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●武田砂鉄さん《「やりますとも。だって感動するでしょう。そしたら、政治に活用できるから」という現在を、認めてはいけない》、絶対に

2021年05月16日 00時00分06秒 | Weblog

[※ 『国民のしつけ方』(斎藤貴男著、インターナショナル新書010)…《それは調査報道…「番犬(ウォッチ・ドッグ)」としての役割》↑]


(20210509[])
cakesのコラム【ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜 武田砂鉄/丸川珠代と小池百合子が揉めている】(https://cakes.mu/posts/33715)。

 《五輪は中止すべきだ … 1:「選手生命をかけている人がたくさんいます!」 … 2:「中止したら、どれだけの損失が出ると思っているんだ!」 … 3:「成功か失敗かは、やってみなければわからないだろう」…》。

 《「やりますとも。だって感動するでしょう。そしたら、政治に活用できるから」という現在を、認めてはいけない》、《理由は「やりたいから」これでいいのだろうか。》(武田砂鉄)。《五輪は中止すべきだ》。ましてや、コロナを《チャンス》と嘯き、市民を壊憲へと誘う愚者たちの好き勝手も許してはいけない。

   『●『国民のしつけ方』(斎藤貴男著)読了…
      《それは調査報道…「番犬(ウォッチ・ドッグ)」としての役割》
    「オリンピックスポンサーになることの意味合い。中日新聞は、東京新聞の
     東京五輪批判を控えるよう「恫喝」されたらしい」

   『●バッハ会長とニッポン人だけで金(カネ)色の五つの輪を「人類が
      新型ウイルスに打ち勝った証し」「コロナ克服五輪」として開催?
   『●《ああ、すべては東京五輪のために。…国威発揚と利権漁りの国策
     サーカスが、人間の生活にも生命にも優先されるのが、現在のこの国だ》
   『●あぁぁ、〝箕部幹事長〟はブーメランも理解できな程の老醜…《事の
     発端》をお忘れか? ―――《二階の年末の「8人ステーキ会食」》
    「「エイジズム」の意図は全くないのだが、政治家個人として
     醜悪であり、「老害」「老残」だ」

   『●<金口木舌>《年齢で他者を差別をする人も老いる。矛先はいずれ
     発した側に向かう》…「エイジズム」に陥ることなく批判すべきは批判を
   『●森喜朗氏も東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会
       会長を〝解任された〟し、金(カネ)色の五つの輪なんて要らない
   『●「老残・老醜」なサメ脳シンキロウ氏への大ブーメラン…過去の批判に
      学ばず、《学ぶつもりのない人が権力を握り続けている》深刻な問題
   『●金(カネ)色の五つの輪の中止を! …《フタを開ければ、おぞましい
        ほどカネにまみれているのが五輪の実態なのだ》(金子勝さん)
   『●《五輪利権をむさぼり尽くさずにはいられない豚の卑しさと…中国に
     「証し」とやらのマウントを取られたくないド腐れ猿の哀れすぎる性》
   『●金(カネ)色の五つの輪、《中止になって「万歳」でなく、3兆
     6000億円をどぶに捨てたのは誰だと責任追及しなければならない》
    《諸悪の根源はメディアがスポンサーになっていること
    《本間 諸悪の根源は、大手全国紙5社(朝日、毎日、読売、日経、
     産経)がすべてスポンサーになっていることだと思います。だから
     中止という論調が出てこない。最近はどの世論調査でも8割が
     オリンピック開催に反対しているのに、中止を求める社説は
     今のところどこの新聞も出していません。新聞が言わないので
     系列テレビも言わない。ワイドショーや報道番組でも、中止すべき
     という話が盛り上がりません。》

   『●《豚の卑しさ...猿の哀れ》――《世界のメディアから「『最悪の
     タイミング』であり、日本と世界にとって『一大感染イベント』」》
   『●《東京五輪、もはや「詰んだ」状況ではないのか》、メディアは
     分かっているのに書けない…だって、金(カネ)色の五つの輪のスポンサー

    《◆「救える命が救えていない」 「コロナに感染しても今や、
     入院もできずに家で亡くなるなど、救える命が救えていない
     こんな状況で五輪開催を強行されても、国民は歓迎できません」
     「人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます」
     と題して…インターネット上での署名集めを始めた宇都宮健児弁護士
     …こう訴えた》

 「アスリートファースト」だってぇ? 一体どこが? 「社会ファースト」(有森裕子氏)ではなく、所詮、自公政権・自民党ファースト。まさに、《豚の卑しさ猿の哀れ》だ。

 《豚の卑しさ...猿の哀れ》――《世界のメディアから「『最悪のタイミング』であり、日本と世界にとって『一大感染イベント』」》と言われているのに、聞こえないらしい。さらには、ワシントンポスト紙は、《国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と皮肉った上、「地方行脚で食料を食い尽くす王族」「開催国を食い物にする悪癖がある」と指弾。五輪開催の目的は「カネ」と断じ、五輪の中止は「苦痛を伴うが、浄化になる」》と。五輪貴族らに「ぼったくられて」でも、金(カネ)色の五つの輪を開催したいという自公お維の関係者ら。
 日刊スポーツのコラム【【政界地獄耳】世界中の世論を無視して五輪開催へ突っ走るのか】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202105040000037.html)によると、《★ところが同日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長・尾身茂は衆院厚労委員会で、開催について「そのときになって判断するのでは遅い。世界では発展途上国も含めて感染が非常に広がっているのは事実。リスクは当然ある。いろんなことを今から考え、組織委員会など関係者が感染のレベルや医療の逼迫(ひっぱく)状況などを踏まえて、国民に知らせるのが組織委員会、関係者の責任ではないか。五輪・パラリンピックに関する議論をしっかりやるべき時期に来た」と、開催の是非について言及した。 ★これに対して丸川は「国民の皆さまの中にも大会を開催することによって起きる人の流れが感染拡大を起こし、医療を逼迫すると懸念していることは十分承知しています」と世論の反対は承知しているとの認識を示した。また組織委員会会長・橋本聖子は5者協議後の会見で「今日の5者協議で開催をするということは合意した」と開催を再確認したことを強調し、コロナ逼迫を意識しているが中止の選択肢がないことを前提にIOCのバッハ会長来日を待つ構えだ。豪州では五輪キャスターの大会時訪日中止など、外堀は埋まりつつあるが、このまま突入すれば、五輪失敗の世界世論も生まれかねない》。

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https://cakes.mu/posts/33715

ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜
武田砂鉄

丸川珠代と小池百合子が揉めている
今だけ無料 武田砂鉄 2021年5月5日

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、3回目の緊急事態宣言が出されました。飲食店の営業や、さまざまなイベントが自粛されていますが、東京オリンピックだけは開催に向けて進んでいます。今回の「ワダアキ考」は、改めて武田砂鉄さんが考える五輪を中止すべき理由についてです。


五輪は中止すべきだ

もうずっと言っているけれど、もちろん、まだ言う。東京オリンピックは中止すべきだ。もし、学校のディベートの授業で行われるように、強制的に「賛成」「反対」に分けられ、「開催賛成派」の席に座らされたとしよう。一体どうやったら、「賛成」を主張することができるだろうか、と考えてみる。必死に考えて理由を並べてみるものの、でも、やっぱり無理だよ、と思う。ひとまず並べてみる。


1:「選手生命をかけている人がたくさんいます!」

確かにそうだ。100メートル走ならば、その場での10秒間にすべてをかける人たちがいる。その人たちの努力を踏み潰していいとは思わない。だが、「彼らの努力や思い」ではなく、「彼らの努力や思いを勝手に借りる人たちの思い」に対しては、今はそれどころではないだろう、と向ける。今、前者より後者が目立つのは、前者が、個別の意見を発しにくい環境に置かれているからだろう。定期的に明らかになるスポーツ界のハラスメント事案から想像するに、自分の意見を持つことが許されない人も多いのではないか

