よみびとしらず。

あいどんのう。

穴が二つに栓四つ

2019-01-03 11:11:27 | 随筆
なんの話かと言えば耳栓の話である。
カプセルホテルなんかに泊まる時にそなえ、耳栓を携帯している。500円玉程の大きさの鮮やかな黄緑色したケースにこれまた鮮やかなオレンジ色の耳栓が、いままでは二つ入っていた。耳の穴は左右に一つずつ計二つなので、耳栓は二つあれば十分なのである。で、あるはずなのだが、昨日新たに一袋開封してしまった。その真新しき耳栓をつけて昨夜は寝た。そして起きた。起きたれば耳栓は不要なのでケースにおさめようとしたところ、なかにはいままで使っていた耳栓が、ただ静かにそこに鎮座されていた。
あまり時間もなかったのでとりあえず新旧の耳栓をみちっと一つのケースに収納し、いまはこれを記している次第である。

そもそも何故新しい耳栓に手をだしたのかという話であるが、いま泊まっている宿に耳栓が、「どうぞご自由にお使いください」というかたちで置いてあった。そのことに対してありがてえなあという思いにかられ、その思いに導かれるままそこから耳栓をそっと一つとり、そのままピリッと開封した、ような気がする。すでにうろ覚えであるが、流れとしてはそのようなものであったように思う。つまりはなにも考えていなかったわけであるが、その真新しき耳栓は弾力が強い。みちっとしていて、つぶしてもなかなか元には戻らない。いままで使っていた耳栓も、かつてはこうであった気がするがいまは長年連れ添ったことでぴちぴちとした弾力性もすっかりおとろえ、もちっとした触感である。とてもやわらかくなっていて、そのやわらかさが何だかとてもいとおしい。

なんと言いますか、相手は耳栓であるのだが、どうしても「嫁と姑」とか「古女房に若き愛人」とかそのような言葉がうかんでしまう。はじめは、穴が二つに栓四つ。どうしよう。鼻にでもつめるべきなのかとか考えていたのだが、どうもそんな場合ではなさそうである。
これはどうしたらいいのであろうか。
どちらか一方を捨てるとかは、なんかもうちょっと無理ではあるまいか。「嫁と姑どっちが大切なのよ!?」という台詞が脳内にこだまする。まずは病院へ行くべきだろうか?でも病院へ行ってどうしろと?「いままで使っていた耳栓と新しい耳栓が、嫁と姑みたいで、わたしは一体どうしたらいいのでしょうか?」と相談されたお医者さんこそ一体どうしたらいいのでしょうか。

このような問題で人様に迷惑をかけるわけにはいかないので(本当に)、なんとか自力でがんばって答えを見つけたいと思うが、なんかこうしたどろどろとした問題には正直あまり向き合いたくないのでいまは考えるふりをしてなにも考えないまま珈琲を飲んでいる。
二股をかけるつもりなんて毛頭なかったし、いまもないんだけど、結果として現在二股中ですという人はこのような心理なのかなと思いました。そんな気持ち分かりたくもなかったですけども。なんかね、「優柔不断で優しい彼だから、相手のことを拒みきれないみたいで…」と二股彼氏に悩む乙女さんがいらっしゃったら声を大にして言いたい。その彼氏は優しくないから。彼氏のそれは優しさじゃないから。ただ何も考えてなくて、面倒事から目を背けてるだけだから。そんな男はさっさと捨てて次の恋に向かいなさいと。

わたしは耳栓に思いをはせながら。
新年明けましておめでとうございます。

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