Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

カラオケと絶対音感

2010-06-19 09:13:32 | 新音律
ダニエル・J. レヴィティン 著, 西田 美緒子 訳「音楽好きな脳―人はなぜ音楽に夢中になるのか」白揚社(2010/03)
に記述されていた,著者 (認知心理学者) 自身による実験の結果.

音楽を専門としない40人に好きな曲を記憶だけで歌ってもらい,そのうち良く知られたレコーディングがひとつだけあるスタンダードな曲を歌った例について,被験者のピッチとテンポをしらべたところ,レコーディングとほとんど一致した.

この実験に出てきたスタンダード曲とは,ベイシア「タイム・アンド・タイド」,ポーラ・アブドゥル「オポジット・アトラクト」,マドンナ「ライク・ア・ヴァージン」,ビリー・ジョエル「ニューヨークの想い」等で,実験の TPO を反映している.被験者たちは歌手独特のかすれ声,シンコペーションなどのこまかいニュアンスもそのまま再現する傾向があり,元の歌手によるものとと被験者の歌をステレオの両チャネルで聞くと,一緒に歌っているようだったという.

日本でカラオケファンを対象に同じ実験をすれば,北島三郎や小林幸子の歌についても,同じ結果が出そうである.

自分の記憶を遡ると,「何時の時報」というのはラジオで一時間毎に放送されていて,たいていの子が時報のものまねができた.あれはぴったり周波数があった声を出していたのだろうか.

かってのベストセラー「絶対音感」の帯では,ある音を聞いたときに,ほかの音と比べなくてもラやドといった音名が瞬時にわかる能力を絶対音感と定義していた.
レヴィティンの実験から類推すると,たいていの人は,ある音を聞いたら,自分が好きな曲を胸の中で歌ってみて,そのメロディの中に今聞いた音とおなじ高さを探すことができそうだ.こういう手順を踏めば,(好きな曲があるという程度に音楽好きな人には) たいてい絶対音感があることになる.

絶対音感とは,音の高さを記憶する能力ということになる.実質的には絶対音感があっても,専門的な音楽教育を受けていないから,それをドレミ...に翻訳するできないだけ という人なら多数存在するだろう.
この「無自覚絶対音階のひと」が定量的にどれだけか, レヴィティンの本からは読み取れない.40人という数字はあるが,お手本がはっきりしたスタンダードは何曲で,ピッチが何セントまで合っていたか,などを知りたければ原論文を読む必要がある.でも少なく見積もっても10-20%というところか.

かくいう私は久しくカラオケをやったことがない,
Miles の Bag's Groove をハミングして,キーを CD と比較してみようか.

追記 最近のレヴィティンによるこのテーマの学術スタイルの論文
Daniel J. Levitin and Susan E. Rogers "Absolute pitch: perception, coding, and controversies", TRENDS in Cognitive Sciences Vol.9 No.1 January 2005
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