今この瞬間にしかできないこと、この時期にしかできないこと、というのは、それぞれの人生において異なる形で存在する。様々なメディアを通じて、あるいは直接的に、「30代に入り、競技者人生も後半と考えれば最後のオリンピックになる選手」や「大学に入ったと同時にコロナ禍になり、丸々1年間、友達さえ作れなかった大学2年生」や「1年以上前から会場をおさえていたのに舞台ができなくなった劇団」など、それぞれの窮地を知った。

「この瞬間・時期にしかできないこと」を失ってしまったのって、わかりやすい事情がある人だけではない。日々生きている人それぞれがそれぞれの形で失っているのであって、「そこまで年老いてはいない親だけど、年末年始は実家に帰って一緒に過ごしていたから残念という状態の人」と、「もし東京五輪が中止になったら引退すると決めている選手」の差異は、誰にもわからないのである。それは比べてはいけないはずなのだ。なのに、ワクチン接種にせよ、医療体制にせよ、国家が全力をあげて選手のほうだけを優先している現在にある。それは、やっていいことなのだろうか。やってはいけないことだ、と私は思う。


2:「中止したら、どれだけの損失が出ると思っているんだ!」

これもよく聞く意見である。五輪中止による経済損失の予測を算出し、それが失われると脅す。だが、どう考えても、新型コロナウイルスの感染拡大をいち早く抑え込み、経済活動を再開させる道を作り出すほうが、損失が少なくなることは明らかである。為政者は、五輪を「新型コロナに打ち勝った証」と言い続けてきたが、最近は言わなくなった。なぜ言わなくなったかというと、言えなくなったからだ7月までには打ち勝てないとわかったからだ。「7月までに必ず10キロ痩せます」と宣言し続けてきた人が、最近になって「7月をめどに、10キロ痩せる、という方向で調整しています。詳しくは専門家の皆さんと相談しながら、近日中に方向性をお伝えしたい」と言っている。その人に、痩せる気はあるだろうか

福島原発はアンダーコントロールされている」(安倍晋三前首相)と嘘をつき、「東京と福島は250キロ離れているので東京は安全」(竹田恒和JOC元会長)と被災地を切り捨てて招致した五輪が、いつのまにか「復興五輪」という名目で動き出したものの、ゼネコンの仕事が五輪関係に集中し、むしろ復興が後回しになるという事態に陥った。開催が1年延期になったことで、震災から10年の節目という意味合いも生まれた、と肯定的に捉えたのは橋本聖子JOC会長だが、うんうん、10年というのは確かにキリがいいですね、と整理したがるのは、被災地の人々ではなく、今年の東日本大震災10周年追悼式で二度ほど「復興の総仕上げ」という言葉を用いた菅義偉首相である。反対の声が高まる五輪を、なんとかして必要なものであると強引に変換しようとするために被災地を使う、その様子が、コロナ禍で浮き彫りになってしまった。


3:「成功か失敗かは、やってみなければわからないだろう」

猪瀬直樹が「いざオリンピックが始まれば、選手たちが頑張る姿を見て興奮し、応援するようになると思う」(『ABEMA Prime』3月25日)と述べている。猪瀬は「反対論者は開催時の感染リスクを主張するが、それは具体的なデータを伴わない、無責任な感情論に過ぎません」(「週刊ポスト」1月15・22日号)とも述べていた。始まってしまえば応援するはずで、今、反対している人たちは感情論にすぎない、と言っている。始まれば応援するという考え方こそ感情論で、移動によって感染が拡大するウイルスを警戒する中で、世界各国から大量の人がやってくる五輪をリスクだと考えないほうこそ「具体的なデータ」が未提出ではないか

五輪というのはいざ始まれば、誰かが順当に勝利し、誰かが奇跡的な勝利を収める。そこにはとてつもないドラマが広がるわけだが、このところ、「総選挙の日程は五輪後になりそうだ」といった、政治が五輪の高揚感を活用する前提の日程が見えてきている。そこで生まれた「感動」を、政治が最大限引き寄せて関連付けようとするのは、池江璃花子の復帰や、松山英樹のマスターズ優勝後の、政権中枢の反応をみれば一目瞭然である。

五輪というのは成功・失敗の指標が存在しているものではない。空気を管轄さえできれば、「なんだかんだで成功した」とまとめることができる。それを狙えると考えているからこそ、「やる」を譲らないわけだが、個々人がそれぞれの危機感の中でコロナと向き合い続けているなかで、「やりますとも。だって感動するでしょう。そしたら、政治に活用できるから」という現在を、認めてはいけない。「丸川珠代と小池百合子が揉めている」とタイトルを記して書き始めたのに、そのお題に入る前に、原稿な相当なボリュームになってしまったので、これにておしまい。それくらい、いくらだって問題が山積しているのに、「やる」と言っている。理由は「やりたいから」これでいいのだろうか
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コメント
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●金(カネ)色の五つの輪、《中止になって「万歳」でなく、3兆6000億円をどぶに捨てたのは誰だと責任追及しなければならない》

2021年04月21日 00時00分07秒 | Weblog

[※《自助》大好きオジサン・最低の官房長官と学商 (日刊ゲンダイ 2020年9月7日)↑]


 (2021年04月17日[土])
マガジン9のインタビュー記事【この人に聞きたい 本間龍さんに聞いた:コロナ感染リスクと膨らむ予算、それでもオリンピック開催にこだわる理由】(https://maga9.jp/210310-6/)。
cakesのコラム【ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜 武田砂鉄/結局、橋本聖子になったけれど】(https://cakes.mu/posts/33259)。
日刊ゲンダイのコラム【斎藤貴男 二極化・格差社会の真相/権力に寄り添い、自らをアジャストさせる橋本・丸川コンビ】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/285857)。

 《無観客でも海外から数万人。コロナ対策、できるの? … 3兆5000億円?!ふくらみ続ける経費 … 諸悪の根源はメディアがスポンサーになっていること … 続出するボランティア辞退 … 女性差別から女性の政治利用へ … 中止へ、そして検証と責任追及を …中止になって「万歳」でなく、36000億円をどぶに捨てたのは誰だと責任追及しなければならないこれこそもっとも重要な問題です》。
 《なので、昨年11月にこの連載に書いた内容をそのままコピペしておく。自分で下記を読み直したが、考えは当然変わらない。東京五輪を中止すべきだ》。
 《その意味では、謝罪会見における森氏の「(老害という)老人が悪いかのような表現は極めて不愉快な話」という憤りは正しい。あられもない商業主義と国威発揚目的に徹した東京五輪そのものが、五輪の理念の対極にある。中止以外の道などあり得ないはずなのである》。

   『●《五輪利権をむさぼり尽くさずにはいられない豚の卑しさと…中国に
     「証し」とやらのマウントを取られたくないド腐れ猿の哀れすぎる性》

 斎藤貴男さんの言葉は ―――《五輪利権をむさぼり尽くさずにはいられない豚の卑しさと、来年の北京冬季五輪を控える中国に「証し」とやらのマウントを取られたくないド腐れ猿の哀れすぎる性》――― 激烈だけれども、頷くことばかりだ。どこまでも卑し過ぎるし、腐臭漂う。
 金(カネ)色の五つの輪なんて開催してはいけない。《中止へ、そして検証と責任追及を》!

