防波堤」: 
     与那国駐屯地による「活性化」? 「島民との融和」か分断か?
   『●石垣島陸上自衛隊ミサイル部隊配備: 
       《菩提樹》を切り倒すのか? ささやかな願いさえも打ち砕くのか?
   『●与那国島や石垣島、《沖縄は名護市辺野古だけでなく、
          宮古島もまた国防のために政府に翻弄されている》
   『●立法府の自公お維議員による土地規制法案 ――― 《何のための国会か》
        《内閣委員のお一人お一人が問われている》(馬奈木厳太郎弁護士)

   『●土地規制法案の先取り ―― 宮城秋乃さんの家宅捜索という見せしめ
       …《見せしめの過剰捜査…人権侵害行為》が頻発すること、必至
   『●《弾薬庫は置かない》…平気で嘘つくよなぁ。ことごとく約束は
     反故にされ、市民はバカにされていて、やはり受け入れてはいけなかった

 デモクラシータイムスのこの映像もご覧ください。
 【辺野古埋立変更申請、知事は不承認 自衛隊を桜が止めた【新沖縄通信】20211129】(https://www.youtube.com/watch?v=UPr4-8BIJ7k&t=599s)。《デモクラシータイムス》《沖縄タイムスとお届けする11月の沖縄。今月は三上智恵さんを迎えて、いまの沖縄のなまなましい問題を取り上げます。国の辺野古マヨネーズ地盤の埋立設計変更申請に根拠はないと誰でも思うはずなんですが、ごり押しが続きます。実は自衛隊の基地化を考えているのかも…。県内全域が自衛隊の基地化してきた沖縄の現状もお伝えします。地元の声を詳しく知りたい方は、こちらからどうぞ
◆島々シンポジウム 第6回
2021年12月18日(土)15時~
琉球新報ギャラリーでの公開+Zoomビデオウェビナー
(入場無料、Zoomウェビナーは先着1000人の事前登録制です)
https://us06web.zoom.us/webinar/regis
収録は2021年11月29日》


【辺野古埋立変更申請、知事は不承認 自衛隊を桜が止めた【新沖縄通信】20211129】
https://www.youtube.com/watch?v=UPr4-8BIJ7k&t=599s

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https://www.chosyu-journal.jp/seijikeizai/22215

解決策ない辺野古の軟弱地盤 できもせぬ基地建設で翻弄する一方、日本全土の基地化が進行
2021年12月6日

 沖縄県名護市の辺野古新基地建設予定地について、防衛省は地盤改良工事のための設計変更を沖縄県に提出したが、沖縄県の玉城デニー知事は11月25日、不承認とした。今後、国側は法廷闘争に持ち込む構えを見せているが、沖縄県が不承認とした背景には「新たな米軍基地は沖縄に必要ない」という県民世論だけでなく、建設予定地に横たわる物理的な問題がある。埋め立てに着工できていない大浦湾側の予定海域は「マヨネーズ状」ともいわれる軟弱地盤が大半を占めており、技術的問題も含めて不確実性が高く、見通しの立たない膨大な時間と公費を投入した新基地建設は無意味な工事になる可能性が高い。一方、何十年も人々の視線を辺野古に釘付けにするなかで、それを上回る規模で南西諸島ミサイル基地配備自衛隊や民間施設の米軍使用など日本全土の前線基地化がノンストップで進んでおり、そのなかでの辺野古基地建設の位置づけについても改めて検証する必要がある。


沖縄県民や日本全国を愚弄し続けた辺野古問題24年

 大浦湾の軟弱地盤については、国は埋め立て着工の数年前から把握していたにもかかわらず、その存在を認めることなく、2018年12月に辺野古沿岸部の海域から土砂投入に踏み切った。県民の情報公開請求で明らかになった防衛省の土質調査報告書(2016年3月作成)では、ボーリング調査によって、この海域の大部分に軟弱地盤があり、その厚さは水深30㍍から最大90㍍までの深さにまで広がっていることが明らかになっている【地図参照】。

 この事実を根拠にして2018年8月、沖縄県は故・翁長前知事の遺志に従い、仲井眞県政時代に出した埋め立て承認を撤回したが、対抗する防衛省は本来は国民の権利を守るためにある行政不服審査法にもとづいて国交省に効力停止を申し立て、国交省が沖縄県の権限を停止。裁判所もそれを「適法」として追認するという問答無用の措置に踏み切った。

 そのさい政府は、軟弱地盤について「一般的で施工実績が豊富な工法で、護岸や埋め立て等の工事を所要の安定性を確保しておこなうことが可能」として土砂投入へと見切り発車したが、その後の2019年1月に「地盤改良工事が必要」(安倍元首相)と認めた。地盤改良をおこなうためには設計変更が必要になり、沖縄県の承認が必要になるため、その前に土砂投入を先行させて既成事実化を図った形だ

 防衛省の調査結果によると、大浦湾の海底地盤には水深90㍍に及ぶ深い谷があり、そこに比較的新しい時代に堆積した砂と粘土の軟弱地盤が形成されている。とくに建設が予定されているV字型滑走路の先端部分に位置する東側護岸では、海面下30~70㍍までの深さで、地盤の強度をあらわすN値」がゼロの地点が多く確認された。

 「N値」とは、63・5㌔のハンマーを75㌢の高さから落下させ、直径51㍉のサンプラー(試掘用の杭)が30㌢貫入するまでに要した落下回数をいう。杭が30㌢下まで到達するのにハンマーを1回打ち下ろした場合は「N値1」、2回なら「N値2」として地盤の強度をあらわし、数字が大きいほど地盤が固いことを意味する。通常、大型構造物の基礎としては「N値50」以上が必要とされているが、防衛省は2013年の埋立承認申請時に、この地点を「N値11」と想定していた。

 実際の調査で連発した「N値ゼロ」とは、ハンマーを使わずとも杭を設置しただけで30㌢以上も下にズブズブと沈んでいったことを意味する。護岸に設置するケーソン(鋼鉄製の箱)は総数38函におよび、大型ケーソンの重量は7000㌧以上にもなる。ケーソンの土台となる基礎捨石も最大200㌔㌘の巨大石材であるため、いずれもN値ゼロの地盤に置くだけでたちまち40㍍下まで沈み込んでしまうことになる。そのため「マヨネーズ状地盤」「豆腐並み」と呼ばれ、「とても構造物を設置できるような地盤ではない」と専門家たちは指摘してきた。

