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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

東京大学殺人事件

2013-05-18 08:27:54 | 読書
佐藤亜有子「東京大学殺人事件 ---愛の秘密結社」 河出文庫 (2013/05).

よく見たらカバーの東京大学... のフォントがちょっと変わっていた.これについては,カバーデザインは高柳雅人・カバーフォーマットは佐々木暁と,ふたりの名前.

キワモノ的タイトルに惹かれ購入.冒頭に登場人物リストとともに,東大を中心に上野駅・根津神社・お茶の水を網羅した地図.
始末に負えない小説だが,最後まで読ませる.でも土地鑑がなかったら途中で放り出したかもしれない.

「殺人事件」とあるが,ミステリではないと言いたい.
でも,ミステリの体裁は持っていて,ワトソン役は腹を空かせているか,何か食っているか,尾行しているかである.いっぽう探偵は呑んでいるか,尾行しているか,何もしていないかである.ビデオテープが小道具として登場するが,思わせぶりなだけ.最後まで読んでも犯人は分からないことになっている.

文芸賞受賞 - 芥川賞候補というだけあって,推理作家に比べると格段に文章がよい.

タイトルにある「愛の秘密結社」とは東大エリート中年7人が日替わりで同一の美少女を対象とする組織である.かなり非道いストーリー だが,作者はけっこう楽しんで書いているようだ.
神山修一氏による解説によれば,この小説には父親から性的虐待を受けたという,作者の実体験が投影されているらしい.2008 年の「花々の墓標」はそのことをテーマにしているとのこと.ちなみに,この「東京大学...」は 1999 年の作品,

作者 (東大仏文科卒) は今年 1 月自邸にて死去していたことが 3 ヶ月後に明らかになった.
帯には「追悼」とあった.

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