 《福島はオリンピックどごでねぇ》。
 東京新聞の記事【「リレー聖火消すべき」米NBC 元五輪代表大学教授の寄稿掲載】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/93934)によると、《【ニューヨーク共同】米国内で東京五輪の放送権を持つNBCは25日、「リレーの聖火を消すべきだ」と題する寄稿を電子版に掲載した。「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、聖火リレーは五輪の虚飾のため、公衆衛生を犠牲にする危険を冒している」とした。…ボイコフ氏は、聖火リレーの出発地に福島を選んだことは「この儀式の偽善や害悪、ばかばかしさを際立たせただけでなく、五輪に向けて突き進む日本の問題の縮図でもある」と主張》。
 マガジン9のコラム【言葉の海へ 第159回:東京五輪、日本国民であるということ(鈴木耕)】(https://maga9.jp/210407-4/)によると、《1.招致 … 2.竹田疑惑 … 3.膨れる予算 … 4.国立競技場 … 5.エンブレム … 6.会場変更 … 7.大会延期 … 8.世論 … 9.旧体制 … 11.ボランティア … 12.聖火リレー … 13.マスメディア …この国の政治のありようをこれほどリアルに映し出したこと、腐りきった傷口から漏れ出る腐臭をこれほどはっきりと示してくれた「東京オリンピック」に、ぼくらはむしろ感謝しなければならないのかもしれない。日本という国の国民であるという身の程を、嫌というほど知らされたのだから》。

   『●東電核発電人災から9年: 金(カネ)色の五つの輪《オリンピック
              聖火リレーを前に「福島はオリンピックどごでねぇ」》
   『●バッハ会長とニッポン人だけで金(カネ)色の五つの輪を「人類が
      新型ウイルスに打ち勝った証し」「コロナ克服五輪」として開催?
   『●《ああ、すべては東京五輪のために。…国威発揚と利権漁りの国策
     サーカスが、人間の生活にも生命にも優先されるのが、現在のこの国だ》
   『●あぁぁ、〝箕部幹事長〟はブーメランも理解できな程の老醜…《事の
     発端》をお忘れか? ―――《二階の年末の「8人ステーキ会食」》
    「「エイジズム」の意図は全くないのだが、政治家個人として
     醜悪であり、「老害」「老残」だ」

   『●<金口木舌>《年齢で他者を差別をする人も老いる。矛先はいずれ
     発した側に向かう》…「エイジズム」に陥ることなく批判すべきは批判を
   『●森喜朗氏も東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会
       会長を〝解任された〟し、金(カネ)色の五つの輪なんて要らない
   『●「老残・老醜」なサメ脳シンキロウ氏への大ブーメラン…過去の批判に
      学ばず、《学ぶつもりのない人が権力を握り続けている》深刻な問題
   『●金(カネ)色の五つの輪の中止を! …《フタを開ければ、おぞましい
        ほどカネにまみれているのが五輪の実態なのだ》(金子勝さん)
   『●東電核発電人災から10年: あの人災から何の教訓を得ることもなく、
     何も変わらないニッポン…核発電〝麻薬中毒〟から抜け出せないまま
   『●ボイコフ教授《新型コロナウイルスのパンデミックのさなか、聖火
     リレーは五輪の虚飾のため、公衆衛生を犠牲にする危険を冒している》

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https://maga9.jp/210310-6/

この人に聞きたい
本間龍さんに聞いた:コロナ感染リスクと膨らむ予算、それでもオリンピック開催にこだわる理由
By マガジン9編集部 2021年3月10日

昨年、ギリギリになって2021年への開催延期が決定した、東京オリンピック・パラリンピック大会。しかし現在に至っても、世界中で新型コロナウイルス感染症は収束しておらず、ワクチン接種もまだ進んでいません。首都圏では、病床の逼迫を理由に緊急事態宣言も延長されたばかりです。コロナ対策が後手にまわるなか、この状況下で本当に開催することができるのでしょうか。オリンピックに関するさまざまな問題を追い続けてきた作家の本間龍さんに伺いました。
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無観客でも海外から数万人。コロナ対策、できるの?

──2020年開催予定だった東京オリンピック・パラリンピック大会が延期されて早1年がたとうとしています。しかし、コロナの感染はいまだ収束したとは言いがたい状況で、日本国内でも新たな感染者が出続けています。それにもかかわらず、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会や政府、東京都などは「何が何でも今年の夏には開催する」と言い続けていますが、本当にできるのでしょうか。

本間 「開催できるかどうか」というだけなら、物理的にはできるでしょう。ただ、政府や組織委員会も言い出しているように、海外からの観客は入れない、無観客で開催するというなら、それはもうオリンピックとは言えないと思います。世界中からいろいろな人が会場に集まって熱気にあふれ、声援が飛び、歓声が上がる。会場の外でも外国人選手や観光客と日本人が交流する。そういうエモーショナルな感動があってこそのオリンピックでしょう。それが一切ないというなら、単なるスポーツイベントと何ら変わりません。
 オリンピックの理念や哲学など、すべてかなぐり捨ててそれでもとにかくやるんだと、「開催すること」だけが自己目的化している。そこに何兆円もの税金を投入していいのか、と言いたいですね。

──理念をさておいたとして、観客を入れず、選手だけならコロナの感染拡大を抑えることはできるでしょうか?

本間 観客は入れないとしても、選手と大会関係者だけで2〜3万人はいます。さらに世界中から数万人のメディア関係者がくる。メディアをシャットアウトしたらオリンピック自体が世界中に報道されなくなるので、それはありえません。ですから、すべて合わせると大会にあわせてやってくる人たちは5万人以上になるはずです。
 今は防疫対策として厳しく入国制限しているのに、オリンピックのために5万人以上の不特定多数の人が外国から入ってくる。それでいいんですか? 日本国民の安心安全はどうなるのでしょう。ワクチン接種も行き渡らない、特効薬もない状況で、オリンピックをやって感染が広がったら、いったい誰が責任をとるつもりなのでしょう。

──政府は、選手にはPCR検査の陰性証明を求め、厳しく行動制限するから大丈夫と言っています。

 

本間 JOC(日本オリンピック委員会)も、選手に関しては徹底管理すると豪語しています。感染していないことを担保する陰性証明を入国ビザと連動させて義務づける、出場予定の5日前に入国、滞在中の行動は厳しく管理し、競技が終わったら3日以内に帰国してもらうとか、いろいろ言っていますが、メディア関係者は対象外です。そもそもメディアの人たちは、あちこち動き回って取材するのが仕事なのですから、その自由を奪うことなんかできません。

 彼らは、24時間、競技場や選手村だけに張り付いているわけでなく、開催都市である東京の街の様子なども取材に回るでしょう。あちこち撮影したり、街頭インタビューしたりする。それが仕事ですから。で、その健康管理はどうなっているかといえば、73億円かけて感染追跡アプリを作ってるから大丈夫、というんですね。

──昨年できた新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAも、不具合が指摘されて使い物にならないと言われています。今から新しいシステムを作るって、大丈夫なんでしょうか?

本間 不可能でしょう。最大の問題点は、たとえそのアプリをメディア関係者のスマホに入れさせたとしても、それぞれがきちんと毎日データを入力してくれるか、何の保証もないことです。健康チェックにしろ、行動報告にしろ、嘘をつかないで正確に決められた通りにやっているか確かめようがないし、守らせるための法的な強制力もありません。

 たとえば、ちょっと熱がでてきたけど正直に報告したら取材ができなくなっちゃう、やばいから適当にごまかしておこう、という人が出てきてもおかしくない。それを誰がチェックするのか。違反したときに法的な罰則を加えることができるのか。できないでしょう。

──宿泊施設の問題もあります。選手の宿舎は個室ではないそうですね。そうすると誰かひとりでも陽性者が出たら、濃厚接触者が次々に出て、ついには選手村全体が閉鎖されるなどということもあり得るのでは?