 これらを受けて防衛省が作成した設計変更では、水深30㍍の海底地盤に存在する軟弱地盤の厚さを約40㍍と想定し、水深70㍍までの軟弱地盤(面積66㌶)に3年半かけて砂杭など7万1000本(砂量は東京ドーム5杯分)を打ち込むサンドコンパクションパイル(SCP)工法で地盤を固めるとした。そのため、これまで沖縄県北地域に限定していた土砂の調達先を県内全域に広げ沖縄戦激戦地であった糸満や八重瀬などの県南部からも戦没者の遺骨が未収集のまま眠っている土砂を大量に集める計画になっている。

 ところがその数カ月後に、新たな調査で軟弱地盤の厚さが60㍍であることが判明つまり水深90㍍の深さにまで軟弱地盤が存在していることになるが、防衛省は「調査の精度に信憑性がない」「(70㍍以下は)非常に固い粘土層」などとして、70㍍以下の地盤改良は不要であるとの見解を示している。

 だが、その判断の根底には、日本の作業船の施工深度は最大70㍍までしか届かず、90㍍までになると機械が届かないという現実がある【断面図参照】。水深70㍍であっても難工事であるうえに、水深90㍍の地盤改良は世界に前例がない

 土木工学を専門とする鎌尾彰司日本大理工学部准教授は、今年9月の沖縄県主催シンポジウムで、「わが国が保有する海上での地盤改良船では、数億円を掛けて改装しても海面下70㍍までしか地盤改良をすることができない。すなわち、施工機械が届かない20㍍の部分は未改良のままにするしかない軟弱地盤を未改良のままにして埋立工事をおこなうと、地盤が圧縮して密度が大きくなる(強度が高くなる)までに長い時間を要することになる。さらに改良できない部分は粘土質であるため、埋立工事中の沈下量が大きくなることはもちろんのこと、埋立工事が終了しても長期にわたり未改良の粘土地盤に継続して大きな沈下が発生することになる」と指摘した。

 改良工事は長期間におよび、軟弱地盤の上に設置された滑走路は恒常的に沈下するため、くり返し補修工事が必要になり、沈下によって護岸が倒れる「滑り破壊」によって埋め立てた土砂が海に流れ出る恐れもあると警鐘を鳴らしている。

 しかも政府は、最も深くまで軟弱地盤が堆積している東側護岸の「B27」地点については、別地点のサンプル調査から推測するだけで、地盤強度の調査をおこなっていない。そのため国の設計変更書には、地盤改良工事における砂杭の大きさや打ち込む本数などの具体的な記述がない

 総工費も当初の3500億円の2・7倍となる9300億円としているが、沖縄県は7カ所分の護岸工事だけで政府の資金計画書で示した額の12倍(928億円)となっていることから、埋め立て費用は当初の10倍の2兆5500億円に膨らむと試算している。

 基地建設の工期も当初の8年から12年に延長され、移設を条件とした普天間基地の返還は2030年代半ば以降となり、事実上先の見通せない状況だ。今後も「全体の経費については答えられない」(防衛省)というほど膨大な血税を投入しながら、完了するメドのない工事が延々と続くことになる。


地下には2つの活断層も 地盤調査せず

 さらに辺野古沿岸部から沖合にかけては、辺野古断層と楚久断層という2つの断層が走っており、いずれも活断層と分類されている【地図参照】。

 政府は活断層の存在を否定しているが、軟弱地盤が堆積する大浦湾海底の落ち込みは、これら2つの活断層の交差によって形成されたとみられており、この海域を調査した東北大学講師・遅沢壮一氏(地学)は「大浦湾の海底谷地形成は辺野古断層である。同断層は2万年前以降にくり返し活動した、極めて危険な活断層である」(知事撤回理由書)と指摘している。

 原発建設の場合を見ても、原子力規制委員会は、将来活動する可能性の高い断層を約一2万~13万年前かそれより新しい時期に動いたものと認定しており、2万年前以降に動いたとされる辺野古断層は今後も活発に動く可能性がある比較的新しい活断層とみなされている

 活断層に挟まれた軟弱地盤の上に、弾薬や化学物質などを扱う軍事施設や滑走路を建設すること自体、無謀極まりないもので、直下地震や津波が発生すれば、その被害は想像を絶するものとなる。地質学の専門家は「新基地を建設することは非常に危険である。活断層の存在を否定するならば、国は早急に調査結果を公表すべき」(加藤祐三琉球大学名誉教授)と批判を強めている。

 玉城知事は11月25日、軟弱地盤の改良工事に必要な国の設計変更について、「地盤の安定性等にかかる設計に関して最も重要な地点において必要な調査が実施されておらず、災害防止に十分配慮した検討が実施されていない」「『埋め立ての必要性』について合理性があるとは認められない」として不承認とした

 大浦湾はジュゴンなど絶滅危惧種262種を含む、5334種もの生物が生息する全国有数の地域であり、環境保全についての国の調査や対策がまるでなされていないことも挙げ、「公有水面埋立法に適合しない」と断定。「そもそも今般の変更申請が必要となったのは、本来、沖縄防衛局が事業実施前に必要最低限の地盤調査を実施すべきであったのにもかかわらず、これを実施せず、不確実な要素を抱えたまま見切り発車したことにすべて起因する」と政府側の責任を追及した。

 設計変更の不承認によって大浦湾の該当海域では埋め立て工事ができなくなるが、国はふたたび知事権限の執行停止や法廷闘争に持ち込み、地方自治を蹂躙してはばからない姿勢を見せている。


南西諸島で進む基地化  普天間は改修して恒久化

 1997年に日米政府のあいだで辺野古新基地建設計画が浮上してから24年。はじめは「普天間基地の危険性除去」だった問題が、いつの間にか「辺野古移設」にすり替わり、数十年にわたって沖縄県内では、新基地建設を許さない島ぐるみの世論と政府との激突状況が続いてきた。あいつぐ国政選挙では辺野古新基地を推進する与党が大敗し、県知事選では「辺野古新基地反対」を掲げるオール沖縄陣営が勝利し、辺野古の是非を問う県民投票でも反対票が多数を占めた

 そして、オール沖縄を率いた翁長前知事の死去後も、その遺志を継いで新基地反対を唱えた玉城現知事が過去最多得票で当選するなど、20万県民の命を奪った沖縄戦を経験し、以来70年以上にわたって米軍支配に晒されてきた沖縄県民の揺らぐことのない頑強な意志が幾度となく示されてきた

