Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

小さいおうち

2013-08-14 08:23:36 | 読書
中島京子著 文春文庫(2012/12).
3年前の直木賞受賞作.映画化決定とかでまた書店に平積みになっていた.
前からカバーのイラスト (いとう瞳) が気になっていたので,購入.絵本 The Little House との関係は最終章で出てくる.登場人物のひとりが後で作る絵本のタイトルが「小さいおうち」なのです.

全部で 8 章のうち最終章以外は,お婆さんが戦前女中として仕えた,小さいおうちの一家の回顧録的体裁.戦前の庶民の生活が,自分が両親や親戚・近所の大人たちに聞かされたはなし「戦争前は良かった」とダブって懐かしい.開戦してもしばらくは呑気な日々が続いていたようだ.一般人が大本営発表を鵜呑みにしても仕方がなかった.

本筋がほとんど終わったところで,学童疎開の話が出てくる.この本には書いてないが,花をむしって吸うと甘いので,学童たちが村中のツツジを丸坊主にしてしまったと聞いたことがある (南方では蛇もトカゲも日本軍が食べつくしたそうだ).ツツジはホントに甘いんだよ !
戦時下で故郷から奥様を訪問し.ふたりで美味しいものを回想する場面 - コロンバン,資生堂,アラスカ,千疋屋等 - も印象に残る.
食い物の恨みは恐ろしい.

最終章では,奥様の浮気に関連して,諸々の怪しいデータが明かされる.この部分がなかったら直木賞は無理だったのかもしれない.しかし私にはこの章は蛇足と思われた.

ここに書いてあるように,現在の女子大と同等だったかどうかはやや疑問だが,戦前は上流階級への女中奉公は花嫁修業だったのだろう.
昭和 40 年代あたりまで女中という職業は残っていた.親類の社長さんの家にも女中さんがいたが,「お手伝いさん」と呼ばなければならなかった.
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