本間 そうですよね。おそらく国ごとにフロアを割り当てるつもりなのでしょうが、もし感染者が出たらどう対処するのか。そのフロア全体の選手を2週間出場停止にするのか、そのなかに翌日の決勝戦に出場予定の金メダル候補がいてもそうするのか、あるいは検査で陰性と出ればその人だけ出場させるのか。いろいろなケースが想定されますが、それについてのマニュアルがまだ一切明らかにされていない。ぎりぎりになって決めるつもりなのでしょうが、そういう危機管理は事前にきちんと情報公開しなければ、まったく信用されません。

     (本間龍さん。インタビューはオンラインで実施)


35000億円?!ふくらみ続ける経費

──お金の問題も深刻です。招致の段階では、当時の猪瀬直樹都知事などは、これまでにない低予算のコンパクト五輪にする、7000億円でやれると言っていましたよね。

本間 オリンピックにいくらかかるのか、これはひと言では言えません。開催に直接かかる経費として組織委員会や政府が発表しているのは、1兆6400億円です。昨年の段階で1兆3400億円でしたが、延期したことでさらに3000億円が乗っかった数字です。
 ですが、実際の経費はこれだけか、というとそうではない。たとえば東京都はマラソンコースの道路整備などに8000億円使いました。マラソンは結局札幌でやることになって、無駄になったわけですが……。開催のためには膨大な環境整備費がかかるのに、組織委員会としてはそんなの東京都が勝手にやってることで、俺たちは知らないと予算に入れていないのです。でも国民からみれば同じ税金でしょう。
 まだまだあります。会計検査院の2019年12月の発表によると、招致が決まった2013年から19年の間に、国の機関がオリンピックのためとして使った予算は1兆400億円に上ります。

──具体的にはどんなことに使われているのでしょう。

本間 それがまた実にいい加減で、一例をあげれば「水素自動車の実証実験」というのがあります。オリンピックではトヨタが水素自動車を走らせる。その実証実験と称して、ある山村の一画に水素ガス供給センターを1億円かけて作ったのです。でもその村に水素自動車は2台しかないんですよ。そんなもの作って後々どうするんだ、という話です。
 ほかにもオリンピックに何の関係もない橋や道路の補修に使うなど、ここぞとばかり火事場泥棒的にあれこれ突っ込んでいるんですね。

──東日本大震災の復興予算と同じですね。

本間 そうなんです。そんなこんなで、すべて足すと3兆5000億円を超えてしまいます。それでもまだ済まない。コロナ対策費がさらに乗っかって来ます。一応、延期に伴う追加予算の3000億円のうち1000億円はコロナ対策費となっていますが、これはごく基本的な数字で、実際にやるとなったらこれで済むはずはなく、どこまで膨らむかだれにもわからないという状況です。

──空恐ろしいことです。

本間 結局いくらかかるのか、終わってみなければわからないと組織委員会の人も言っています。これまで一番金がかかったのはリオ大会の1兆5000億円と言われていますが、今回はそれを遙かに超えるはずです。


諸悪の根源はメディアがスポンサーになっていること

──膨大な税金の無駄遣い、それに加えてコロナ感染拡大によって国民の命を危険にさらすリスク。菅義偉首相は「人類がコロナに打ち勝った証としてのオリンピック」と繰り返しますが、それができないのは明々白々です。

本間 政府内でもまともに開催できると思っている人はひとりもいないでしょう。ただ、今まであまりにも多くの金をかけてきてしまったから、簡単には引き下がれないというのが正直なところだと思います。
 67社のオリンピックスポンサーに対しても、「今年は絶対開催するから」と言って、昨年12月で契約が切れたのを今年9月まで更新してもらって、それで200億円集めています。ただ、200億円といっても本当にそれだけの現金が集まっているわけではありません。業績が悪化している会社が多いので、航空会社なら選手移動のための航空券を提供しますとか、アパレル企業ならユニフォームを無料で作りますとか、バーターが多いのです。これも実際に現金があるように見せかける組織委員会のペテンですね。

──スポンサーには大手メディアも入っています。そのため中止せよという声が高まらないのではないでしょうか。

本間 諸悪の根源は、大手全国紙5社(朝日、毎日、読売、日経、産経)がすべてスポンサーになっていることだと思います。だから中止という論調が出てこない。最近はどの世論調査でも8割がオリンピック開催に反対しているのに、中止を求める社説は今のところどこの新聞も出していません。新聞が言わないので系列テレビも言わない。ワイドショーや報道番組でも、中止すべきという話が盛り上がりません。
 森喜朗組織委員会会長の辞任騒ぎはさすがに大きく取り上げましたが、では、そもそも開催する意味があるのかとか、そうした踏み込んだ問題はうまくスルーしごまかしています。世論調査では国民の8割が支持していない開催について、すべての新聞が口を閉ざしている、異様なことです。
 記者会見などでも、たとえばコロナ対策は具体的にどうなっているのか、国民の安心安全をどう担保するのかといった質問さえ出ない。戦争中の大政翼賛報道と同じです。

──オリンピックでは、スポンサーにならなければ取材ができないのですか?

本間 そんなことはないでしょう。ただスポンサー優先で、いい場所がとれないとか、後回しにされるという不利益はあるかもしれませんが……。
 僕が調べた限りでは、他国で開催された今までのオリンピックで、主な報道機関がすべてスポンサーになったという例は見あたりません。1社とか2社ならわかるけれど、全社横並びではまともな報道ができるはずはありません。

──ここまで来たら、スポンサーを降りて、はっきりものを言うマスコミが現れても良さそうなものですが……。

本間 どこの社も、そんな根性はないでしょうね。スポンサー契約の更新にしても多くの企業が年末ぎりぎりまで迷っていたのに、新聞各社はいの一番に更新したくらいですから。


続出するボランティア辞退

──オリンピックでのボランティアについても、本間さんはずっと以前から、その劣悪な待遇などについて警鐘を鳴らし続けておられました。コロナの問題などがあって、今ボランティアの状況はどうなっているのでしょう。

本間 組織委員会では延期後も、8万人のボランティア登録者に定期的にメールを出しているのですが、昨年12月のメールに返信が来たのは約2割、1万6000人だったと言われています。やるかやらないかの意思確認ではなかったようですが、2割の人からしか反応がなかった。ですから本当にやってくれるのか、蓋を開けてみなければわからないのです。
 さらに、例の森発言の後には、1000人くらいの辞退者が出たと言われています。それに対して組織委員会は、運用には問題ないとえらそうに言っているし、二階俊博自民党幹事長も「(ボランティアは)いくらでも補充できる」みたいな発言をした。まったく無神経な反応で、ボランティアに参加する人たちへの敬意が微塵も感じられません。
 ともかく、政府や組織委員会が慌てているのは確かで、今年1月にパソナが時給1650円で、ボランティアと同じ仕事内容のバイト募集を始めています。

──医療従事者にもボランティア要請が来ていると聞きます。ただでさえコロナ対応で疲弊しているのに、あり得ない話ですね。

本間 医療系スタッフだけで2万人は必要と言われていますが、今の医療逼迫状況ではオリンピックにボランティアを出す余裕なんてないのは明らかです。なのに森さんの後を継いだ橋本聖子会長は「何とかなる」みたいなことを言っている。今のところ、東京都医師会が関東全域の医師会に協力してもらってボランティアを集めることになっているのですが、それができなければ最後は国が何とかしてくれると、何の展望も無いのにたかをくくっているのだと思います。
 こうしたボランティアの問題一つとっても、本来ならメディアが徹底的に追及して、開催が不可能であることを暴き出さなければならないのに、ことごとくスルーしている。だから政府や組織委員会は「やるやる」と言い続けていられるのです。


女性差別から女性の政治利用へ

──橋本新会長の名前が出ましたが、今年2月、開催予定まで半年余りという時期に組織委員会の会長交代劇が起きました。橋本さんは本当はやりたくなかったと言われていますね? 森辞任は避けられないけれど、抗議の声を無視はできない。だから女性で、しかし森さんに近い橋本さんで何とか片をつけようという下心が透けて見えます。