 だが、それを無視して建設工事が強行される辺野古新基地は、軟弱地盤で沈下や陥没の危険性が高く、完成時期も見通せないうえに基地として使い物になるか否かも定かではない。例え整備されたとしても「普天間の代替機能は果たせないと米側が主張することで返還の約束など簡単に反古になる関係だ。肝心の普天間基地は「閉鎖」どころか、さらに長期使用を可能にするため施設の改修工事が進められている

 先行きの見えない辺野古問題に人々の視線を何十年も釘付けにする一方で、沖縄県内外を問わず、米軍と自衛隊が一体となった基地や港湾の共同運用が進み、さらに与那国石垣宮古などの南西諸島では新たな自衛隊ミサイル基地があいついで建設されてきた。沖縄本島でも、勝連半島で自衛隊のミサイル部隊新設や、米軍の後方支援施設の建設計画が明らかになっている。

 米軍は対中国包囲網として、日本列島から沖縄、フィリピン西部、南沙諸島にかけて「第一列島線」とし、日本からグアム・サイパン・テニアンにかけてを「第二列島線」とする構想を打ち出している。本州、九州、馬毛島奄美大島、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島にわたって出撃基地やミサイル包囲網をつくり、日本を不沈空母に見立てて中国に圧力を掛け、同時に米本土を防衛するというものだ。軍事費圧縮が迫られている米軍は、日本に軍事費や人員を肩代わりさせ、自衛隊を二軍として自国のアジア戦略に主体的にかかわらせる方針へとシフトしているからだ。この構想に基づけば、有事のさいには沖縄や南西諸島だけでなく、九州や本州も含める日本全土が戦場になり、攻撃対象になる可能性が出てくる。それは基地負担を沖縄が負うか、本土が負うかといった問題ではなく、日本全土を米軍の鉄砲玉として差し出すか否かの問題といえる。


大増強進む岩国や九州の基地  辺野古釘付けの間に

 「普天間基地の負担軽減」や「辺野古移設の是非」が騒がれ、辺野古問題だけに目を奪われるなかで、本土でもそれを上回る規模で米軍基地強化や自衛隊基地の共同使用が進められてきた

 米海軍基地がある長崎県佐世保では、自衛隊水陸機動団が配備され、それにともなって佐賀空港へのオスプレイ配備計画が浮上した。「普天間の負担軽減」を名目にして新田原基地(宮崎県)とともに米軍との共同使用施設へと変わりつつある空自築城基地(福岡県)では、滑走路を普天間基地と同規模(2700㍍)にまで延長するための拡張工事が始まっている。また米軍使用が常態化している福岡空港にも新たな米軍専用施設が建設された。

 新田原基地でもステルス戦闘機F35Bを配備するための新たな駐機場や燃料タンクが建設される。3000㍍級の滑走路を持つ大分空港や、熊本空港でも米軍オスプレイ等の緊急着陸が増えるなど、民間空港の米軍使用が格段に増えたのも近年の特徴だ。

 15年間かけて沖合に1・5倍拡張された米軍岩国基地(山口県)では、埋め立て総工費は2500億円だが、そのために切り崩した愛宕山開発費(米軍住宅建設)を含めると防衛省発注事業は4000億円以上にのぼる。辺野古の埋め立て費用を上回る公費を注ぎ込んで海側にも山側にも米軍基地が拡張され、厚木からの空母艦載機部隊の移駐によって米軍関係者約1万200人、軍用機約120機を擁する極東最大の基地となり、原子力空母、大型強襲揚陸艦、ヘリ空母などを本格展開する出撃拠点へと変貌している。

 また首都圏でも、在日米軍司令部を置く「横田幕府」こと米軍横田基地では、オスプレイ配備を五機から10機に増やすための新駐機場、グアムから飛来する無人偵察機RQ4グローバル・ホークの駐機施設、さらに今後4年間で大型輸送機九機を追加配備できる新駐機場の建設など、大規模な増強工事がおこなわれている。

 さらに政府は、硫黄島でおこなわれてきた米空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)の飛行場として馬毛島(鹿児島県)を買収。奄美大島には陸自ミサイル部隊を配備し、宮古島、石垣島にもミサイル部隊、台湾や尖閣諸島の目と鼻の先にある与那国島には陸自沿岸警備隊を配備した。

 近年、沖縄周辺でおこなわれる自衛隊の統合演習には常に米軍が参加し、民間港や民有地を使用した実戦訓練となっている。12月に米海兵隊と陸上自衛隊が実施する共同訓練は、米軍の「遠征前方基地作戦(EABO)」にもとづき、米海兵隊が遠隔地から最新鋭高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)と陸自の地対艦誘導弾(SMM)を使って中国のミサイル網に対抗するもので、八戸演習場(青森県)や矢臼別演習場(北海道)などを含んでおこなわれる。

 米軍基地問題を「辺野古問題」ないし「普天間問題」へと矮小化して、その是非だけを焦点とすることで、それ以外の地域や本土でそれを上回る基地機能強化がノンストップで進められてきたのがこの数十年の現実であり、この問題についてはオール沖縄が抱える玉城知事も立場をあいまいにしたまま事実上黙認してきた。現在、来年1月に辺野古を抱える名護市長選、秋には県知事選が控えるなかで、「辺野古を選挙の争点にするか否か」「基地問題か経済か」といった図式で政局がとり沙汰され、基地問題では「普天間の負担軽減」だけが叫ばれ、その枠内で革新系も含めて「県内移設か、県外移設か」といった沖縄vs本土の構図が煽られてきた

 だが現実を冷静に見るならば、辺野古問題で目先をフェイクしながらその外側で南西諸島を含む日本全土を対中国の鉄砲玉にするという大規模な戦争策動が動いており、沖縄で起きている現実と本土で進行してきた軍事基地化の教訓を互いに共有し、これと対峙する沖縄全島と全国を結んだ力の結集が求められている
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●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」…米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その1)

2017年04月03日 00時00分46秒 | Weblog

三上智恵監督『標的の島 風かたか』公式ページ(http://hyotekinoshima.com)より↑]


リテラのインタビュー記事【『標的の島 風かたか三上智恵監督インタビュー(前編) 宮古島石垣島が米中戦争の捨て石にされる!『標的の島 風かたか』監督が語る南西諸島自衛隊配備の本質】(http://lite-ra.com/2017/03/post-3020.html)と、
【『標的の島 風かたか三上智恵インタビュー(後編) 『標的の島』監督が問う『ニュース女子』問題、「土人」発言…なぜ沖縄ヘイトデマが生み出されるのか?】(http://lite-ra.com/2017/03/post-3023.html)。

