Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

昭和のミステリ「土壇場でハリー・ライム」

2024-08-05 13:35:28 | 読書
典厩五郎「土壇場でハリー・ライム」文藝春秋 (1987/8) .
てんきゅう ごろう と読むそうだ.

***** 1967 年、東京六本木に近い雑居ビルの屋上から、一人の男が飛び降り自殺した。東都新聞文化部長の月田春之。しかしその部下の真木光雄には、それが自殺とはとても思えない。月田が死の直前、ゾルゲ関係史料を読み漁っていたのを知った真木は、和歌山県のアメリカ村に向かった。予想もしない事実が待ちうけているとも知らずに。第5回サントリーミステリー大賞、読者賞ダブル受賞。*****

いかにも昭和らしいブックデザイン (玉井ヒロテル).とはいえ,このこのプロファイルがハリー・ライムか,市民ケーンか,ぼくにはわからないのだけれど,
巻末に 都筑道夫,田中小実昌,イーデス・ハンソン,開高健,田辺聖子による,第5回サントリーミステリー大賞選評.こちらはタイトルが懐かしくて古書を買ったのだが,都筑・田辺両氏がタイトルにケチをつけていた.

「マイ・ガール」「ミスター・ロンリー」「バス・ストップ」等々,懐かしかったが,都筑氏は「60 年代をえがくのに,ヒットソングの羅列で逃げているところは,もっとも気になった」と容赦がない.「近い過去を書くのは,知っているひとを納得させ,知らないひとに理解させなければならない」.なるほど.60 年代はもはや遠い過去となって,ほとんど知らないひとばかりでは,理解させることは不可能だろう.

ゾルゲ事件という大風呂敷が拡げられるが,巨大な組織の影に隠れ,竜頭蛇尾におわってしまうのが,よくあるパターン.探偵役の男女がもっと危ない目に遭った方がリアリティがあると思う.
でも田辺氏の言うように,路辺の友とするに足りるものではあった.

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