Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ジャズ ピアノトリオ演奏者の心拍

2016-02-17 16:39:30 | 科学



3ヶ月ほど前に,ジャズ研諸氏のご協力のもとで,ピアノトリオ演奏時のメンバーの心拍を測定させていただいた.
上が iPhone のアプリの生データ.縦軸は分あたりの心拍数.横軸の1区画が1分.曲はミディアムテンポのブルース,Billy's Bounce. メトロノームが設定したテンポは bpm4分音符=120で,演奏中はほぼこのテンポが保たれた.グラフの下に大まかなシークェンスを入れた.ベースソロの時はベーシストの,ドラムソロの時はドラマーの心拍が高揚する.
楽曲のテンポと心拍が同期することを期待したのだが,そうは問屋がおろさなかった.演奏者の bpm は 120 にも,その半分の 60 にも遠かった.

公費による研究では,思ったような結果が出なくても,何らかのレポートを出さないと研究費が途切れる.この呪縛からはとうに解放されているのだが,ジャズ研会員にして工学研究科の院生 I 氏のご協力を得て,とにかくこのデータも弄り回してみることにした.




縦軸を共有するひとつのグラフにまとめてみたところ.横軸は秒,縦軸は bpm.上から「青 ベース,黒 ドラムス.赤 ピアノ」の順に並んだが,平静時の心拍数もこの順番である.




各奏者のパワースベクトル.これについてはまた後日.




心拍データを,平均値をゼロとしてそこからの変動に書き直し,パーセントを縦軸としてピアノ・ベース,ベース・ドラムス,ドラムス・ピアノの3枚に示したのが左側.さらに2つずつのデータの相互相関関数を計算したのが右側.横軸は遅延時間でフルスケールを演奏時間の半分までとした.心拍の高揚という現象が個人的にどのように伝播 (伝染) するかが推定できる.




見えてくるのはこんな構図.ピアニストは盛り上げようと努め,ドラマーも 15 秒遅れくらいでそれに追随する.ベーシストは比較的冷静.ピアノ,ベースにはゆるく付き合うが,彼が本格的に高揚し始めるのはピアノ・ドラムが一段落してベースソロに入ってからで,そのピークはドラマーから 45 秒後,ピアニストから起算するとこれに 15 秒を足した 60 秒後である.

この構図は曲によって異なる.同じ曲でもテイクで異なり,まさに一期一会である.ブルースは一本調子だが,バラードではもっと相互作用が複雑になる傾向がある.
....というようなことを論文にまとめて投稿してみるつもり.何の役に立つかと言われても,困るだけだが.

相関関数は,計算機が遅かった時代にはよく使われた,実は今から半世紀前,16 トンはプラズマ中の波動の相互相関関数を博士論文のネタにしたのだった.

クラシックのピアノトリオは,ピアノが加わった弦楽三重奏を指すので,タイトルに「ジャズ」とことわった.
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