 《「あまりにも悔しい。いまの状況が、悔しい」 3月25日より東京で公開されるドキュメンタリー映画『標的の島 風(かじ)かたか』先行特別上映の舞台挨拶に立った三上智恵監督は、目に涙を溜めながら、切実な声でそう語った》。
 《映画タイトルにもある「風(かじ)かたか」ですが、これは「風よけ」「防波堤」という意味だそうですね。 三上…昨年6月19日に那覇市で行われた、米軍属によって暴行され殺されてしまった被害者女性を追悼する県民大会で、この言葉が出てきました》

 三上智恵監督の映画『標的の島 風かたか』のタイトルは、《稲嶺進さんが「我々は、また命を救う《風かたか》になれなかった」という嘆きの言葉から》、《我々行政にある者、政治の場にいる者、多くの県民、今回もまた、ひとつの命を救う風かたかになれなかった》。その前段として、《古謝美佐子さんが「童神(わらびがみ)」という歌を歌われたんですが、そのなかに「風かたかなとてぃ 産子 花咲かさ」(私が風よけになって この子の花を咲かせてやりたい)という歌詞》がありました。

   『●新作『標的の島~風かたか~』の監督・三上智恵さん、 
          「あなたが穴をあけた森はもう元には戻らない」!
   『●映画タイトルは、稲嶺進さんが「我々は、
      また命を救う《風かたか》になれなかった」という嘆きの言葉」から
    《三上智恵監督の新作映画『標的の島 風かたか』の試写に行ってきました。
     前作の『戦場ぬ止み』から2年近く。その2年の沖縄の状況が、
     あますことなく描かれた映画》。
    「《稲嶺進・名護市長が口にした「我々は、また命を救う風かたか
     なれなかったという嘆きの言葉から》映画のタイトルは採られたそうだ。
     《沖縄のことばで「風よけ」のこと》だそうです。
      番犬様には何も言えないアベ様ら。一方で、番犬様にシッポを
      振るために沖縄でやっていることは、「沖縄イジメ」そのもの」

   『●「なぜ巨大な権力にあらがえるのか。
      人々は「世代の責任」を語る」「子を守る「風かたか」になる」

 《あまりにも悔しい。いまの状況が、悔しい》という監督の言葉通りの酷い状況。沖縄破壊沖縄イジメ。《ここ最近の沖縄をめぐる状況は、誰の目にも異常だ》。インタビュー前編のリードの部分を読んでみて下さい。
 そして、《さらに切迫した問題》として、南西諸島での自衛隊配備等による「住民分断」。アメリカが画策し、日本政府が悪乗りする《「統合エアシーバトル構想」…アメリカと中国の争いに自衛隊と南西諸島が差し出され、新たな戦争の「防波堤」にされようとしている》。アメリカの意のままに、アベ様らのやりたい放題ではないか。でも、第一《防波堤》としての《日本全土がアメリカの「風かたか」》…《米中の「新たな戦争の「防波堤」に》なっているのは南西諸島を含むニッポン列島全体。

   『●中学生を「青田買い」する自衛隊: 
     「体験入隊や防衛・防災講話」という「総合的な学習の時間」も
   『●自衛隊配備で「住民分断」: 
     「自衛隊の配備計画…いずれの島でも人々は分断されている」
    「東京新聞の半田滋さんによるコラム【【私説・論説室から】
     島を分断する自衛隊配備】…。《「賛成派が新たな職を得て
     優遇される一方、反対した人は干され、島を出ている」という。
     …自衛隊の配備計画は与那国に続き、奄美大島、宮古島、
     石垣島でも急速に進む。いずれの島でも人々は分断されている》」

   『●「しかし、沖縄にはいまだ“戦後”は 
     一度たりとも訪れていない」…安倍昭恵氏には理解できたのだろうか?
   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」

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http://lite-ra.com/2017/03/post-3020.html

標的の島 風かたか三上智恵監督インタビュー(前編) 
宮古島石垣島が米中戦争の捨て石にされる!『標的の島 風かたか』監督が語る南西諸島自衛隊配備の本質
2017.03.24

     (映画『標的の島 風かたか』を監督した三上智恵氏)

 「あまりにも悔しい。いまの状況が、悔しい
 3月25日より東京で公開されるドキュメンタリー映画『標的の島 風(かじ)かたか』先行特別上映の舞台挨拶に立った三上智恵監督は、目に涙を溜めながら、切実な声でそう語った。
 無理もない。琉球朝日放送のアナウンサーでありディレクターとして真っ先に高江のヘリパッド建設工事の問題を追い、映画監督として辺野古を守ろうとする市民たちと権力側の蛮行をフィルムに焼き付け、沖縄の現実を伝えてきた三上氏だが、ここ最近の沖縄をめぐる状況は、誰の目にも異常だ
 昨年7月の参院選でのオール沖縄の勝利の翌日から露骨にはじめられた高江でのヘリパッド建設工事、辺野古の埋め立て承認取り消し処分を求めた訴訟での最高裁による不当判決、そして山城博治さんの約5カ月もの非道な拘留。4月にはひとりの女性の命がまたも米軍属の男によって奪われ、12月にはオスプレイが300メートルほど先には住宅があるという場所で「墜落」した
 その一方で、高江に駆り出された大阪府警の警察官による「土人」発言に加え、よりにもよって松井一郎大阪府知事はその警官を「ご苦労様」とねぎらい差別を肯定してみせ、『ニュース女子』のデマ報道まで飛び出すようになった。
 しかし、三上監督は最新作『標的の島 風かたか』で、さらに切迫した問題を沖縄から日本全国へ提起する。
 それは現在、安倍政権が進めている石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の配備についてだ。政府は南西諸島の防衛強化を謳うが、その実態はアメリカが中国の軍事的脅威に対抗すべく打ち出した「統合エアシーバトル構想」にある。
 この「エアシーバトル構想」でアメリカは、日本列島を含む第一列島線によって中国を堰き止める計画だ。そのために日本は南西諸島に自衛隊とミサイル配備を推し進めている。つまり、アメリカと中国の争いに自衛隊と南西諸島が差し出され、新たな戦争の「防波堤」にされようとしている、というのだ。
 非常に重要なテーマを突きつける『標的の島』だが、果たして三上監督は本作にどんな思いを込めたのか。さらに、沖縄をめぐる言論や報道をどのように見ているのか。三上監督のインタビューを前編・後編の2回にわたってお届けしたい。


