Activated Sludge ブログ ~日々読学~

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●風見鶏氏・中曽根康弘元首相《左派労働運動(総評)をつぶし、社会党をつぶすことまで意図していたとあけすけに…》

2020年05月31日 00時00分48秒 | Weblog


昨年2019年12月のレイバーネットの記事【「国労つぶし総評つぶし社会党をつぶした」~中曽根元首相の本当の「功績」】(http://www.labornetjp.org/news/2019/1206nakasone)。

 《メディアはかれの「功績」を称えている。しかしかれが何をやったのか?…「…国労は崩壊した。そしたら総評が崩壊し、社会党が崩壊した。それは一念でやった」と。当時の左派労働運動(総評)をつぶし、社会党をつぶすことまで意図していたとあけすけに語っている》。

   『●死者に鞭打つ…風見鶏氏・中曽根康弘元首相《日本の戦後
     民主主義政治を歪めた張本人》が《ダンマリを貫いた》問題とは?

 何か《功》があり、そればかりが死者に手向けられているようですが…。《卑(ミーン)》な元総理の《罪》ばかりが思い出される。特に、国鉄の解体である。《中曾根(中曽根)内閣時代の国鉄分割・民営化の際、国労組合員に対して行われたとんでもない横暴・差別》。《分割・民営化の過程で200人以上の国鉄労働者が自死に追いやられた》。
 《当時の左派労働運動(総評)をつぶし、社会党をつぶすことまで意図していたとあけすけに語ってい》た。

   『●Mr.風見鶏: 反原発をお前が言うか!?
    「さんざんっぱら原子力を推進してきたMr.風見鶏・中曽根
     (中曾根)氏が、久しぶりに本領発揮。しっかし、酷いね。
     甘い汁を吸いつつ、おそらく核兵器への転用までを視野に
     入れていたダーティーなタカ派のくせに。あたかも小泉純一郎氏や
     竹中平蔵センセが郵政民営化反対を叫ぶほどの変節・風見鶏ぶりで、
     御笑いだ。FUKUSIMAの一因は正力氏やMr.風見鶏氏にある、
     というのは言い過ぎであろうか。」

   『●国労組合員恣意的不採用問題、一歩前進
    「中曾根(中曽根)内閣時代の国鉄分割・民営化の際、国労組合員に
     対して行われたとんでもない横暴・差別。…20年以上経過し、
     漸く一歩前進でしょうか。どこまで実行性があるのかは疑問ですが…。
     「鎌田慧著『国鉄処分 ~JRの内幕~』(講談社文庫)」…城山三郎
     『粗にして野だが卑ではない――石田禮助の生涯』」

 竹信三恵子さん曰く、《声をあげない限りどんどんやられていく。…ニーメラーの警告を無視してはいけない》。

   『●「新社会人の憂鬱」 『週刊金曜日』
     (2014年4月4日、986号)についてのつぶやき
    「渡辺仁氏【岡山県労働委がセブンに裁定 オーナーは労働者だ】、
     「フランチャイズ契約で縛られた加盟店経営者は独立の
     事業者ではなく、労働組合法上の団体交渉権を持った
     「労働者だとの画期的な判断」。鈴木帝国の落日か?
     (http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/6c8bd66d6e20d032e6d5338be9962ef9)」

   『●竹信三恵子さん《声をあげない限りどんどんやられていく。
             …ニーメラーの警告を無視してはいけない》
    《関西地区生コンに対する弾圧とは、2017年末に関西生コン支部が
     行ったストライキ決行を契機に、現在まで、のべ58名の逮捕者
     出ている事件を指す。労働組合としての当然の行為である
     ストライキに対し、警察、裁判所、検察が一体となった弾圧行為
     行われている。これに抗するため「関西地区生コンを支援する会」が
     作られた。会の目的は「不当な長期勾留と接見禁止の即時中止及び保釈
     「組合つぶしを目的とした、憲法28条・労働組合法1条2項に
     違反する不当捜査の即刻中止」「公正かつ迅速な裁判による
     無罪判決の追求」だ》

 特に、JR北海道で何が起こったか?

