2月16日放送の「アフター6ジャンクション」でライターのJiniさんがHBO版『THE LAST OF US』の紹介と解説をされていました。理屈っぽ過ぎるのと話題の第3話「長い間」についてあらすじを詳細に述べ続けるだけの面白く無いネタバレがあり正直ガッカリでした。
「アフター6ジャンクション」2023年2月16日放送分
今回のJiniさんの件をきっかけにHBO版『THE LAST OF US』の何が優れているのか改めて考えてみました。
◾️HBO版『THE LAST OF US』は原作の取捨選択と原作が描かなかった余白の埋め方が絶妙
HBO版と原作の違いの一例として、感染者が発生した原因の描写が挙げられます。
原作である『The Last of Us』は感染者と呼ばれる所謂"ゾンビ"的な存在が現れ始めた所から描かれますが、感染者発生のパンデミックの端緒は描かれるものの、何が原因であるのか、どうしても広まったのかは原作では描かれませんでした。
主人公ジョエルの娘、サラの目線から街中で煙が上がる円形やニュースの中継、そして感染者と化した隣人、街中で感染者が溢れかえる様子が市井の一市民の目線で描かれますが、何が原因であるかは示されませんでした。
一方HBO版は同じくサラの目線で描いていくものの、朝から徐々に街の中で緊急車両のサイレンが鳴り響きはじめたり、パンデミックの発生を察した市井の人が徐々にその状況を察し始める状況を具に描写して見せます。
原作では感染者になってからしか現れなかった隣人もHBO版ではパンデミックの発生の朝から隣人とジョエル、サラとの関係性をきちんと描いてくれます。その上で感染者の発生の要因が感染者となってしまう菌に汚染された小麦を多くの市民が食べたことによって引き起こされた事が説明されます。
なお、何故ジョエルやサラは感染しなかったのがよくよく観ると、分かるように自然に描写されているのも、本作のクオリティ高さを表しています。
◾️説明、深掘りの絶妙な塩梅
この様に、HBO版では原作で具体的に説明されなかった、深掘りされなかった部分が具体的に描写されており、原作よりも物語を飲み込みやすくなっています。
この説明や深掘りは下手な製作陣が作れば、蛇足だったり、わざとらしくなったりと原作の良さを殺してしまうことになりかねないドラマ化の方向性だとは思いますが、原作の大枠は変えずに些細な箇所を説明したり、分かりやすくしたりと言う範囲に留めているからです。
話題になったHBO版第3話「長い間」や原作のピッツバーグからカンザスシティに舞台を変更した第4・5話は特にその取捨選択が顕著で、原作で描かれなかった部分を描いたり、描いていた部分を更に拡張することで、ゲームでは無いからこその描き込みでより高い感情移入を図ったのだと思います。そしてそれは今の所大成功していると思います。
HBO版は原作の取捨選択と追加要素の塩梅が良いだけではなく、ルックも原作を再現していて、俳優の芝居も素晴らしいです。原作のジョエルに近いペドロ・パスカルはともかくあまり原作のエリーに似ていないベラ・ラムジーには当初は慣れませんでしたが、徐々に慣れて第5話では彼女はエリーにしか見えなくなりました。製作陣が14歳くらいの俳優では無く、19歳ではあるがベラ・ラムジーを起用した理由がわかるはずです。
全9話で原作をどこまで描くのか本当に楽しみです。
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