飯豊連峰。その“たおやか”な姿とは違って縦走するにはなかなかタフな山である。主稜までの急登に加え、切れ落ちた縦走路でのクタクタ・ヒヤヒヤ感は、ちょっとした山経験がないと入れない山かも知れない。北ア(槍、剱など)や南ア(北岳、塩見など)にしても、一般ルートではまだヒヤヒヤしたことはない。でもこの飯豊は2ヶ所でヒヤヒヤ、一番怖い剣ヶ峰の岩稜帯は高所恐怖症の身には堪えた。
そして目立ったのは熊の糞、飯豊は熊の天国かも知れない。登山道の至る所に黒い塊があった。特に2日目(梅花皮小屋~切合小屋)、10個くらいは見つけた。登山道だけでもこれだけって、と思うと笹薮の中なんてのはドンだけって想像する。でもひょっとしたら、登山道に在るのは人間様に対してここは俺の縄張りだって目立つように主張しているのかも知れない。
シルバーウイーク初日、混雑する東京駅の山形新幹線ホーム。半年以上前から前夜発の深夜バスで計画していたが、コロナでまさかの運休。いきなり面食らったが、代替案として新幹線の半額キャンペーンを利用した。
まだ見ぬ飯豊の稜線。期待に胸を膨らませながら車中で乾杯。なんか贅沢な山旅っすね~。
在来線を乗り継ぎ、飯豊の玄関口 小国駅に到着。ここから初日の宿泊施設 梅花皮荘までのバスを2時間待ち。バス停でザックを背負った一人の女性(Sさん)と出会う。「旅は道連れ」(YYさん)ですねと、ご一緒する事になった。
初日の宿、梅花皮荘にて温泉と地元料理(芋煮とイワナ)に舌鼓をうち、翌日からのハードな縦走に備えて英気を養った。
【1日目(9/20)】梅花皮荘5:00~7:55湯沢峰8:05~13:40北股岳13:50~14:10梅花皮小屋(泊)
飯豊山荘(登山口)まで1時間(5 km)の道のり。
6:06 飯豊山荘 梶川尾根登山口 ここから標高差約1,600m 9時間の行程だ。気合を入れて出発。
登山口からいきなりの急登が続く。湯沢峰(1,021m)手前までの平均斜度は30度近い。
フゥ~キツイ
根元上から大きく曲がったブナの樹、豪雪に耐えてきたんだ。途中、バス停で出会ったSさんと合流。5人パーティになる。トレランやウルトラマラソンまでこなすというSさん。なかなかの強者とみた。
滝見場展望台(1,145m)からは樹林越しに雪渓の消えた石転び沢が見える(最大斜度40度 落石多発)。Aさんは、次回チャレンジすると意気込んでます。
梶川峰の樹林帯を抜けて主稜線にでた。
ガスは晴れそうもない。門内小屋廻りも白い。
門内小屋の管理人さんが語ってくれた。飯豊は北アルプスと差別化するためにありのままの自然を残しているんだ。だからリボンやマーキング等の道標類がほとんどない。世界遺産にする動きもあったが断固反対したそう。観光地化するから。まさに山形自慢の山なのだろう。
北股岳山頂 う~、まっ白で何も見えない…
14:10 本日の宿泊地 梅花皮小屋に到着。 予定より早めに着いた。この日初めて、稜線が姿を現してくれて。明日は何とか晴れてくれと願うばかり。小屋では道中知り合ったSさんや隣の方たちとの会話も弾み、楽しいひと時。避難小屋ならではの楽しさを味わった。
メンバー3人とSさんは小屋泊。私はテント泊(せっかく持ってきたので…)。テント場は風の通り道。一晩中テントにふきつける風に悩まされた。
【2日目(9/21)】 梅花皮小屋6:40~10:15御西小屋11:10~12:25飯豊山12:50~15:00切合小屋(泊)
2日目もガスの中、6:40出発。台風並みの風(風速15m前後か)で飛ばされないよう緊張しながら、左に切れ落ちた稜線が続く。梅花皮小屋(1,852m)を出発して45分で烏帽子岳(2,017.8m)山頂。強風下で視界もない。
強風でガスが飛ばされると、一瞬前方が明るくなるが、またすぐガスがかかるの繰り返し。
ミヤマキンポウゲ(黄)やアザミ(紫)にハクサンボウフウ?(白)などのお花畑に囲まれて歩くも、気が付いていないメンバー。
天狗の庭もこの通り。晴れてりゃ最高の景色のはず。いいかげん何とかならんのかなあ、この天気。メンバーから愚痴が出始める。
10時過ぎ、御西小屋手前 だんだんとガスが取れてきた。頼む!このまま晴れてくれ。
巨大な稜線がその全貌を現し始めた。飯豊本山も見えてきた!
振り返ると歩いて来た烏帽子岳(奥)に天狗岳(手前)がある。空が青い。感動が込み上げてくる。
メンバーの顔にも笑顔が戻ってきた。これが見たかったんだよなあ。
御西小屋10:20着、その右には大日岳(2,128m)。
2,000mちょいの山とは思えない重厚な大日岳(ズームアップ)@御西小屋
御西小屋でのお茶タイムを経て、飯豊本山方面に向かう。
駒形山(手前)と飯豊山(中央)。
駒形山からは、あと十数分で飯豊本山だ。
12:25 今回の本丸 飯豊本山登頂です。昨日からの悪天候がウソのように晴れ渡ってくれました。メンバー皆でグータッチです!
御西岳の先には大日岳@飯豊本山
これから向かう御秘所。 どこまでも雄大な稜線が続く。
御秘所。飯豊詣の当時の地名が今も残る。
御秘所の岩稜帯を通過。慎重に行けば問題ない。
15:00 本日の宿泊地、切合小屋に到着。私は今日もここで幕営。メンバー3人は小屋泊。
今日は風も無く穏やかな夜を迎えられた。
【3日目(9/22)】 切合小屋6:00~7:20三国小屋7:30~11:00御沢11:05~11:15御沢野営場
切合小屋から下ると、向こうに種蒔山~三国岳。
飯豊がこんなに岩稜帯の山だったとは思わなかった。
7:20 三国小屋 到着
この先は剣が峰の岩稜帯、ストックは収納するよう注意喚起あり。ナイフリッジ(やや広め)がはじまる。
雨に降られずホント良かった!
剣ヶ峰をようやく通過、ほっとする。
地蔵山分岐から横峯へ。
この時期、リンドウの紫が濃い。
11:15 御沢小屋跡へ下山。 樹齢400年のご神木。
御沢野営場まで最後の樹林帯歩き。名残惜しい飯豊連峰縦走も、あと少しで終わり。
御沢野営場では予約したタクシーが待っていてくれる。そのまま飯豊の湯に立ち寄り、汗を流してビールで乾杯!これは至福の瞬間だった。
総歩行距離:35.7 km
メンバー: 山t(L、記)、河(記)、會(SL)、山y