   『●JR: 安全は二の次?、民営化の果てに…
              ~石田禮助氏は何を想う?~
   『●「露骨な企業優遇、労働者いじめ」
     『週刊金曜日』(10月11日、963号)についてのつぶやき
    「取材班【「存亡の危機」に立たされたJR北海道 国鉄
     分割・民営化」のツケが回ってきた】、「国労破壊攻撃の爪あと」。
     民営化したら夢のような鉄道会社になるんじゃなかったのか?
     (http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/6120fbd19dc066e60812ba5c8085a2f7)」

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http://www.labornetjp.org/news/2019/1206nakasone

「国労つぶし総評つぶし社会党をつぶした」〜中曽根元首相の本当の「功績」

 中曽根元首相が11月29日、101歳で亡くなった。メディアはかれの「功績」を称えている。しかしかれが何をやったのか? その証拠映像がNHKテレビに残っている。2005年11月20日、中曽根氏はNHKテレビインタビュー(写真)でこう語っている。「国労は総評の中心だから、いずれこれを崩壊させなくてはならない。それで総理大臣になったときに国鉄の民有化を真剣にやった。みなさんのおかげで出来た民有化に一番反対していた国労は崩壊した。そしたら総評が崩壊し、社会党が崩壊した。それは一念でやった」と。当時の左派労働運動(総評)をつぶし、社会党をつぶすことまで意図していたとあけすけに語っている

     (*分割・民営化の過程で200人以上の国鉄労働者が
       自死に追いやられた)

 総理大臣が労組法が禁じる「不当労働行為」という犯罪を堂々とやったのだ。「国家的不当労働行為」といわれた分割・民営化で1047人の国鉄労働者が解雇された。それから23年のたたかいを経て争議は「和解」に終わったが、その人たちの中曽根に対する怒りは沈殿している。分割・民営化は労働者だけでなく、同時に地方を切り捨てるものだったローカル線がずたずたにされた北海道ではとくにその被害は大きい。「戦後政治の総決算」を掲げ「新しい憲法を安置する」と語った中曽根元首相、その路線を引き継いでいるのが安倍首相である。そのことを忘れてはならない。(M)


↓以下は、レイバーネットの黒鉄好氏(北海道在住)が中曽根氏の死に関連して二人の元国労闘争団員にインタビューしたものである。


<元国労稚内闘争団・田中博さん(北見市)のコメント>

 その場限りのウソ、言い訳、ごまかしの「小粒政治家」ばかりになる中で、中曽根は、本気の信念をもって日本に初めて新自由主義を導入した。それに対して、私たちは政治的なことは何も考えず、日々を淡々と生きることに費やしていた部分もある。もっと政治について考えて日々を生きなければならないということを反面教師的に教えてくれた。その意味では敵方だった自分から見ても「大した奴」だ、と思っている。だが、国鉄分割民営化で北海道のローカル線はずたずたになった。中曽根元首相の功績と思っている人たちは、北海道のこの現実を見てほしい。


<元国労函館闘争団・佐々木勉さん(写真/長万部町)のコメント>

 中曽根の死についてコメントすることはないし、したくもない。北海道新幹線以外はすべてJRから切り捨て、民間企業か地元自治体でやれというのが国の方針。かれらは分割民営化の延長線上に(廃線を)位置づけ、意識的にやってきている。だから国鉄闘争の延長戦として闘うことが必要だし、闘う主体を作らなければならない


*黒鉄好氏の感想

 田中博さんの中曽根評については、本気で言っているわけではない(=半分皮肉)と理解。お二方とも過去、ご自身が受けたことについては「今さら人前で話すのも」と気が引けている感じだった。だが、現在進行形のローカル線問題については前向きに考えていた。


参考映像(中曽根発言あり)
DVD『国鉄改革の真相』(ビデオプレス・18分)


Last modified on 2019-12-06 12:00:11
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●「新社会人の憂鬱」 『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号)についてのつぶやき

