
中島 さち子 「人生を変える「数学」そして「音楽」 教科書には載っていない絶妙な関係」講談社(2012/07).
「BOOK」データベースは,***** 日本人女性唯一の数学オリンピック金メダリストにしてジャズピアニストが案内する学問の楽しみ方 ***** と,至って簡潔.
タイトルのテンションが高過ぎて,手を出すのをためらったが,書き方は平易.お子さんと合作 ? のイラストも楽しい.
物理や工学の分野の数学は応用数学・実用数学であって,受験数学の最後に現れる微分積分が実用数学の典型.実用数学は純粋数学に比べると一段レベルが下がるものと,多くの (純粋の) 数学者は見なしていると思っていたが,中島さんによれば,現在はそうではないとのこと.
16 とんにとっては,実用数学は飯の種だったので,あまり楽しめないが,ここで紹介されている純粋数学は楽しめる.
この本は前半 (+) は純粋数学,後半 (-) は音楽 (すこし実用数学) と分離してしまっているのが惜しい.フラクタルと音楽の関係等もう少し突っ込むこともできそう.
著者の心の中では音楽と純粋数学が合体していると思うが,それが表に出ていないのがはがゆいところ.
ジャズをやっていてイメージするのは,地図のようなもので,これに従えばどっちにでも行ける.うまくいけば,自由な浮遊感覚を楽しむことができる.この「地図」をうまく説明していただけないだろうか.
ジャズ演奏では,共演者がいるときは,皆が共通の感覚を持ってくれることがエッセンシャルだ.コードとかモードとかはこのための手段なんだろうが,そっちの方向に行くと教科書的になり,拘束条件ばかりが強調されてしまう.
いっぽうフリージャズは,いかにもフリーをやっていますという感じになるのがイマイチ.
... この本とはかけ離れたことを書いてしまった.
著者・中島さんの演奏 ; Sachiko Nakajima Trio Rejoice "Ningyo Waltz" (The Waltz of Dolls) @ Inage Candy
16 トンの旧著,講談社ブルーバックス「音律と音階の科学」はおかげさまで 5/7 で 17 刷となりました.
新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).
もよろしくお願いします.
立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
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