Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

松本清張「遭難」 ネタばらしにご注意 !

2021-03-21 08:45:40 | 読書
図書館で

 馳 星周 選「闇冥 山岳ミステリ・アンソロジー 」山と渓谷社 ヤマケイ文庫 (2019/2)

を借用.4編の最初が松本清張の「遭難」であった.登坂中,大町の工場のサイレンが聞こえるシーンで既読感.初出は週刊朝日昭和33年の連載だった.高校生だったが,松本の連作連載「黒い画集」を熱心に読んでいたのだ.
Wikipedia によればこの「遭難」が画集シリーズ第1作,記憶によれば次第にこのシリーズからはミステリー色が薄れていったと思う.

確率犯罪もので,よくできている.

いま読むと,結構ツッコミどころは無きにしも非ず.
トップ画像右の赤線から右が5万図「大町」で,リーダーはこの大町の地図さえあれば良い.よけいな地図は不必要で邪魔だと言う.左のコース図をによれば,実際に歩く冷池から鹿島槍ヶ岳までのルートは「大町」には含まれていない.地図一枚を持ってくることを禁止するのも不自然だ.
ストーリーでは悪天候の下,鹿島槍ヶ岳から南の冷池山荘方面に向かうはずが,西の牛首山方面に行って遭難する (リーダーがそのように誘導する).でも,怪しいと思ったら地図を見るまでもなく,磁石で南に向かっているかどうかを確かめればいいのだ.

被害者は加害者の妻と関係している.この状況で一緒に山行はおかしい.被害者が厚顔ならそれもあり得るかもしれないが,それなら睡眠不足で遭難はあり得ない... てなことを言い立てられては,ミステリーは成り立たないけれど...

冬山を知らないから,ラストが山岳技術的に妥当かどうかは分からない.しかしストーリーとしては後味が悪い.映画化の際には変えられたそうだ.

このアンソロジーには同じ「遭難」というタイトルの加藤薫の1編も収められている.これについては,また後日.

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