2014年04月10日 00時00分38秒 | Weblog


週刊金曜日』(2014年4月4日、986号)について、最近のつぶやきから、AS@ActSludge。

 今週のブログ主のお薦めは、小石勝朗氏【これ以上の拘置は、「正義に反する」 再審決定で、袴田さん釈放!!】と林博史氏【『産経新聞』のキャンペーンに反論する 「河野談話見直し」の策動を許してはならない】。

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※冒頭のオマケ①: 【『週刊金曜日』編集委員のご紹介/雨宮処凛(あまみや かりん)】(http://www.kinyobi.co.jp/intro/intro_amamiya.php) 「今のこの国では、大切なことが隠され、日々「知らないこと」「知らされていないこと」の怖さを痛感します。そんな中、『週刊金曜日』の取り組みを通して、みなさまとともに様々な事実を突き付けながら「これでいいのか?と世に問う、そんなことができたらと思っています。」

■①『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / ようやく到着。「新社会人の憂鬱」。小石勝朗氏【これ以上の拘置は、「正義に反する」 再審決定で、袴田さん釈放!!】、「弁護団が「よくここまで踏み込んだ」と驚くほど画期的な内容だった」。捏造袴田事件(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/049357a4c458aa9a0094191c2b363e56

■②『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 渡辺仁氏【岡山県労働委がセブンに裁定 オーナーは労働者だ】、「フランチャイズ契約で縛られた加盟店経営者は独立の事業者ではなく、労働組合法上の団体交渉権を持った「労働者だとの画期的な判断」。鈴木帝国の落日か?(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/6c8bd66d6e20d032e6d5338be9962ef9

■③『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 落合恵子さん【風速計/怒】、「そもそも消費税アップは「社会保障と税の一体改革」と喧伝・・「年金、医療、介護の社会保障給付と少子化に対処するための施策に要する経費充てる」は、どこに消えた?」。自公投票者の無関心・無自覚の責任http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/0d77c2ede488f4ed9364bb261496b4b0

■④『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 【黒島美奈子の政治時評/国が育鵬社教科書をごり押し 「教育の政治的利用」の姿を明確にした八重山教科書問題】、「不正まがいで採択された教科書を、国がここまで強力に押し付けることに違和感を・・」。「ト」な教科書を使わされる子供が哀れhttp://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/d92dfb2834d9b1c533560c511be9c3af

■⑤『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 【黒島美奈子の政治時評/国が育鵬社教科書をごり押し 「教育の政治的利用」の姿を明確にした八重山教科書問題】、「文科省の役人でさえ「政権交代の後、より強い指導を行うようになったのは事実」」。この自公政権のトンデモ度(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/5efcef79061544849f5460eccd29fab3

■⑥『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 林博史氏【『産経新聞』のキャンペーンに反論する 「河野談話見直し」の策動を許してはならない】、「『産経』を中心に・・安倍首相は見直しはしないと国会で発言したが、自民党や「維新」の談話攻撃もやむ気配はない」。ニセ右翼・ニセ保守(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/c9f38caddd98084b42de0513c704945a

■⑦『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 横田一さん【「みんな」と「維新」の存在感急低下の一方で 集団的自衛権行使めぐり連立の意味を問われる公明党】、「溝が横たわる自公」 平和を愛するらしい公明党・学会さん、大きな疑問だ。もはやアクセルの役割のみ(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/74678d48c6b9380cad2dcf2095b4e197

■⑧『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / まさのあつこ氏【報道されない国際会議の議論の中身 放射線の影響を否定できない福島の甲状腺がん増加】、「確定、または疑い・・子は75人。事故前、100万人に一人・・36万人中・・27万人しか検査していない段階でだ」。「比例する」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/2fd5905ed20d114b50d41a0395d0773b

■⑨『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 藤倉善郎氏【研修の場で繰り広げられる異常な興奮 社会人が断れない勧誘“自己啓発セミナー”】、「マルチ商法や詐欺まがいの自己啓発セミナーが新たに目をつけた市場の一つが企業研修」「泣いたり踊ったりけなしあったり」・・・う~ん、気持ち悪い

