よみびとしらず。

あいどんのう。

いろは歌

2020-11-07 02:16:45 | 散文
子どもは誘(いざな)ういろは歌

色はつけねど重ね合わせた
三重(みえ)にいくつものあなたを置いて
飛ぶ鳥の姿はすでになく
禍福はか細きより糸の如くに
緩(ゆる)やかにその結び目は解かれた

ふたつに割れて分かれた歓びと悲しみの
ばらばらになれどもまた組み合わされたり
二重螺旋は絶えず繋(つな)いで築かれた
繋ぎ止められてきた思いの間(はざま)に
残されたのは薄紅色の
頬染めるあなたの柔らかき笑顔

悲しみにくれた空色に
歓びは謳歌して海に出た
雨降る音に静まる心は
雨の音届かぬ深海を知らない

海と同じ色した空は笑って
晴れわたる世界に太陽の光は降り注ぐ
同じ色した感情は
それぞれに異なる音を奏でた
あなたの知らない涙の訳を
三重に二重(ふたえ)に心は歌う

わたしもあなたも消えたとて
残された木漏れ日に記憶は漂い
月は追いかけてあなたを探した
わたしを見つけた
今宵のあかつきは未だ酔いもせず

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