本間 まあ、五輪担当相だった橋本さんが横滑りするのは、一番妥当な線だったのではないでしょうか。私はダークホース的には小谷実可子さんもありかなと思ってたけれど、行政手腕が問われる役職なので、橋本さんに落ち着いたのでしょう。
 それにしても、組織委員会というのは、オリンピックを開催してもしなくても、いずれにしろ年内で解散する組織です。会長など今さら誰がやっても同じです。橋本新会長の一番の仕事になると思われるのは、中止決断を下すこと。いわば敗戦処理です。
 にもかかわらず橋本さんは「男女平等への取り組み」として、理事会における女性理事の割合を40%に引き揚げると言って、新たに12人も理事を増やしました。今さら? 1カ月後には中止が決まるかもしれないこのタイミングで!? と思いました。
 理事を増やすと簡単に言いますが、ひとりあたり100万円くらいの月給を出すわけでしょう。そんな予算はもうどこにもないはずです。

──私たちにはわからない政治的な思惑があるんでしょうね。森さんの女性差別発言を反省して、女性を登用すると言っていますが、橋本さんも後任の五輪担当相の丸川珠代さんも、男性社会でうまくのし上がってきた「女性の皮を被った男性」という感じがします。問題から目をそらすために女性を政治利用しているとしか思えません。

本間 JOCだけでなくIOC(国際オリンピック委員会)だって、会長も副会長も男性ですよね。ジェンダー平等だのLGBTの人権だの、もっともらしいことを言って神聖化して、もはや「オワコン」であるオリンピックを存続させ、それで飯を食おうとしている人たちの集まりに過ぎません。

──オリンピックそのものが、すでに役目を終えたイベントだということですね。

本間 いわゆる「発展途上国」であれば、オリンピック開催をきっかけに経済を発展させ、「先進国」の仲間入りをするという意味で、利用価値はあるでしょう。あるいは2024年開催予定のパリやその次のロサンゼルスのように、すでにある「遺産」を使って、税金をほとんど使わないでできる、というならまだいいかもしれない。ですが、東京のような過密都市が、既存の施設をぶっ壊し、膨大な金を使って新たに作り直してまでやる意味はまったくないと思います。


中止へ、そして検証と責任追及を

──2月半ばには、島根県の丸山達也知事が、オリンピック開催には賛同できない、県内での聖火リレーの中止を検討すると発言し、注目されました。こうした声が広がって「何が何でも開催」の流れが変わる可能性はありませんか?

本間 丸山知事の発言は、非常に核心を突いていると思います。島根県は聖火リレーのために7200万円を計上しています。一つの県でたった2日くらいの聖火リレーに、これほど巨額の県民の税金を使っていいのか、という疑問は当然のことでしょう。
 しかも、聖火リレーというのは人を集めてなんぼなのに、コロナだから集めすぎるな、密になるなと、めちゃくちゃな指令を組織委員会から投げられるわけです。異議を申し立てるのは首長として当然のことで、ほかの首長もみんなそう思っているのではないでしょうか。丸山知事ひとりの発言で開催を阻止できるとは思いませんが、あとに続く知事や政治家が出てくることを期待したいところです。
 野党にしても、開催中止を明確に主張しているのは共産党だけです。立憲民主党など他の野党もいい加減に見切りをつけて、中止へと舵を切るべきです。世論の8割が開催に反対している、その風を捕まえなくてどうするんだと言いたい。

──やるにしろやめるにしろ、招致からこれまで何があったのか、いくらお金がかかって、どう使われたのかなど、しっかり検証しなくてはいけないと思います。原発事故後の事故調査委員会のような組織を作って、きちんと後始末をつけなければいけません。

本間 その通りです。僕は中止になると思っていますが、そうなったら、さらにひどいことになる。関わっていた人間は沈没船から我先にと逃げ始めるでしょうから、そのときにどれだけ証拠資料を押さえられるか、今から準備しておかねば大変なことになります。僕らのような一般人が資料開示請求しても黒塗りされたものが出てくるだけですから、会計検査院など国権を持つ機関が強制力を持って調査をできるようにしなければだめです。
 中止になって「万歳」でなく、3兆6000億円をどぶに捨てたのは誰だと責任追及しなければならないこれこそもっとも重要な問題です

(聞き手/鈴木耕、構成/板倉久子)





ほんま・りゅう ●著述家。1962年、東京生まれ。博報堂で18年間、一貫して営業を担当。2006年同社退職後、在職中に発生した損金補填にまつわる詐欺容疑で逮捕・起訴され、1年間服役。出所後、その体験をつづった『「懲役」を知っていますか?――有罪判決がもたらすもの』(学習プラス)で作家デビュー。その後、博報堂時代の経験から、原発安全神話を作った広告を調査し原発推進勢力とメディアの癒着を追及。また、東京オリンピックなど、様々な角度から大手広告代理店のメディアへの影響力の実態を発信するなど、幅広く活動している。『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波ブックレット)、『原発広告』(亜紀書房)、『原発プロパガンダ』(岩波新書)、『ブラックボランティア』(角川新書)など著書多数。
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https://cakes.mu/posts/33259

ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜
武田砂鉄

結局、橋本聖子になったけれど
武田砂鉄
2021年2月24日


森喜朗の女性蔑視発言から二十日、新しい東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長に就任した橋本聖子。冬夏計7回のオリンピックに出場したトップアスリートから政治家に転身、2014年には男性フィギュアスケート選手へキスしたことが問題視されたこともあります。今回の就任について、武田砂鉄さんが考えます。


みんなで集まってリセットボタンを押す

 さあ、これで仕切り直して、東京五輪ですね、というムードに切り替わっているのが本当に不可思議だ。わずか20日ほど前の2月頭に吐かれた森喜朗の女性蔑視発言は、そもそも無理だらけの東京五輪にプラスされる形で新たに浮上した問題だった。森が辞め、川淵三郎がやると言い、やっぱやらないと言い、透明性を高めた上で次を決めますと述べた後で非公開の会議を行うという、国民を小馬鹿にした方法で、橋本聖子が新たに組織委員会の会長に就任した。密室では決めません、と宣言した直後に、密室で決める。この常習犯の手口に対し、「女性が就任したのは期待できる」と受け止め、メディアの人たちまで鏡割りのように集まってリセットボタンを押す光景というのは、運営する側にとっては「いやぁ、マジでチョロいなー」ってなもんだろう。


「森先生はやはり私にとっては大変特別な存在」

 橋本聖子の母の大叔父は、昭和初期に政治家をしており、母の父親は北海道で農家を営みながらその人の書生をしていた。二番目の姉の夫も政治家で、その義兄から「自分が引退したら後を継いでくれ」と言われていた。30歳の時に政治の世界に誘ったのが、当時の自由民主党・森喜朗幹事長だった。最近も、森と橋本は「今もお父さんという感じでご指導いただいております(橋本)」「私にとっても娘みたいな、そう思って大いに厳しくやろうと(森)」と、疑似親子関係を率先して周知させてきた。さすがに今回の件で「娘」が見切りをつけたかと思えば、就任会見で力強く「私自身の政治の師でもあります前会長、森先生はやはり私にとっては大変特別な存在」と述べ、来週早々にも会いに行きますと、親子関係の継続を強調したのだった。

 橋本聖子の著書『オリンピック魂 人間力を高める』には、自分が選挙に出馬できたのは、党がイメージアップを図っていたためだったことが冷静に書かれている。1995年、その直前に野党を経験していた自民党は、スポーツ選手を擁立しようと動いた。そこで白羽の矢が立ったのがメキシコ五輪サッカー日本代表だった釜本邦茂と、スピードスケート選手の橋本聖子だった。「夏と冬のオリンピックから一人ずつということだったらしいです」という一文に、そんなに適当なものなのかと呆れるが、この呆れ方は、この数週間の私たちの呆れと成分が似通っている。