──三上監督の第一作目『標的の村』では高江にスポットを当て、まったく報道がなされていなかった高江の問題を全国へ伝えましたが、『標的の島』も「エアシーバトル構想」という、まったく報道されていない問題が取り上げられています。そもそも、石垣島や宮古島などで自衛隊やミサイル配備が進められているというニュース自体が、大きく報道されていない状態です。
 たとえば宮古島で予定されている800人規模の自衛隊基地には、地対艦ミサイル基地に弾薬庫と射爆場、着上陸訓練所、さらには司令部まで設置される計画です。地対艦ミサイルというのは近づいてくる軍艦を撃つためのミサイル。これは宮古島だけではなく、奄美大島、沖縄本島、石垣島にも配備すると発表されています。つまり、南西諸島を要塞化しようというわけです。

──しかも、この「南西諸島の要塞化」を、政府は「南西諸島を中国の脅威から守るため」「尖閣防衛」などと言いますが、映画ではその本質がアメリカの極東戦略にあり、沖縄を戦場にした新たな戦争のための準備だと指摘しています。はっきり言って、とても衝撃を受けました。
 もともとこの話は2012年くらいに(現参議院議員の)伊波洋一さんの講演を聞いて、私もはじめて知りました。「そんなことになってるの!?」とビックリしたんですけど、さまざまな資料や論文などを調べて読んでみると、とても具体的な計画でした。ただ、宮古島に自衛隊を置いてそこで戦争が行われると言っても、その前の段階できっと沖縄県民が反対するに決まっている、と思ったんですよ。沖縄戦の体験があるのに、まさか宮古島に陸上自衛隊やミサイルとか置くなんて話が浮上したら、辺野古移設どころじゃなく沖縄中が反対するだろう、と私は思っていたんです。
 それで(監督2作目の)『戦場ぬ止み』をつくっていたら、その編集中に宮古島に自衛隊基地をつくるという話を聞いて、今度は宮古島と石垣島にそれぞれ600~800人の部隊を置くというニュースが出て。これは大変なことになる、辺野古や高江の前にこっちが先に戦争の導火線になるぞと、今回の映画製作に入ったんです。

──映画のなかで「エアシーバトル構想」は、アメリカが日本列島を含む第一列島線を防波堤にすることで中国を封じ込めようとする戦略だと説明されています。中国を通さないために南西諸島の島々にミサイル部隊を配置し、いざというときはそこで戦争をする。米中の直接対決となると核戦争のリスクが高まるため、それを避けるために南西諸島で「海洋制限戦争」を行おう、と。まさに南西諸島が「標的の島」になるわけですね。
 しかも、中国のミサイルが宮古島や石垣島の自衛隊基地に飛んできたとしても、米軍は半日で撤退するということが日米政府間で2005・06年の米軍再編合意によって決められています。中国に攻撃されても、米軍が沖縄に残って日本のために米軍が戦うことはないんです。そんな肝心なときに米軍が戦ってくれないのなら、何のために日本にいるの?と思うかもしれませんが、それが現実なんですよね。ようするに、これは「自衛隊が米軍に代わって戦争をする」という話なんです。
 実際、すでに米軍が自衛隊を指導するかたちで離島の奪還作戦といった共同訓練が行われています。また、昨年11月30日に在日米海兵隊が、日米合同で指揮所演習の戦闘予行を行ったとTwitterに写真つきで投稿したのですが、その写真は、先島の大きな地図が広げられている上に米軍の指揮官が立って、戦争を想定して図上演習をしている。米軍にしてみればただの離島の地図なのでしょうが、そこは人びとが住んでいる島なんですよ。
 しかも、南西諸島で制限戦争が起こるとなれば、それは偶発的にはじまるでしょう。その上、中国は攻撃を行ってくる地対艦ミサイルがある島を狙う。島が戦場になるということです。偶発的に突然はじまる戦闘に対し、陸つづきでもない島の住民は果たして避難などできるのでしょうか。

──沖縄が再び戦場の島になる可能性がある、と。映画のなかでも、石垣島で自衛隊配備に反対する戦争体験者の女性が「南西諸島防衛とか防衛大綱とか言うけれど、それはとりもなおさず本土防衛のために南西諸島を捨石にするという目論見は見え見えです。また捨石にされるのか」と話していましたね。
 72年前のことを沖縄は忘れちゃったの?と私も思います。1944年に沖縄は、日本の軍隊がやってきたとき「連戦連勝の日本軍だ」「これで安心だ」と歓喜して迎え入れました。もうすでに負け戦だったにもかかわらず、です。そうして沖縄は戦場のど真ん中に置かれてしまった。しかも日本軍が住民を守るために最後まで戦ったなんて話は、まったくないわけですよ。そんな経験をしていながら「中国が来たら自衛隊が守ってくれる」なんて、私には70年前の二の舞としか思えない。「自分の島のおじい、おばあから、ちゃんと話を聞きなさいよ」と思う。
 とくに石垣島の場合は地上戦がなく、空襲で178人が亡くなっているのですが、一方で、日本軍の命令によって住民たちがマラリアが蔓延する山奥に押し込められ、しかも日本軍は特効薬を大量に持っていたにもかかわらず住民に使うことはなく、結果3647人も亡くなっています。これは米軍が上陸してきたときに住民が捕虜となり、情報が筒抜けになることを避けるため、ゆるやかな集団自決を住民に強制した、ということでしょう。じつは沖縄でも、この一件は「たまたま疎開した先にマラリア蚊がいて、マラリアが蔓延してしまった」というくらいにしか捉えていない人が多い。映画のなかで山奥に押し込められた体験を証言してくださった方が出てきますが、この映画での新証言なんです。この部分は、どうしても映画のなかに残しておきたかった。軍隊がいたから、石垣島ではマラリア地獄が起きた。軍隊の論理で死ななきゃいけない人が出てきてしまった、ということですから。

──しかし、今年1月に行われた宮古島市長選挙では自衛隊配備に賛成する現職市長が再選するなど、市民のあいだに危機感が広がっていない印象を受けます。
 沖縄のなかでも自衛隊配備についての危機感は低調で、反対運動をしている人たちでさえピンときていない。多くの人が「メリットとデメリット、いろいろあるよね」といったような、まったく次元の違う話をしている。「自衛隊が来れば土地の値段が上がるんじゃないか」とか「学校に子どもが増えるんじゃないか」とか。

