Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

世界でいちばん静かな場所

2016-09-26 09:30:48 | 科学

トレヴァー・コックス, 田沢 恭子 訳「世界の不思議な音」白揚社 (2016/5) は,文献リスト完備だが学術的・系統的ではなく,世間話集という感じの本だ.「世界で一番静かな場所」はこの中の一章.音に関する本で,無音に関する部分が面白いというのが面白い.

ここではジョン・ケージの「4分33秒」のことも書いてある.この曲では演奏者は舞台に出場し,楽章の区切りを示すこと (ピアノの場合は鍵盤の蓋を閉めたり開けたりするらしい) 以外はに何もせず,一定の時間が経過したら退場する.ここで16トンが思い出したのは,ジュークボックス中の静寂盤だった.案外,ケージ氏もジュークボックスからヒントをもらっていたりして...

もっとも,「世界の不思議な音」は科学の本で,サブタイトルは「奇妙な音の謎を科学で解き明かす」である.
ギネスによれば,世界一静かな場所はどことかの研究所の無響室で,背景音は -9.4dB だそうだ.しかし無響室でも何も聞こえないわけではない.自分の血液が体内を流れる音が聞こえるとか,音を聞こうとしても何も聞き取れないために脳がアイドリング・ノイズを生じ,これが耳鳴りとして実体化するという記述がある.
地球上では生物がいると静かな自然環境は得られない,その意味で南極大陸は静寂を聞ける場所である.ここの,地球上で最も不毛な干からびた谷間で過ごした体験者は「生命も存在しない,流れる水もなく,風の音も聞こえない,あの原始の「気配」はまぎれもなく衝撃だった」と語っている.無響室との違いは,閉塞感がないことだそうだ.
「フローティングタンク」という,外部の刺激から遮断された真っ暗なスペースで,濃い塩水に体を浮かせて感覚遮断を体験させる商業施設も紹介されている.この2ページ弱の体験記は読んでいただくしかないが,著者は後で時計を見て2時間も塩水に浮かんでいたことに驚愕し,脱水症状で虚脱感と吐き気を覚えたそうだ.

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