「子どもを産むなら離職しろ」と言われた

 
出馬時、30歳×女性×高卒という属性やキャリアに対し、露骨なバッシングが向けられた。ある演説会で、自分の出番の前に、古参の議員が「次に挨拶する人は元オリンピック選手だから、どんな話をするか、わかりませんけどね。自民党もこういう人を招かなきゃいけなくなって、本当に力が落ちたもんだ」と言い、自分が当選した選挙では、落選した自民党の大ベテラン議員がテレビカメラの前で「橋本聖子みたいのが当選して、自分が落ちたのは……」と言われた。最悪だ。

 現職の国会議員として50年ぶりに出産すると、男性の国会議員から「国会議員は片手間にできるものではない。子どもを産むなら離職しろ」と言われた。そういうプレッシャーもあって、なんと、出産して1週間で仕事に戻ったところ、今度は「橋本聖子は一週間で職場復帰した。君もそれくらいで復帰できるだろう、と雇用主から言われた。アスリートと一般の女性は違うのに」といった意見が届いたという。超のつく男性社会に翻弄されながら、その中で女性としていかにキャリアを重ねようかと模索し続ける中で、「アスリートだから」「特別だから」という目線を内外から浴びてきた。


選手に謝らせたと認めたようなもの

 今回の森発言とその後の逆ギレや開き直りは、まさに橋本がこれまでの政治家としてのキャリアを積み重ねるなかで浴びてきた女性軽視・蔑視・無視そのものだったのに、結果的に、「森先生」と立てることを優先してしまった。

 2014年、冬季ソチ五輪閉会式後のパーティーで、男性フィギュアスケーターに抱きついてキスを強要した件については、就任会見で「軽率な行動について、当時も今も深く反省している。厳しい声は受け止めている」と述べている。7年も前のことをわざわざ引っ張り出すメディアを批判する向きもあったが、思い出さなければいけないのは、あの時、キスをされた選手側に謝らせ、同意の上だったと誤魔化そうとする動きがあったこと。極めて権限の強い日本選手団団長と、一人の選手という立場の差を考えれば、ハラスメント行為を被害者側の声明によって無効化させる手口は卑劣である。

 個人同士が同意の上でキスをするのは、どんな間柄であれ、他人に反省を表明することではない。今回、「あれは同意の上でした」ではなく、「深く反省している」と橋本は言った。反省を述べたということはつまり、選手が謝ったのではなく、選手に謝らせたと認めたようなものではないか。それって、とても重い事実だと思うのだがどうか。


問題が解決したわけではない

 今月初頭の森発言から橋本聖子就任までの20日間は、「これで五輪に向けての問題が解決した」ではなく、「新たに生じた問題をどうにかして消そうとした」だけであって、つまり、その直前まで山積していた問題が解決したわけではない。なので、昨年11月にこの連載に書いた内容をそのままコピペしておく。自分で下記を読み直したが、考えは当然変わらない。東京五輪を中止すべきだ。

 「今、メディアで、東京五輪開催への賛成・反対が問われる際、コロナ感染拡大が止まらない中で開催するべきなのかに議論が絞られているが、この絞り方では、これまでの経緯がすっぽ抜ける。議論すべきは、コロナだけではない。『東京は安全』(竹田恒和JOC元会長)などと被災地を踏み潰しておきながら『復興五輪』を名乗ってきたこと。シンガポールのペーパーカンパニーへの賄賂疑惑を放置していること。暑さ対策やボランティアの体制不備などの問題が解決されているとはいえないこと。従来の想定から膨らみ続ける開催費について根本的な検証が行われていないこと。などなど、理由はいくつもある。『コロナだけど、五輪できるの?』を議論する前に、いつの間にか外されている議題の存在を再度戻して問う必要があるし、それらを並べれば、答えはすぐに出ると思う」
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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/285857

斎藤貴男 ジャーナリスト
1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。

二極化・格差社会の真相
権力に寄り添い、自らをアジャストさせる橋本・丸川コンビ
公開日:2021/03/03 06:00 更新日:2021/03/03 06:00

     (橋本聖子新組織委会長(右、=共同)と
      丸川珠代新五輪相(C)日刊ゲンダイ)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の新会長に橋本聖子氏、彼女の後任の五輪担当相に丸川珠代氏が就任して、そろそろ2週間。あれだけ騒いだマスコミが、もう何も言わない。何もなかったことにして“新型コロナウイルスに打ち勝った証しとしての五輪”とやらを、勝ってもいないのに強行したい政府の妄執の反映だ。

 こんな幕引きでよいはずがない。例の森喜朗・前組織委会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」発言は確かに、第一義的には女性蔑視であり、五輪の理念に反していた。

 そのことだけが問題なら、小池百合子東京都知事も合わせて女性ばかりの新体制で一件落着、でも結構。しかし、森氏の嘲弄は男性を含めた市民全体にも向けられていたことを忘れられては困る。

 あの発言は、“上位の力に隷従するのが正しい人間”だとする尺度が共有されていて初めて成立する。たとえば首相の汚職に手を貸して部下を自殺に追い込み、それでも偽証を繰り返すような卑劣漢こそが、この国では“期待される人間像”であり、“男の中の男”なのだ。

 その伝でいけば、橋本、丸川の両氏は申し分ない人材だろう。ともに絶えず権力の中枢に寄り添い、彼らの都合に自分自身をアジャストさせる能力で群を抜く。けれども女性であるのは確かだ。とすれば彼女らによって切り開かれていく世界とは、いわゆる“男社会”の封建構造に世の中全体が埋め尽くされる悪夢を意味してしまう。

 他方、作家の林真理子氏が「週刊文春」のエッセーで森発言に触れて、〈人々は今、根こそぎ社会を変えたいのではなかろうか〉と書いていたのが印象的だ。なるほど、最近、古いと見なされた価値観やその持ち主に対する風当たりは、かつてなく激しい。もっと言えば、高齢者の存在そのものを一掃したい集合意識さえ、私は感じている。

 では、そうして根こそぎ変えられていく社会は、どんな姿をしているのか。GAFAによる人間支配。生産性で採点される命の選別……。コロナ禍を奇貨として強行されつつある現実が完成した暁の、政治権力と巨大資本のユートピア、私たち人間にとってのディストピア。

 その意味では、謝罪会見における森氏の「(老害という)老人が悪いかのような表現は極めて不愉快な話」という憤りは正しい。あられもない商業主義と国威発揚目的に徹した東京五輪そのものが、五輪の理念の対極にある。中止以外の道などあり得ないはずなのである
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コメント
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●第2波が高止まりのまま、無謀なGoTo強行。そして、いま、第3波のほんの入り口かもしれない…懸念通りの感染拡大。市中感染拡大

2020年11月26日 00時00分15秒 | Weblog

[※東京都の新規感染者数 (東京新聞 2020年11月19日)↑(https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=69219&pid=181293)]



cakesのコラム【ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜 武田砂鉄/東京五輪どころではないのだから】(https://cakes.mu/posts/32379)。

 《あちこちで、東京オリンピック・パラリンピックをやるべきではない、と言い続けているのだが、「五輪を目指している選手の気持ちを考えてほしい」という決まり文句が、選手以外から発せられる。先日、東京五輪について考える新聞社主催のトークイベントに登壇したのだが、直に選手と接している運動部の記者に聞いたところ、表立っては言わないものの、選手からも中止になるのも致し方ない」「どうしても大会をやらせてほしいというのは選手のエゴ」との声が出てきていると聞いた》。
 《そのスピーチとは、例の「アンダーコントロール」発言である。ウソのスピーチを功績と褒め称えたのである。どうしても五輪をやりたい人たちが、獰猛な勢いで、なんとかやり遂げようと開き直っている。無理やり気持ちを高めようとしてくる。コロナ禍で、ありとあらゆる不安を抱えながら生きている現在、たとえ個々の力は弱くても、それどころではないんです、と冷静に追い払わなければいけない》。

[※ 【1都3県の新規感染者数の推移】(東京新聞 2020年7月17日)↑]



【東京都の新規感染者数】(東京新聞 2020年11月19日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article_photo/list?article_id=69219&pid=181293

 第2波が高止まりのまま、無謀なGoTo強行。そして、いま、第3波のほんの入り口かもしれない…懸念通りの感染拡大。市中感染拡大。スカスカオジサンは市井の生活も経済も破壊したいらしい。
 正気か?―――「人類が新型ウイルスに打ち勝った証し」「コロナ克服五輪として開催?