──そんななか、映画を観てひとつの希望だと感じたのは、地元の若いお母さんたちの活動です。子どもの未来と生まれ育った場所を守りたいという気持ちから、ミサイル部隊の配備に危機感を抱き、自ら動き出す。そしてSNSを通じて活動が広がっていく……
 若い彼女たちが何をやっているかといえば、市に要請を出したり、シール投票をしたり、映画のなかで見てしまうと一個一個が地味ではあるんですよ。でも、私自身が彼女たちにとても元気をもらったんです。SEALDsによって、いままで政治にかかわってこなかった人たちが声を上げていくという流れができて、それを引き継ぐようなかたちで、あちこちでママさんグループも少しずつ活発になっていった。そういうところに光が当たればいいなと思うし、彼女たちの活動を見て、「こういうかたちで、あんな小さな子どもを抱きながらもできるんだ」って全国の人に感じてほしいと思うんです。

──しかも、グループの共同代表として登場する石嶺香織さんは、1月の宮古島市議会選に出馬して、当選を果たしましたね。
 本音を言うと、宮古島市議会26人のうち22人が自衛隊とミサイル配備に賛成しているという状況で、香織ちゃんひとりが議会に行って何ができるの?と思ったりもしたんです。でも、そこで果敢にぶち当たっていく香織ちゃんというのがまた魅力的なんですけどね。ついこのあいだまで政治のこと何もわかりませんでしたという人が、壁にぶつかって、血を流すこともあるけど、それでも笑って前を向く。そういう姿だからこそ、見ている人に伝わる、横につながっていくんじゃないかと思ったんですよね。

つづく

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 インタビュー後編では、三上監督には、『ニュース女子』デマ報道や「土人」発言など、沖縄をめぐる問題についても語っていただいた。後編もお楽しみに。
(取材・構成/編集部)

………。
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[その2]へつづく

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●「防波堤」としての全ての「日本全土がアメリカの「風かたか」」…米中の「新たな戦争の「防波堤」に」(その2)

2017年04月03日 00時00分34秒 | Weblog

三上智恵監督『標的の島 風かたか』公式ページ(http://hyotekinoshima.com)より↑]


[その1]へ戻る

   『●新作『標的の島~風かたか~』の監督・三上智恵さん、 
          「あなたが穴をあけた森はもう元には戻らない」!
   『●映画タイトルは、稲嶺進さんが「我々は、
      また命を救う《風かたか》になれなかった」という嘆きの言葉」から
    《三上智恵監督の新作映画『標的の島 風かたか』の試写に行ってきました。
     前作の『戦場ぬ止み』から2年近く。その2年の沖縄の状況が、
     あますことなく描かれた映画》。
    「《稲嶺進・名護市長が口にした「我々は、また命を救う風かたか
     なれなかったという嘆きの言葉から》映画のタイトルは採られたそうだ。
     《沖縄のことばで「風よけ」のこと》だそうです。
      番犬様には何も言えないアベ様ら。一方で、番犬様にシッポを
      振るために沖縄でやっていることは、「沖縄イジメ」そのもの」

   『●「なぜ巨大な権力にあらがえるのか。
      人々は「世代の責任」を語る」「子を守る「風かたか」になる」


   『●中学生を「青田買い」する自衛隊: 
     「体験入隊や防衛・防災講話」という「総合的な学習の時間」も
   『●自衛隊配備で「住民分断」: 
     「自衛隊の配備計画…いずれの島でも人々は分断されている」
    「東京新聞の半田滋さんによるコラム【【私説・論説室から】
     島を分断する自衛隊配備】…。《「賛成派が新たな職を得て
     優遇される一方、反対した人は干され、島を出ている」という。
     …自衛隊の配備計画は与那国に続き、奄美大島、宮古島、
     石垣島でも急速に進む。いずれの島でも人々は分断されている》」

   『●「しかし、沖縄にはいまだ“戦後”は 
     一度たりとも訪れていない」…安倍昭恵氏には理解できたのだろうか?
   『●現在進行形の「身代わり」: 「反省と不戦の誓いを…
             沖縄を二度と、身代わりにしてはならない」

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http://lite-ra.com/2017/03/post-3023.html

標的の島 風かたか三上智恵インタビュー(後編) 
『標的の島』監督が問う『ニュース女子』問題、「土人」発言…なぜ沖縄ヘイトデマが生み出されるのか?
2017.03.25

     (沖縄をめぐる報道問題について語る三上智恵監督)

 現在、安倍政権が進めている石垣島、宮古島、奄美大島、与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の配備。政府は南西諸島の防衛強化を謳うが、実際は、米中の“新たな戦争”の「防波堤」にするのが目的だ──。この衝撃的な事実と、石垣島や宮古島、そして辺野古、高江で子どもの未来を守ろうと必死に抵抗する市民たちの姿を描いた三上智恵監督の最新作『標的の島 風かたか』。
 今回お届けする三上智恵監督のインタビュー後編では、『ニュース女子』デマ報道や「土人」発言など、沖縄をめぐる問題について話を伺った。

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──映画タイトルにもある「風(かじ)かたか」ですが、これは「風よけ」「防波堤」という意味だそうですね。
三上 はい。映画でも最初に出てきますが、昨年6月19日に那覇市で行われた、米軍属によって暴行され殺されてしまった被害者女性を追悼する県民大会で、この言葉が出てきました。
 いままでいろんな県民大会がありましたが、いちばん悲しい県民大会でした。アメリカ軍に対する怒りや日本政府に対する怒りではなくて、自分に対する怒りを、みなさんもって集まっていたと思う。1995年に米軍人による少女暴行事件があって、あのとき沖縄県民は「もう二度と同じような事件はごめんだ」と立ち上がった。けれども、また同じことが起こった。なぜ守れなかったんだろう、私は何を報道してきたんだろう、と。
 県民大会では、古謝美佐子さんが「童神(わらびがみ)」という歌を歌われたんですが、そのなかに「風かたかなとてぃ 産子 花咲かさ」(私が風よけになって この子の花を咲かせてやりたい)という歌詞があります。これは子どもを思う母の歌で、それをこの日に聴くというのは耐えがたくて辛かった。でも、そのあとに名護市長の稲嶺進さんが古謝さんの歌詞を引き、こうスピーチしたんですね。「我々行政にある者、政治の場にいる者、多くの県民、今回もまた、ひとつの命を救う風かたかになれなかった」。
 この言葉に、私だけではなく周りの女性たち全員が号泣しました。日米両政府が決めて、押し付けてくるさまざまな負担、オスプレイが落ち、ヘリが学校に落ち、歩いていたら後ろから殴られて暴行されて殺されてしまう。そんな島で、どうやって大人たちは風かたかになれるのかなれるわけがないでしょう?と。