■⑩『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 木下昌明さん(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/3aa14f857a33a8df6740e40de8ab7b59)【大西巨人さんを悼む ―― 『神聖喜劇』連載の頃】、「・・が掲載された当時、編集者を務め、その後も半世紀にわたって親交のあった木下昌明さんに・・」

■⑪『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 宇都宮健児さん【黒風白雨27/集団的自衛権行使は9条改憲である】、「わが国を米国とともに戦争ができる国しようとしている・・憲法は、国の基本的な在り方を定める最高法規」。壊憲であり、「平和憲法が泣いているhttp://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/237410d1ba170d66ecd8447f01eae975

■⑫『週刊金曜日』(2014年4月4日、986号) / 山口正紀さん【再審請求棄却も詳しい報道を 北陵クリニック事件】、「仙台地裁(河村俊哉裁判長)は・・守さんの再審請求を棄却する決定を行った」。「「耐え難いほど正義に反する状況」を認めれない仙台地裁 ~筋弛緩剤混入事件守大助さん~」(http://blog.goo.ne.jp/activated-sludge/e/e3abc3c0caba32e215a8668db737231e
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●「言い過ぎを批判された政治家が自己弁護する、あまり効き目のない常套手段」

2013年08月23日 00時00分12秒 | Weblog


asahi.comの記事【麻生太郎氏が研究したい「手口」の中身】(http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013080900006.html?ref=comtop_fbox_d2)。

 舌禍の絶えない麻生太郎元総理。

   『●麻生太郎氏「だれも気づかないでかわった。あの手口に学んだらどうかね」
   『●炭坑王一族の末裔による凄まじいまでの暴言・差別意識

 橋下徹元大阪「ト」知事石原慎太郎元東京「ト」知事も同様ですね。

   『●勝てば非侵略国で、負ければ侵略国?
   『●思い込みの激しい老人: 大阪元〝ト〟知事に「歴史に関しての無知」だってさ!
   『●「証拠が出てくれば反省しなければならない」のだから、反省してください
   『●無節操の図: 橋下元大阪〝ト〟知事も十分に〝ト〟、そして自民党も同じ穴のムジナ
   『●「誤解」だったの?? 弁護士らしからぬ言動で、身から出た錆

 そんな際、彼らの使うのが、「「誤解された」「コンテクストを無視して伝えられた」という」「「言い過ぎを批判された政治家が自己弁護する、あまり効き目のない常套手段」」のようです。

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http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013080900006.html?ref=comtop_fbox_d2

麻生太郎氏が研究したい「手口の中身
2013年08月10日

 麻生太郎副首相兼財務相のナチス発言が波紋を広げている。ドイツにもすぐ伝わった。

 元来は保守系オピニオン・リーダーの『フランクフルター・アルゲマイネ』紙も、「全部『誤解』だったらしいと皮肉たっぷりの見出し。「誤解された」「コンテクストを無視して伝えられた」というのは、言い過ぎを批判された政治家が自己弁護するあまり効き目のない常套手段だ。

 おまけに同紙は、自民党憲法草案に基本的人権を変更不能とする現行憲法97条がそっくり「代替抜きに消されている」ことも挙げて、「熱烈なナショナリスト」の麻生と安倍がめざすのは、「人権ではなく、権威主義国家なのだ」と断言している。出先の日本国外交官たちは、およばれの席で言い訳に苦労することまちがいない。

 ところで、財務相は財務が専門らしいから歴史に弱いのも無理ないとはいえ、ヒトラーの政権獲得とワイマール憲法の空文化のプロセスに関する彼の見解には重大な誤りがある。

 第一は、「ヒトラーは民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、出てきた。ドイツ国民はヒトラーを選んだ」というくだりである。

 事情はまったく異なる。ワイマール憲法と民主主義の打倒を掲げるヒトラーがこの憲法に忠誠を誓う茶番の儀式を経て首相になったのは、1933年1月30日の昼前だ。

 その頃ドイツは、繰り返し国会解散と総選挙が続いた状況で、もはや議会制民主主義の体をなしていなかった。

 左右両派の激突はひどい状態で、議会も怒号の嵐で演説は聞き取れないうえに、不信任案の連発で機能停止だった。すでに1930年3月、世界恐慌の荒波のなかで、中間諸政党からなる、それまで比較的安定していた連立政権が崩壊し、憲法上相当な力を持つ上に、国民に人気のあった第一次大戦の英雄ヒンデンブルク大統領の指名と非常措置によって内閣が作られる「大統領制内閣」だった。

