Sixteen Tones

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暁の宇品

2024-08-04 08:15:05 | 読書
堀川 惠子「暁の宇品 陸軍船舶司令官たちのヒロシマ」講談社(文庫, 2024/7).
単行本は 2021/7.

講談社文庫は立ち読みできない包装なので,買うものか!  と思っていたが,主義を曲げてしまった.

カバーの惹句*****
人類初の原子爆弾は、なぜヒロシマに投下されなくてはならなかったのか。
日清戦争から始まり満州事変、日中戦争、太平洋戦争に至るわが国の近代戦争の中枢にあった、旧日本軍最大の輸送基地・宇品。
その司令官たちとヒロシマが背負った「宿命」とは何だったのか。
第48回大佛次郎賞受賞の傑作ノンフィクション。*****

大佛次郎,鞍馬天狗も好きなので.

目次*****
序章 / 第1章 「船舶の神」の手記 / 第2章 陸軍が船を持った / 第3章 上陸戦に備えよ / 第4章 七了口奇襲戦 / 第5章 国家の命運 / 第6章 不審火 / 第7章 「ナントカナル」の戦争計画 / 第8章 砂上の楼閣 / 第9章 船乗りたちの挽歌 / 第 10 章 輸送から特攻へ / 第 11 章 爆心/終章*****

陸軍のための兵員・武器・食糧の輸送,いわゆる兵站は (海軍ではなく) 陸軍が行うことになっていて,そのための基地が宇品.しかしこのための船舶は圧倒的に不足していた.民需の輸送を圧迫したから産業すなわち国力は低下した.はじめから戦争ができる状態ではなかったのだ.

前半は田尻昌次を主人公とするストーリーがあるが,「 第6章 不審火」で彼が罷免となった以降は,特に読み通すのは苦痛だった.

第9章はガダルカナル島,餓死の島を船舶輸送の視点から記述している.

第 10 章から具体的な記述を引用したい.戦争末期・ルソン島への兵員輸送を行ったのは,寄せ集めの焼玉エンジン船団であったが,目的地に到着できたのはわずか2隻であった (目を皿のようにして読んだが,全部で何隻が出航したかが書いてありませんよ,堀川さん).兵士たちは腰から竹筒と空き缶をぶら下げた.竹筒には水,空缶は便器.船倉は立錐の余地もなく,入りきれないものたちは甲板で銃を抱いて寝た.
本書では触れていないが,屈強な男子は全て徴兵された後.この時期かき集められたのは中高年ばかりだったと聞いている.

第 11 章は原爆後.当時 司令官であった佐伯による迅速な・的確な かつ越権な ? 救援対応が語られる.


朝ドラで総力戦研究所とやらにいたエリート君が,シミュレーションで戦争すれば負けることが分かっていても何もできなかったと謝る場面があった.
状況を見通し,それを口にすれば当時は首になった.
現在はどうなんだろう.解説 船橋洋一の言葉を借りれば,日本ではリスク評価とリスク管理の間のギャップが大きく,都合が悪くなると「想定外」というリスク管理の「番外地」を作るのだそうだ.このところの経済的凋落は ?
地獄行きの焼玉エンジンに乗せられることのないように !

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