──しかし、あんな痛ましい事件が起こったにもかかわらず、安倍政権のみならず「本土」の世論も「沖縄は日本の風かたかであれ」と声を強めているように感じます。そればかりか、『ニュース女子』(TOKYO MX)のようなデマ報道まで起こりました。基地反対運動にかかわる市民の人びとと向かい合ってきた三上監督にとっては、許せないものだったのではないかと思うのですが。
三上 いや、そんなに驚きはしなかったですよ。なぜかと言うと、このバッシングは、ずっとずっとずーっと私たちに向けられてきたものですから。もちろん、これまではネットのなかだけだったのが、地上波のテレビにまで浸食してきたという違いはありますが、以前から読売テレビさんとかはそういう番組をつくっていますよね(苦笑)。MXはそのあとの問題で、「ついに東京まで行ったか」と思いましたけど、『ニュース女子』をつくっているプロダクションは大阪なんですよね。

──それこそ沖縄デマを繰り返し流してきた『そこまで言って委員会NP』と同じ制作プロダクションです。
三上 ただ思うのは、沖縄の反対運動に対するデマというのは、ネットのなかの、すごくどす黒い人たちがつくった言説だけど、みんなが「その話、大好き」「おいしい」と思わなければ、こんなに広がらないですよね。「その話大好き。もっとちょうだい」と言って、ネット右翼がつくり出すその話を面白がってきた。でもね、ほんとうはそこに逃げ込んでいるし、そこにすがりついているんだと思います。

──すがりつく?
三上 たとえば、高江の問題ひとつとって見ても、ヘリパッド建設の反対運動を当初から取り上げていたのは私のいた放送局(琉球朝日放送)だけだったんですよね。ほかの放送局はやらないし、当時は琉球新報も沖縄タイムスも、ほとんどまともな報道はなかった。そんななかで、記者仲間からは「なんで三上さん高江ばっかり行ってるの? 反対運動とデキてるんじゃないの?」と言われたりしていたんですよ(笑)。「あそこはヒッピーたちが住んでいる、反対運動をするために行っている人たちがいるところで、よそ者ばっかりなんだって」とか。いま起こっている1つの現実に対して、そうやって同業者だって全部報道できないジレンマもあるし、それを「選ばない、報道しない」理由を100も探しているんです。
 高江という地域に暮らす人びとは北部訓練所に囲まれながら生き、そして60年代には米軍がベトナム戦争のゲリラ戦の訓練のために「ベトナム村」というものをつくり、高江の住民はゲリラ訓練に現地民の代わりとして動員させられていた。こんなにも屈辱的なことがあって、いままた違うかたちで訓練の標的にされようとしていることに対して、「本土から移り住んでいる人が多いでしょ」と言うことは、まったく道理が合わない。だってその人は県民だし住民なんですよ。
 記者のみならず、一般の人もそう。「沖縄の人がやってるなら同情できるけど、そうじゃないんだってよ」という言説は、ものすごく安易に受け入れやすいと思います。自分がその問題にかかわらない言い訳、知識のなさや意識の低ささえも、そうした言説が洗い流してくれるから。

──とくに「土人」発言後に松井一郎・大阪府知事が「ご苦労様」とTwitterで労いの言葉をかけたことは、事実上、差別を肯定したも同然でした。そうやって為政者が差別を認めてしまうことで、今後、基地の問題だけではなく差別的な言辞が激化していくのではないかという不安があります。
三上 あの松井府知事の擁護があって、大阪では高江の問題を面白可笑しく取り上げる関西の芸人たちが出ている番組が出てきたんですよね。でも、その元祖というか、音を立ててバッシング社会になったいちばんのきっかけは、イラクの人質事件だったと思うんです。あのとき小泉純一郎首相はじめ政治家がみんな「自己責任」と合唱して、自分が何もやらない理由を正当化してしまった。そうしたら今度は日本中の人がバッシングをはじめた。志をもって外国に行きがんばっている若者を「自己責任だ」と言っていじめるなんて、恥も外聞もないですよ。そうやってまともに考えて行動する人たちをみんなで揶揄して足を引っ張っていると、正しいことを言えなくなる、空気を読んで何も言わないという人たちばっかりになっていくでしょう。それは言論が認められないという社会なのだから、恐ろしいことですよね。
 でもね、「土人」発言でひとつ考えなくてはいけないことは、20代の若い人がそう言わざるを得ないくらい、つらい仕事をさせられていたということです。機動隊として対ゲリラのフォーメーションをさまざま学んでいくなかで、彼らは実践として高江や辺野古に来ている。つまり、「治安を乱す人たちがいる」という想定で彼らはやってきているから、沖縄で反対運動をやっている人たちをそういうふうに扱おうとする。でも、実際に自分の目の前にいる反対派の「治安を乱す人たち」であるおじさんやおばさん、若い子たちは、決してそういうふうには見えない

──映画でも、高江の反対現場で無抵抗で立っている若い女性と、若い機動隊員が相対する場面がありました。悲しげな、不安げな目で感情を語りかけようとしているように見える女性に対し、機動隊員は目を下に逸らす。……あのシーンは見ていて苦しかったです。
三上 苦しいですよね。どこから見ても普通の人たちを「悪者」として扱い、向かい合わなくちゃならないんですから、あんな現場にいたら心が折れてもおかしくない。しかも上司に「この仕事は機動隊がやるべきじゃないです。僕は帰ります」って、そんなこと100人に1人も言えないでしょうし。でも、心が壊れるのも嫌でしょ。そうしたら、「あいつらシナ人なんだぜ。何やってもいいんだぜ」と言われたら、それに乗っかりますよ。差別主義者になって乗り切ろうと思うでしょうそういう人たちをいま、量産しちゃっている。でもね、それが軍隊なんです自分の意志は関係ない、自分の正義だとか感性だとかに照らし合わせて考えることを求められていない、それはもう軍隊ですよね


