Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

千々にくだけて

2008-11-19 10:22:28 | 読書
リービ英雄 講談社文庫 (2008/9)

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出版社 / 著者からの内容紹介
アメリカ人日本文学作家が、9・11体験の核心から現代世界の変容と危機を鮮烈に描きだす「ノンフィクションを超えたフィクション」。
「9・11」に対峙する、新しい文学の誕生!
南の塔が崩壊したあとに、北の塔も、たやすく、流れ落ちた。見ているエドワードの耳に、音が響いた。ちぢにくだけて、broken,broken into thousands of pieces
2001年の夏の終わり、20年来定住している日本から母国アメリカへと旅立った主人公は、同時多発テロ発生により経由地カナダで足留めされる。すべての国境が閉鎖され、アメリカへも日本へも帰ることができない状況の中、砕け散った世界のおぞましくも新しいイメージが襲いかかる……。国境を越えて日本語の可能性を開拓してきた作家が、「9・11」後の世界に提示する傑作小説。
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主人公エドワードは作家の分身らしい.生国アメリカを離れ日本で作家として生活している.アメリカに帰ると,聞こえてきた英語が日本語に翻訳されて頭の中に響く.
私自身アメリカで生活したことがある.1年半ほどで長かったとは言えないが,その間ほとんど日本語を喋らなかった.帰国直後は周囲の日本語が,映画をみているような感じだったのを思い出す.

このエドワードは,アメリカでの現実を逃避し,日本に来て日本語で文筆活動しているものの,日本人としては認められていない...と書かれてはいないが,そう暗示されててはいる.こうした視点から,9・11体験を書いている.意外に淡々とした描き方でかえって印象的.
主人公はニコチン中毒でもあって,このことも意味があるらしい.

短編集としての「千々にくだけて」は3編からなるが,2編目は後日談.3編目は解説のようなおもむき.ほかに「国民のうた」という短編が収められている.こちらでは9・11以前の一時帰国が描かれる.障害を持つ弟が登場するために,小説的な起伏は「千々にくだけて」よりも大きいかもしれない.
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