アルパインクラブ モルゲンロート

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裏妙義(2015.11.21)

2015-11-25 07:12:57 | 個人山行(2015~2022年度)



 登り口では 木苺の棘に悩まされながら進むも踏み跡もなくなったので間違いに気付き引き返したり、途中 サルノコシカケを見つけたりして未だ在る紅葉にも晩秋の自然を愛でたりしていたが、岩峰群に入ると ひとたりとも気の抜けぬ裏妙義の山行だった。





 暦の上ではもう立冬も過ぎていて、秋はそろそろ終わりに近づいている。登山口から風穴尾根の頭まではまだ残っている紅葉に見とれると足が止まるし、落葉で埋もれたルートを踏んで行くザクザクと云う音も感じたりして、のんびりとした秋のハイキングですね、とか云いながらまだ心の余裕もある。そして、歩きながら昨夜のラジオ深夜便で流れていた ちあきなおみ の “紅い花” を口ずさんでいた。
 ところが風穴尾根の頭から少し進み、目の前にはあのジャンダルムの様な烏帽子岩が突然 にょきっと 現れると、そんなハイキング気分は一遍に吹っ飛んだ。そして、急な下りは、これから始まる難ルートに踏み込んだと云う思いが体を固くする。そんな岩峰下をトラバースして行くことになるが、踏み出す道の巾は靴を置いて歩いて行くには充分のスペースがあるので、右側の切れ落ちた崖を見なければ何も恐れることはない。





赤岩下のトラバースも、鎖を手にして桟道をしっかりと歩いて行く。そして、赤岩から丁須の頭まで気を抜く処はなく、自然と体に力が入っている。



 赤岩を過ぎて丁須の頭の手前までに20mの鎖のチムニーがある。リーダーにザイルで確保して貰い一人づつ登る。最初の取り付きから十数m辺りまでは容易に登れるが、その先2~3mが曲者。狭まった両壁に右足と左足を広げる様に踏ん張り、鎖を摑んだ両手に思い切り力を込め体を引き上げて、左の到達点へしがみ付く。ここは恐いと考える時間もなく、ただただ登り切ることだけを考えていた。





ここから丁須の頭までは近いが 切れ落ちた岩稜だけに、ソロリソロリと行くことになり、時間を掛けて中間峰を経て丁須の頭の肩まで登る。登り切ってふと右下を見ると数十m以上の垂直の崖、途端にもう腰が引けてしまって立ち上がれない。Aさんが、(そこじゃ通行の邪魔になるから)こっちに来てと云うが行けない。(Aさん、分かっているが行けないんですよ。)で、這い蹲ったまま崖から離れた丁須岩の基部近くまで行き、邪魔にならない様に漸く立ち上がる。立ち上がった目の前には丁須岩に取り付くヘルメット姿の人達が並んでいる。



 ここからの下山ルートは、それなりの鎖や急な下りもあったが、身の竦む恐さや肌が一瞬でキーンと締まるほどのこともなく、途中の岩峰の凄さや風穴のある山群と云った「ワイルドな自然を満喫」しながら登山口に降り立ち、ほっ。無事に戻って来たんだ、と。

メンバー:荒、片、北、小、河(記)、田(L)