 1932年11月の選挙でナチは退潮し、33パーセントの支持を得たにすぎなかった。それでもナチこそ安定をもたらすと考えて、ヒトラーの首相指名を大統領に勧告する人々もいたが、ヒンデンブルク将軍は、「ボヘミアの上等兵が首相とはふとどき千万」と相手にしなかった。元来オーストリア人で、第一次世界大戦の伍長にすぎないあんな奴と将軍の俺とは格が違うということだろう。事態の収拾がつかなくなった1月の末にしぶしぶとヒトラーを指名したにすぎない。麻生氏の言うように「きちんとした議会で」「選挙で選ばれた」のではない。大統領指名である。

 ヒトラーはそれ以前から、合法的な権力奪取政策に転じていたが、それはカムフラージュで、はじめからワイマール体制の転覆を狙っていたことは誰の目にもあきらかだった。ルール地方のドイツ重工業の大物たちと密会し、さらにはシャンパンとウィスキーの卸業者で、貴族の称号を遠縁から買った、後のナチス政権の外相フォン・リッベントロップ邸でも軍や政府の要人と秘密の会合を重ね、彼らの支持を取り付け、自分を嫌うヒンデンブルクへの圧力を強めていった。

 首相就任にあたって持ち出した条件にしたがって、3月にもう一度総選挙が行われた。そして44パーセント近くを獲得し、勢力を強めたことは事実である。

 しかし、これはもはや「きちんとした」選挙とは言えなかった。それまでに共産党系代議士は拘束され、社民党も機関誌の発刊を止められ、さらには2月の、真相はいまだに不明な国会議事堂炎上事件を受けて、ワイマール憲法の基本権が「当分の間」停止されていた。

 3月の選挙は、今でも世界各地で行われている一方的な選挙と同じだった。「ヒトラーは民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って出てきた」というのがいかにまちがいか、あきらかだろう。形式的合法性と実質的な民主主義を取り違えられては困る

 第二の間違いは、「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった」という部分である。このあとに「あの手口を学んだらどうか」と来る。この言い方に歴史修正主義者と改憲主義者に溢れる会場も笑ったが、これは失笑ではなく、同意の笑いだったようだ。

 3月の選挙の強引な「勝利」ののちに、全権委任法なるものが3月23日に議会をとおった。これ以降、議会は無意味な存在となり、条約の批准も法律の承認も必要なくなり、首相、つまり総統の承認と官報掲載だけでいっさいの法が可能となった。ユダヤ人追放に関する諸法や独ソ不可侵条約もすべてヒトラーとその周辺の一存となった。

 ところでこの全権委任法が議会による民主的な手続きで(「誰も気づかないで」「静かに」)ワイマール憲法を事実上無効にした、と一般にも(ドイツですらときに)思われているようだが、これも間違いである

 まずはこの議案上程の大分前に、ほとんどが逮捕されている共産党議員の議席を存在しないことに決めてしまった。これによって院の構成人数が81議席も減らされた。また社民党の一部などナチスに強く抵抗し、無断欠席した議員を60日間登院禁止にした上で、欠席している彼らも実際には「出席」とみなす、東電の株主総会でも使わないトリックを議長は使った

 これによって、ワイマール憲法改正に必要な「法的構成員」の3分の2の出席議員の3分の2の賛成というハードルを越える手口を使ったのだ。このあたりは、『自由と統一への長い道』(昭和堂)というヴィンクラーの有名な本に詳しく書いてある。

