よみびとしらず。

あいどんのう。

熱風

2021-11-14 13:22:08 | 散文
その正義感の強さから全てを憎んだ暁に灯る火の粉に身を焼き尽くしたなら私は灰となりさらさらとそれなのにいなくなることすら許されずこの場に残されたそれはもはや正義感であると偽って私は淋しさから目を背け続けた炎は燃え上がるめらめらとただ一杯の水を求める勇気もなく僕たちは弱音を吐いて彼女に怯えるひとりの夜は眠れずにわたしたちは熱く流されるものにさらされている . . . 本文を読む

つきひとひ

2021-11-13 12:56:35 | 散文
月の寝床は思いのほか肌寒くあたたかな潮の香りに焦がれてわたしは遥か遠くのあなたまでどこよりもどこなのか分からなくなった昨日から誰よりも誰か知らない人達の群れを抜けて産まれる前から引き継いできたこの呼吸の在り方にさかなは泣いたオイオイヨイヨイここは良い場所善き人の棲む入江に炎は焚かれていつもいつの日もいつからかわたしの明日は喰べられる . . . 本文を読む

WATER

2021-11-12 14:30:14 | 散文
水を求めた蛇の瞳の色は消え失せて何処かに落としてきた大切なものは名称もないままあなたに流れた水の音だけが静かに答えを知っている息を吐き出した女神は駆け足で風となりあなたの行方をくらませた火もまた慌ててあなたを追いかける日の暮れる頃までに焦がれて落ちたその勇足に新月の夜は待っていたナカに交わらずシルシを超えて目標物は遠く高くへかわいた光の求めるものを誰も差し出さずに日は暮れるあまりにも大きなものを飲 . . . 本文を読む

空蝉(うつせみ)

2021-11-04 10:36:18 | 散文
呼ぶ声の岩に耳をすませば鐘の鳴るそれは空耳かそれとも誰かの昔話か空っぽなホラ吹きは両の手を携えたまま頑なに冷えきったわたしに寄り添う喧騒はぬくもりを育み熱をもつその黒き髪の美しさに夜の染まればそのなかで涙をこらえた岩清水 . . . 本文を読む

MOON

2021-11-02 15:49:40 | 散文
秋晴れとよぶにはいたすぎる太陽にかわいた風は運ぶべきを運ばずに許されるべきを許されぬままのゆえに携えるべきの泡沫は悲しい地上に残された空に浮かんだのは姿を違えた落とし穴わたしは手の届かない場所に手を伸べて差し出した風は濡れている . . . 本文を読む