   『●東電核発電人災汚染水放流に反対…(筆洗)《取り除くべきは
     放射性物質に加えて、地元の心配であり、悩みである。簡単には水に流せぬ》
   『●「原子力災害伝承館」《批判…口封じ》…《安倍政権では「被災地
      切り捨て」政策がつづけられてきたが、それを菅政権も「継承」》
    《東京五輪の招致の際は「復興五輪」と連呼しながら、いつのまにか
     その掛け声は人類が新型ウイルスに打ち勝った証し
     コロナ克服五輪へとすり替わったように、菅首相も「現場主義に
     徹して復興をさらに前に進める必要がある」と口にしながら、
     予算大幅削減の方針からも被災地軽視の態度は明らかだ

   『●バッハ会長とニッポン人だけで金(カネ)色の五つの輪を「人類が
      新型ウイルスに打ち勝った証し」「コロナ克服五輪」として開催?

 金(カネ)色の五つの輪の政治利用 ――― 青木理さん「率直に言うと、オリンピックの政治利用なんですよ。…オリンピックを何としてもやって、それをスケジューリングしつつ解散のタイミングを計るなんてことをずっと言っている、これも政治利用…」(サンデーモーニング 2020年11月22日)。
 同じく、「コロナ克服五輪」という金(カネ)色の五つの輪 ――― 安田菜津紀さん「オリンピックは開催ありきでいいんだろうか…、はたしてオリンピックは数合わせなのかということ、経済力っていうのが事実上の線引きになってしまいかねないのであれば、いわゆる平和の祭典と呼べるものなのかどうかも含めて、改めて、そこに立ち返らなければならないと思います」(サンデーモーニング 2020年11月22日)。

 世界の嘲笑 ――― 「人類が新型ウイルスに打ち勝った証し」「コロナ克服五輪」。
 日刊ゲンダイの記事【“開催ありき”のIOCバッハ会長訪日 海外メディアが酷評】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/281512)によると、《気になるのは、「バッハ訪日」を巡る国内外メディアの温度差だ。国内大手の大半は「連携確認」「ワクチン、IOCがコスト負担」とヨイショ見出しが躍ったが、海外メディアはバッサリ酷評しまくっている。…■森会長を「裏金疑惑」で追及海外メディアは「五輪より人命」が当たり前の感覚…海外メディアの方が、東京五輪を取り巻く厳しい現実を正確に伝えているようだ。…谷口源太郎氏がこう言う。…「国内主要メディアは大会スポンサーになっていますから、厳しい報道を控えるのは当然です。批判的な記事を幹部に差し止められた記者がいたことも明らかになっています。欧州を中心としたコロナの状況を見れば、開催が難しいのは明らか。海外メディアは『五輪より人命』という当たり前の感覚で報じていますが、国内メディアにはそれができないのです。“お祭り”を持ち上げてばかりでは、真実は伝わりません」…国民が目を向ける真実にメディアがソッポとは、異常事態だ。》


   『●『国民のしつけ方』(斎藤貴男著)読了…
      《それは調査報道…「番犬(ウォッチ・ドッグ)」としての役割》
    「オリンピックスポンサーになることの意味合い。中日新聞は、東京新聞の
     東京五輪批判を控えるよう「恫喝」されたらしい」

 《本間龍…さんの言葉。…「もともとオリンピックのスポンサーは原則的に『一業種一社』だったのが、電通が金儲けのためにその原則を崩してしまった。」らしい。「問題点を検証できる新聞のようなメディアが軒並みスポンサーに入ってしまっては、議論もできなくなってしまう。」》。
 権力への批判精神を忘れた新聞…ジャーナリズムの存在意義はどこに行った? 権力の監視》《権力のチェック機能》《番犬ウォッチ・ドッグジャーナリズムが失わる行く…。東京新聞は、先ずは、《国家総動員体制》の下、奴隷・強制労働や供出などについて報じてはくれまいか? 頼れるのは東京新聞だけだ。リテラ記事の〆の言葉…《五輪を大義名分にして国民に強いる自己犠牲の精神”は、戦時体制をつくり上げた国家総動員の再来だ。にもかかわらず、新聞社が大会スポンサーに成り下がって盛り上げ役となり、その問題の根深さ、危険性に警鐘を鳴らして正面から批判できないのならば、戦争に加担した負の歴史と同じことを繰り返しているようなものだろう》。世も末だ。


 感染経路不明者の多さ…無症状感染者を特定しない無為無策無能が市中感染を広げている。
 東京新聞の記事【東京都、新型コロナの警戒度「最高」へ 神奈川、埼玉も新規感染者の最多更新 感染経路が多様化】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/69219)によると、《東京都は18日、新型コロナウイルスの感染者が新たに493人報告されたと発表した。1日当たりの感染者数は8月1日の472人を上回って過去最多を更新。都関係者によると、都独自に設けている感染状況の警戒度を、4段階中で最も深刻な「感染が拡大している」へ、2カ月ぶりに引き上げる方向で検討している。専門家を交えて開く19日のモニタリング会議で最終判断する。(小倉貞俊) 神奈川県、埼玉県なども最多を更新し、全国の感染者は初めて2000人を超えた》。

 《自助》大好きオジサンは、一体どんな《公助》を? 検査検査検査・追跡・保護の徹底もなく無為無策無能な政権がGoToで感染拡大…。
 東京新聞の記事【社説/クラスター多発 感染の連鎖を断ちたい】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/69265?rct=editorial)によると、《新型コロナウイルス感染症の拡大が止まらない。ここでなんとしても拡大を抑えたい。特にクラスター(感染者集団)の発生が増えている。科学的知見を生かし、できる対策に取り組みたい。北海道は感染拡大を受け札幌市内での不要不急の外出や、市内外の往来の自粛要請を決めた。今の感染拡大はペースが速く、中高年層にも広がっているのが特徴だ。注意を要するのはクラスターの多発である。医療機関や高齢者施設での発生が目立つ。患者や高齢者は重症化リスクが高い。医療機関での発生は医療スタッフの確保にも支障がでかねない。入院患者、入所者、医療スタッフへの検査を徹底し、施設内へのウイルスの侵入を阻止したい》。

 第三波がどうした!、《自助》で自己責任だ!! ―― と聞こえる。あまりの無為無策無能ぶり。
 リテラの記事【コロナ再拡大の最大の戦犯は菅首相だ! いまだ専門家の「GoToが原因」指摘を無視して「静かなマスク会食を」の無責任ぶり】(https://lite-ra.com/2020/11/post-5701.html)によると、《「政府としては、地方公共団体がおこなう営業時間の短縮要請の支援の決定をするとともに『GoToイート』については原則4人以下で飲食をすること、こうしたことを知事に検討することをお願いいたしました」「ぜひみなさん、静かなマスク会食、これをぜひお願いをしたい。私もきょうから徹底したいと思います」「最大限の警戒状況にある」と言いながら、「マスクを付けて会食しよう」と呼びかける……。》

 東京新聞の記事【「Go To」感染拡大のきっかけ 日本医師会長 「コロナ甘くみないで」 】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/69221)によると、《感染者増と観光支援事業「Go To トラベル」の関連については「エビデンス(証拠)がなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いない」と述べた。(井上靖史)》。