 麻生氏が言う「手口」はこのあたりかもしれない。あるいはそれ以前のナチ党の一方的に相手を叩くプロパガンダ戦術のことかもしれない。

 「第一次世界大戦は負けたのではない。国内で革命を起こした連中による裏切りのせいだ」。「経済混乱はヴェルサイユ体制のせいだ」。そして、「ユダヤ人のせいだ」。こうした議論を党の弁論家養成学校で学び、鏡の前でシャドー・トレーニングを重ねた弁士たちが全国に散り、何千、何万という集会を組織して煽動を続けた効果は抜群だった。暴力的威嚇もひっきりなしにされた。反戦映画『西部戦線異常なし』の上演をゲッベルスはかんしゃく玉、悪臭弾、そしてネズミの大群を使って阻止した。このあたりは現代政治史の第一人者ブラッハーの本に詳しい(『ドイツの独裁――ナチズムの生成・構造・帰結 I・II』岩波書店)

 「誰も気がつかないうちに」ではないのだ。唯一、正々堂々と反対した社民党党首のオットー・ヴェルスはヒトラーに面と向かって「我々は目下のところ貴下が権力を握っているという政治的事実を知っている。しかし、国民の法意識もまたひとつの政治的な力であって、我々はこの正義感に訴えることをやめるわけにはいかない」と演説したが、正面突破を狙うナチスには、糠に釘、蛙の面に小便だった。

 ヴァイマール憲法はたしかに進んだ憲法だった。私有財産(資本主義的企業)の社会的義務を説き、労働者の団結権や団体交渉権を確立していた。社会権にも配慮されており、戦後西ドイツの福祉国家政策の前触れともなっている。選挙制度も比例代表制で得票率と議会の議席数とが比例した。

 しかし、デモクラシーを守るための制度と勇気が足りなかった。たとえば、急進政党の禁止は可能だったし、一時は突撃隊の禁止なども試みられたが、徹底させる勇気がなかった。国防軍の指揮権など大統領にかなり強い権限が集められたのは、第一次世界大戦後の混乱収集のためだったが、末期には民主主義の空洞化を引き起こし、裏目に出た。

 だが、もっと重要な側面は、ヴァイマール末期に、国家の正当性への信頼がナチスによって巧みに堀り崩されていったことである。マックス・ヴェーバーは、国民による「正当性への信頼」こそが政治的支配の最も重要な資源であると言っているが、まさにその正当性の喪失である。

 だがこれには長い前史がある。大地主、重工業の幹部、軍の将校団、そして多くの大学教授など、第一次大戦以前の旧ドイツ帝国の上層部はワイマール民主主義を極度に嫌悪した。ハイデガーの哲学もその徴候である。「『旧エリート』のもつ大きな政治力は、長い前史を持つ社会的事実であった。民主主義国家の信頼性を浸食したことも、その前史に含まれる」と先のヴィンクラー教授は書いている。

 それに対して、戦後のドイツ基本法がヴァイマールの反省にもとづいていることはよく言われるとおりだ。だが、成立の形式的正当性は日本国憲法より怪しい。ワイマール憲法と違って、負けたドイツ国民は憲法制定に関与できなかった。南ドイツの風光明媚な湖畔に「合宿」した憲法制定会議は各州の代表者の集まりで、制定作業には西側戦勝国がたえず干渉した。

 しかし、そうした形式的問題をいまさら取り上げる者はいない。戦後西ドイツの「戦うデモクラシー」と「危険ははじめのうちにつぶせ」という合い言葉の中で基本権を定着させていくプロセスから憲法は実質的な正当性を受け取って、国民に支持されている。

 逆に、ワイマール憲法は、成立の形式的正当性は非の打ち所がなかったが、民主主義への不信が渦巻く国民各層の中で常にその正当性を、つまり、実質的正当性を問題にされ、掘り崩されていった。

 この点はわれわれもよく考えた方がいい。日本では選挙制度そのものが正当性を欠き、国会は、形式的合法性だけの手段に成り下がっている。自民党も民主党も野党のときは「建設的協力」をいっさいしない。その手段や現れかたが異なるとはいえ、正当性が掘り崩されている状況は同じだ。実はその最も明白な徴候が麻生氏の発言である。

 麻生氏の発言で本当に重要なことは、ヴァイマール末期の歴史についての正確さが欠如していることではない。そんなことは元オリンピック選手の財務大臣に要求しても無理だろう。重要なことは、・・・・・・。
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