■「沖縄だけじゃなく、日本列島が“標的の島”なんです」

──しかし、三上監督のように沖縄から現実を伝えようとしても、それを「偏向報道だ」と決め付ける声もあります。
三上 「偏向だ」と言う人には、沖縄に74%も基地を集中させていることは偏っていませんか?と聞きたいですね。そして、この偏った環境のなかで「これでは生きていけないんだ」と言っている人が現実に8割いるんです。そんななかで「そう言っている人もいるけれど、そう言っていない人もいます」というふうに報道することが、果たして公平でしょうか?
 よく「公平」とか「政治的である/ない」とか、そんな話をするときに、「沖縄のなかで反対運動をしている人を出すんだったら、賛成している人も出しなさい」っていうアホみたいな話をする人がいますよね。でも、沖縄の放送局はキー局からこれをずっと言われ続けているんですよ。「辺野古沖にコンクリートブロックが投下されて、反対派の人たちが抗議しています」といったような50秒のニュースをつくっても、「賛成している人たちが出てこないから中央のニュースには乗せられない」なんて言ってくる。じゃあ、どこに賛成している人がいるのか教えてくださいよ、と。
 私は22年、沖縄で生きていますけど、沖縄に置かれている米軍基地に賛成している人なんてひとりもいないと思います。基地を「容認」していると言われている人たちはいますけど、その人たちだって、基地が出来たときに「やったー!」と喜んだような人は誰ひとりいないんですよ。無理やり土地を奪われて、無理やり基地をつくられて、そんななかで「反対」と言ってたら何の生活もできない。アメリカがつくったシステムのなかで、折り合いをつけるしかない。折り合いをつけて、学校をつくってもらったり、道をつくってもらったりしてきた。そうやって折り合いをつけた自分のお父さんやおじいちゃんたちの選択を「あのとき間違っていたんだ」なんて言えないですよ。
 つまり、「基地に反対していない人たちは基地に賛成している人なのか?」ということなんです。「折り合いを付けている人たち」は、いる。「いまさら反対する気なんてまったく起きない人たち」も、いる。でも、それよりもいちばん多いのは「思考停止したほうがいいと思って思考停止した人」と「沈黙するのがいちばんだと思って沈黙した人」です。「容認している人」は一部ですよ。なのに中央のメディアは「賛成派を出せ」というわけですよね。
 だいたい、本当に沖縄に基地をつくりたいと思っている人は沖縄にはいないどこにいるかと言えば、本土にいるわけでしょう。

──そして「本土」は、基地を認めない沖縄を「中国の脅威が迫っているのに平和ボケしている」と責め立てる……。
三上 平和ボケしているのは中国脅威論を振りかざしている人たちのほうなんですよね。もしも中国が攻めてきたとして、日本が戦って勝てますか? 絶対勝てないですよ。だから戦争をしないように外交で努力することが政府の仕事です。こう話すと、「アメリカが守ってくれるから」「アメリカと組めば勝てる!」と言う人がいますが、そんなことを考えているのが平和ボケです
 尖閣が安保条約のなかに入っているといっても、米軍が兵を出すかどうかはアメリカの議会でものすごく面倒臭い手続きをしなければ出せない。しかも、尖閣にアメリカが兵を投入しても、何もいいことなんてないですよ。だからこそアメリカは、中国を抑え込むために第一列島線を使おうと考えているわけで、中国からの初期攻撃に対応するのは日本軍と韓国軍とフィリピン軍。いま、そこから「いち抜けた」と言っているのがドゥテルテ大統領ですよ。
 一方、日本と韓国には地位協定も軍事同盟もある。現状はアメリカの言うことを聞くしかないというかたちですから、戦場になるのは日本か韓国であり、先に死ぬのは日本兵か韓国兵です。そんな状態になっているのに、「アメリカが守ってくれる」と信じているなんて……。
 しかも忘れてはいけないのは、第一列島線というのは、南西諸島だけではなく日本列島を含んでいるということです。戦闘が起こるのは南西諸島でしょうが、日本全土がアメリカの「風かたか」になっている

──つまり、「標的の島」にされつつあるのは、「本土にとっての南西諸島」であり、さらには「アメリカにとっての日本列島」だと。
三上 そうです。「標的の島」というタイトルも「風かたか」という言葉も、何重もの入れ子構造になっているんです。

──てっきり『標的の村』がヒットしたので、二番煎じで『標的の島』になったかと思っていましたが、かなり深いタイトルですね(笑)。
三上 やっぱり、そう思いますよね。私は『風かたか』だけにしたかったんですが、配給側の説得もありまして(笑)。

──ただ、この映画を観れば、軍事要塞にされ、さらには捨石にされようとしている島々には、とても豊かな自然や伝統文化が息づき、当たり前ですがおじいさんおばあさんから赤ちゃんまで、多くの人が日々の暮らしを営んでいるんだということがよくわかると思います。
三上 そう。ここには人が住んでいるんだ!ということをわかってもらえるだけでもいいんです。細かい事情がわからなくても、この島には人が住んでいて、親子の情があって、収穫の喜びがあって、死んでいく人の悲しみや先祖になる喜びや、そういうものがあるんだとわかってくれるだけでいいんです。

──南西諸島のミサイル基地問題は報道がほとんどされていませんから、ぜひテレビでも流してほしい内容ですが……。
三上 テレビでは無理です(苦笑)。でもテレビではないけれど、それを知らせるのが私の仕事ですから、この映画が広がっていけばいいなと思っています。

(取材・構成/編集部)


■『標的の島 風かたか』
3月11日(土)より那覇・桜坂劇場、3月25日(土)より東京・ポレポレ東中野にて公開。ほか、全国順次公開(公式サイトhttp://hyotekinoshima.com)。
辺野古の新基地建設と、高江でのオスプレイのヘリパッド建設。現場では多くの負傷者・逮捕者を出しながら激しい抵抗が続く。そんななか、さらに宮古島、石垣島でミサイル基地建設と自衛隊配備が進行していた。なぜ、先島諸島を軍事要塞化するのか? それは日本列島と南西諸島を防波堤として中国を軍事的に封じ込めるアメリカの戦略「エアシーバトル構想」の一環であり、日本を守るためではない。基地があれば標的になる、軍隊は市民の命を守らない──沖縄戦で歴史が証明したことだ。だからこそ、この抵抗は止まない。この国は、いま、何を失おうとしているのか。映画は、伝えきれない現実を観るものに突きつける。
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