 最後に、日刊ゲンダイの記事【米津玄師・カナリヤ基金で寄付の人間性 菅首相見習えば?】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/281597)によると、《19日に「カナリヤ」のMV(ミュージックビデオ)を公開した米津玄師。MVは、「万引き家族」で第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督が制作。…MVは公開と同時に話題となり、ユーチューブはあっという間に数時間で再生回数が45万回を超えた。さすがは「米津・是枝」の最強タッグの作品だが、驚くのはそれだけじゃなかった。米津は「カナリヤ」が収録されているアルバム「STRAY SHEEP」の収益の一部を、「カナリヤ基金を通じてコロナ禍で困窮している方々に寄付していく」と公表したのだ。…そんな米津と対照的なのが菅首相だ。コロナ禍で苦しむ国民生活を一顧だにせず、「静かなマスク会食と呼び掛けるばかりで1円のカネも出す様子もない。頭にあるのは解散の時期だけ他人に寄り添うどころか自分のことしか考えていない。おそらく、菅首相はカナリヤのMVを見ても何も感じないのではないか》。

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https://cakes.mu/posts/32379

ワダアキ考 〜テレビの中のわだかまり〜
武田砂鉄

東京五輪どころではないのだから
今だけ無料 2020年11月18日

 国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が来日、来年に予定される東京五輪の観客を受け入れての開催を「確信している」と述べました。コロナ禍で開催すべきか否かが議論されがちな東京五輪ですが、武田砂鉄さんは「議論すべきは、コロナだけではない」と言います。その理由とは?


「選手の気持ちを考えてほしい」とか言う

 あちこちで、東京オリンピック・パラリンピックをやるべきではない、と言い続けているのだが、「五輪を目指している選手の気持ちを考えてほしい」という決まり文句が、選手以外から発せられる。先日、東京五輪について考える新聞社主催のトークイベントに登壇したのだが、直に選手と接している運動部の記者に聞いたところ、表立っては言わないものの、選手からも「中止になるのも致し方ない」「どうしても大会をやらせてほしいというのは選手のエゴ」との声が出てきていると聞いた。

 ほら、選手も中止を受け入れようとしてるじゃん、と言いたいわけではない。新型コロナウイルス感染拡大によって、ありとあらゆる生活が揺さぶられ、多くの人が仕事を失い、この先への不安を強く持っているそんな時になぜ、東京五輪の開催ばかりを優先するのか、というシンプルな疑問が放置される。その疑問に明確に応えてくれる人は、推し進める人たちの中には見当たらない。オレらは、やると言ったらやるんだ、に酔っている。第三波がやってきた現在、菅義偉首相は「強い警戒感で注視」などと述べる一方で、五輪については「新型コロナウイルスに打ち勝った証」として開催したいとする。「これからオレが倒してきますんで、後でパーティをしようよ!」ですらなく、「大変な状況ですね。じっと見ていますよ。夏には楽しみましょうね!」なのである。それを「打ち勝つ」と表現している。これは、ただの理不尽だ。


IOCのバッハ会長「中止については議論しない」

 今、メディアで、東京五輪開催への賛成・反対が問われる際、コロナ感染拡大が止まらない中で開催するべきなのかに議論が絞られているが、この絞り方では、これまでの経緯がすっぽ抜ける。議論すべきは、コロナだけではない。東京は安全」(竹田恒和JOC元会長)などと被災地を踏み潰しておきながら復興五輪を名乗ってきたこと。シンガポールのペーパーカンパニーへの賄賂疑惑を放置していること。暑さ対策やボランティアの体制不備などの問題が解決されているとはいえないこと。従来の想定から膨らみ続ける開催費について根本的な検証が行われていないこと。などなど、理由はいくつもある。「コロナだけど、五輪できるの?」を議論する前に、いつの間にか外されている議題の存在を再度戻して問う必要があるし、それらを並べれば、答えはすぐに出ると思う。

 今週頭から、IOCのバッハ会長が来日している。来日前から「中止については議論しない」と明言しており、多くのスポンサーが契約延長に慎重になっているなかで、開催の意思を改めて強調することを目的としている。彼が来日する前、政府+東京都+組織委員会で会議が開かれ、外国人の観客について、原則として14日間の待機を免除する方向で進めることとなった。その理由を、組織委員会の武藤事務総長は「外国に住むチケット保有者は数も多く、2週間の隔離や公共交通機関の制限は現実的でない」としたのだが、現実的ではないのはどちらだろう


スーパーに集まる主婦たち、とは

 IOC委員で国際体操連盟会長の渡辺守成氏が日刊スポーツのインタビューに応じ、「今の東京五輪は丘の上の豪邸。そこが火の車になろうが、コロナでどうしようが、全く国民は興味がない。そうではなく、みんな一緒に長屋に住んでいて火事になれば、みんなで助ける。そういう大会にならないと支持は得られない」と答えている。意味が不明だが、それでも懸命に頭を使って理解しようと試みれば、「今、五輪ができるかどうかさえわからない大変な状態だけど、この窮状を、スポーツ関係者だけで分かち合うのではなく、国全体の動きにすればいい、みんなで大変な思いをすれば、みんなで助けようとするだろう」ってことなのか。先に述べたように、ここで、私たちの疑問が「コロナ禍だけど、五輪できるの?」だけになってしまうと、うっかり渡辺氏の問いかけに乗っかってしまう。「できる」「できない」ではなく、「それどころではない」に差し戻す必要がある。

 渡辺氏は続ける。「組織委の情報公開や広報戦略もまだまだだ。情報をどんどん出して、スーパーに集まる主婦たちが『五輪応援してるわ』というぐらいにならないといけない」。うまいこと広報すれば、主婦の支持を得られると考えているらしい。主婦を舐めている。空気の管理、つまり、機運の醸成だけでどうにかなると思っている。あちこちで店が潰れ、仕事がなくなり、そして、そうならないようになんとか踏ん張っている人・組織ばかりだ。これだけの嘘と疑惑と浪費が重なっている状態を見て、主婦の「応援してるわ」を易々と獲得できるはずがない。


「国民の皆さんとアスリートが同じ気持ちでなければ」

 「開催しなければ日本の経済がガタガタになる」とも渡辺氏は言う。五輪推進派の主張には、この手のものが多い。でもこれって、「開催しなければ、五輪によって得られる利益がなくなり、日本の経済に影響を与えてしまう」という意味であって、それ自体は正しい。しかし、コロナによってすでにガタガタになっている経済状況のなか、五輪を何よりも優先する必要はない。何かを優先すれば、何かが優先されなくなる。優先するのは五輪ではないだろう。

 先日、日本で行われた体操の国際大会の閉会式で、内村航平選手が「どうか、(五輪が)できないというふうに思わないでほしい」「どうやったらできるのか皆さんと考え、どうにかできる方向に変えてほしい」「国民の皆さんとアスリートが同じ気持ちでなければ大会はできない。やり方は必ずある」と述べた。アスリートが「やりたい」と思う気持ちは理解できる。しかし、なぜ、「国民の皆さん」まで、「同じ気持ち」にならなければならないのだろう


それどころではないんです

 来日したバッハ会長は、安倍晋三前首相にIOCの功労章「オリンピック・オーダー」を贈った。2013年のIOC総会のスピーチで「IOC委員を納得させて、準備状況に対する疑問の払拭について大きな役割を果たした」(NHKニュース)ことが受賞理由の一つだという。そのスピーチとは、例の「アンダーコントロール」発言ある。ウソのスピーチを功績と褒め称えたのである。どうしても五輪をやりたい人たちが、獰猛な勢いで、なんとかやり遂げようと開き直っている。無理やり気持ちを高めようとしてくる。コロナ禍で、ありとあらゆる不安を抱えながら生きている現在、たとえ個々の力は弱くても、それどころではないんです、と冷静に追い払わなければいけない。
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