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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

好きな書・苦手な書

2016-01-08 07:41:45 | お絵かき

石川九楊「書の風景」筑摩書房(1983) より,

古書で買ったこの本,明治以来のいろいろな人 (坪内逍遥,佐藤春夫,萩原朔太郎,萩原井泉水,徳富蘇峰,40ページおきにサンブルした) の書に2-3ページの文章が添えてある.以前このブログで「臨書 宮沢賢治」について書いたが,このテレビ講座の講師が本の著者だった.
この本から,個人的感覚で好きな書・苦手な書などを拾ってみた.



好きな書の代表が,上の中島敦.昭和14年元旦の試筆だそうだ.自分も硯で墨をすって何か書いてみようと思っているうちに1月も8日になってしまった.
他に好きな方に分類するのは,泉鏡花,坂口安吾,会津八一,若山牧水,高村光太郎,八木重吉,....



御免こうむりたいのが白樺派.「肥えた線」が特徴.上のは志賀直哉だが,小説のイメージとはかなり違う.武者小路実篤の色紙にはよくお目にかかるが,やはり字も絵も嫌いだ.



これは中村不折.書の研究団体・龍眠会を立ち上げ,明治45年に「下手な字」というキーワードで空間性の優位,形の歪み=デフォルマシオンの市民権を高らかにうたったという.今の目で見れば特にどうということ書だが,夏目漱石は「邪道」と切り捨てた.いっぽう森鴎外は墓の字を中村に頼むように遺言し,それが実現しているのが面白い.
本の著者はこの書について,「謹厳さを内に秘めた楽しさに直接触れてもらえればよい」と言っておられるが,この書は好きです.
ちなみにこの本には漱石・鴎外,両人の書も載っている.鴎外の書は好き.漱石のは読めないので好き嫌い保留.



2・26事件に連座して銃殺された北一輝の絶筆.「拝啓.今生ノ御暇乞申上候....」で始まる.著者は「硬質の意思を露わにし,切迫した緊張感を持つ,凄みのある書」と絶賛している.しかし拝啓を知らずにこの書だけ見てどう感じるか,自分には自信がない.



最後は樋口一葉 13歳の書.著者は「今ならさしずめ,イラスト入りのノートにマンガのような文字を描いている年齢」とおっしゃる.
自分はフォントを選ぶ感覚で見ているようで,草書で読めない書は論外となってしまう.でもこれは,読めないけれど美しい.


巻末の解説は30ベージたらずだが,箇条書きを多用し「書」について知りたかったことが要領良くまとめられている.

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