去年は黒だった文字が、今年は赤い“空木岳”
この連休、山での遭難事故が相次いでいる。天候も3日(火)夜半から4日(水)に掛けて、雨風が強く荒れ模様の天気のようだ。これでは、稜線上の強風下での幕営には大きなリスクあり。
2日(月)集合地の拝島駅前駐車場にて、計画などの変更を検討。宝剣~空木~南駒~池山尾根の当初計画から、悪天候でも大丈夫な避難小屋泊とし、天候にもよるが少なくとも空木岳には行きたい。そして、空木岳~南駒岳往復も選択肢に加え、取り敢えず初日は空木岳避難小屋泊を決める
このコース、去年10月の会山行と同じとなったが、雪の有る無しで全く環境は変わる。雪の空木も充分楽しい筈だ。でも雪山装備と共同装備でリュックは重く、出だしの池山ハイキングコースの緩い登りでさえも一歩一歩が太ももにズシリと堪えてくる。これがあと4時間ばかりの辛抱と思えば、まだ頑張れる。“ファイト”。
登り始めはこんな笹原も
Sさんが鳥の巣を発見、こんなに大きいのって鷹?
もう地獄? この階段 離れて見ると垂直の板壁、でも実際はご覧の通り
大地獄、小地獄の難所も、雪も無く登りでは余り気にならず。
宝剣から縦走予定だった、空木岳手前までの稜線
黒い尖がりの宝剣岳
ヨナ沢ノ頭から尾根上に出て来ると雪もあり、ルートも不確かとなり手こずる。2528ポイント手前の登りからは左手に南アルプスの眺望が目に入ってくる。
さてさて、ここまで来れば空木岳避難小屋分岐もすぐそこだし、ホッと一安心のつもりだったが、その分岐が見つからない。分岐と思しき個所を左に行くも灌木などに邪魔されて行き辛い。
池山尾根上部からの空木岳1
池山尾根上部からの空木岳2
そこで一旦、避難小屋の見える稜線上まで出て、小屋を目指して下ることに。
池山尾根より空木平に下る
7時過ぎに登山口の林道終点を発ち、避難小屋着は14時前と結構時間も掛かり、天気予報通り風も強くなり空木登頂は翌日に期待した初日だった。
午後7時頃か、小屋外で騒ぐ声に出てみると、帯状の雲が空木岳方面から池山尾根方面に向けて圏谷を跨ぐように空に掛っている。所謂、地震雲と呼ばれる雲、低気圧がもたらす異常現象なのか、明日の天候が気になる。
渦のない竜巻にも見える、地震雲
未明の2時頃くらいか、昨夜からの強風に加えてトタン屋根を打つ雨音にウトウトしている内、2時半頃突然の激しい雨音にもう一度目が覚める。
5時前、「水がーっ!」の声に皆一斉に目を覚ます。見ると避難小屋は床下浸水の状態。巨大なカール地形の空木平に降った雨や融水が川となって流れ込んでくる。側にある川は雪で覆われて行き場のない水流が窪地にある避難小屋にも流れ込んでいるのだ。床に置いてあった、アイゼンや靴を板床に持ち上げ避難したものの、水は一向に収まらなかったが、幸いなことに床上までの浸水とはならず。Iさんのゴムサンダルがプカプカ浮いているのが愛嬌か。
床下浸水、入口ドアの敷居の処、手前の山側から水が流れ込んで来る
水に囲まれた小屋外
7時過ぎに外の様子を確認すると、少し上の方からはまだガスで真っ白。でも、8時半頃には風も弱まり、見える限りは完全な青空となったので、空木岳を目指して登り始める。
真っ青な空のもと、あの天辺を目指していく
「氷食地形」の空木平の窪地から雪で覆われた斜面を一気に登るこのコース、見かけよりは安全なルートだ。「空木岳のシンボル」の駒石を右に、眼下の伊那谷を眺めながら雪山行を楽しむ。
振り返ると、伊那谷
KさんとIさん、左上の窪地にポツンとある黒い点が避難小屋
そして、頂上近くになると青い空にアーッと云う間の勢いで白いガスが流れてくる。着いた山頂は半分ガスの中。北の宝剣や北西の御嶽山はもう見えず、南は赤椰が見える程度、でも東の伊那谷や南アルプスの展望はまだ利く。
空木岳山頂、この通り宝剣方面はもうガスの中
赤椰岳と左のコブは田切岳
でもこの景色最高、山頂に在ることの至福感と、共にあることの皆の笑顔がまた好い。
さて下りは、南アルプスの大展望を楽しみながら、楽ちんのシリセードもありあっという間の避難小屋着でした。
仙丈~北岳~間ノ岳~農鳥岳?~塩見岳
悪沢岳~中岳~雲に隠れた赤石岳
10月山行予定の塩見岳をアップで
パーティー一部のスナップ写真を撮り、最後に下山のTさん
避難小屋に一旦戻り、下山準備の後、発つが分岐までのトラバース道はなく、またまた池山尾根に出ての下山となった。途中、昨日は分からなかった道標の頭部分を見つけ分岐点を確認後、ここからは2528mから林道終点1375mまでを一気に下ることになる。
ヨナ沢ノ頭近辺から見る、池山尾根下部
大地獄の難所を下る、Aさん
急峻なやせ尾根が続く、小地獄・大地獄の難所を下り、ホッと一息付きかけた頃から、昨夜小屋の土間を流れる水を跨ぐつもりで踏み間違え転倒した時に床板の角で強かに打った左ももが、痛くなる。下りの一歩一歩に痛みが来る。でも、もうあと2時間くらいの辛抱。そして、皆無事に林道終点にたどり着く。
荒れの天候を敬遠してか、二日目は見事に他のパーティーには会わず仕舞い。それでも、雨風の間隙を縫った我々の山行は、天候判断がピッたしだったと云うことの証か。
最後に、係りのKさんすき焼き旨かったありがとう、リーダーNさんご苦労さま、いつも大変な後始末をありがとうTさん。そして皆さんにも感謝。
メンバー:中(L)、川、浜、會、鈴、河(記)、小g、小b、井、長、田