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”政治的”であることに疑義を突き付ける『ウ・ヨンウ弁護士の天才肌』第7・8話「ソドク洞物語Ⅰ」、「ソドク洞物語Ⅱ」

2022-07-24 | 備忘録
-『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(Netflix

『ウ・ヨンウ弁護士の天才肌』第7・8話が配信されました。道路建設計画によって村を分断する高速道路、幸福路が通ることになったソドク洞の村長から工事の差し止めの訴訟を相談されるハンバダのチョン・ミョンソク弁護士チームの面々。物語の進展とともに明らかになりますが、この幸福路の計画は多分に”政治的”な事案であることが明らかになります。そしてその”政治的”であることは、ヨンウの就職や出生の秘密についても”政治的”であることが示されます。

思い返すと、『ウ・ヨンウ弁護士の天才肌』は初めから”政治的”なことが物語に影を落とし、個々人を不幸にしていることが描かれていました。第2話「脱げたウエディングドレス」では、新婦は自身の意思とは別に父親の”政治的”な思惑によって結婚させられますし、第3話「ペンスでいきます」では亡くなった被害者の社会的評判を守る為に被害者のとある事情が隠匿されそうになります。被害者の名誉というよりは家の名誉を守ったようにも見えます。

幸福路の建設に邪魔になるであろう榎の木への評価は、公務員によって隠ぺいされていましたし、裁判を担当する判事は幸福路がつながる開発地域に家を買おうとしていたとか、多分な”政治的”、利己的な思惑で田舎の住民が蹂躙されるというシチュエーションが描かれました。(なお、田舎の人たちが権力者に買収されやすという描写があるのもまた意地悪だなと思いました。なお第4話「3兄弟の対立」では村長が買収されていました。)

また、ウ・ヨンウが大手弁護士事務所ハンバダに就職できたのも、ウ・ヨンウがライバル弁護士事務所テサンの代表、テ・スミの隠し子であることを知っていたハンバダの代表、ハン・ソニョンがテサンを潰すため、多分に”政治的”な理由の為に雇ったのだとヨンウの父、ウ・グァンホが指摘しました。加えて、ウ・ヨンウの母であるテ・スミとウ・グァンホが別れた理由もテ・スミとウ・グァンホの身分の違いという”政治的”なことであったことが明かされました。

『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は韓国ドラマのステレオタイプ的な描写はありつつも、日本とも共通する韓国社会に存在するであろう”政治的”なもの、縁故主義、学歴主義、財閥の存在、社会での競争、障碍者差別、家父長制などなどへの批判的な脚本、演出が物語の魅力にもなっています。

そういうシリアスなテーマを扱いつつも、1エピソードの中でコメディシーンとイチャイチャシーン、裁判でのカタルシスで挟むことで見終わった後の読後感が重くない絶妙なさじ加減で演出されています。私は完全に監督の掌で踊ってしまっています。ウ・ヨンウへの中傷をネットに書き込むウ・ヨンウの同僚、クォン・ミヌ弁護士が本作を象徴するキャラクターの様にも思えます。彼は”政治的”なものへの反発の様にも見えます。”持たざる者”という意味では、豊田利晃監督の映画『青い春』で新井浩文演じる青木の様でもあります。

第8話終盤、ウ・ヨンウがテサンにテ・スミを訪ねて行った際の2人の対面シーンは演出も秀逸でした。ウ・ヨンウとテ・スミの会話シーンが切り返しによって展開されますが、ウ・ヨンウを捉えたショットはフィックスなのに対して、ウ・ヨンウからカミングアウトをされたテ・スミのショットは徐々にアングルが傾いて行きます。それもかなり大きく角度が傾きます。

演出の教科書通りでありつつも、テ・スミを演じるチン・ギョンさんの演技も相まって、強烈に涙腺を刺激されます。なお、私はウ・ヨンウのカミングアウトにもテ・スミは動じないか、すっ呆けるのかと想像していたので良い意味で裏切られました。

第8話で、ウ・ヨンウが何故ハンバダに採用されたのかと言う謎もウ・ヨンウの母親は誰なのかと言う謎もウ・ヨンウはイ・ジュノを好きなのかと言う疑問も判明してしまいました(ウ・ヨンウの率直な告白に対して、ドSな一面を見せるイ・ジュノに笑いました)。

本シリーズを貫いていたクリフハンガーが第8話まででほぼ全て明かされてしまいましたが(残る謎はテ・スミの息子が誰なのか?くらい)、第9話以降どのように物語が展開していくのか期待と不安でいっぱいですが、こんな作品を作るスタッフ陣なので更なる期待をしてしまいます。第9話ではイ・ジュノがウ・ヨンウが他の男に興味を示していることに嫉妬することが描かれるようですが、期待は高まります。

Park Eun-bin answers 10 questions about Extraordinary Attorney Woo [ENG SUB]


ウ・ヨンウを演じるパク・ウンビンさんのインタビュー動画。第5話「ドタバタVS腹黒策士」の”春の日差し”のくだりについては、脚本読んだ段階で泣いてしまったとか、スヨンを演じるハ・ユンギョンさんと友人関係にあるとか面白い…